アイディアルを続ける為の戦い~一人理想の騎士団
始まりと共に綴也は左手の銃をサクラに向けて連射しながら接近しサクラも
二刀で綴也の弾を剣で弾きながら接近していく。
その時間は十秒にも満たないがその間に何十発の光の弾を綴也は放ちサクラ
はその光の弾を両手の剣で全て弾いた。
そして綴也と右手の剣とサクラの両手の剣が激突する。
しかし綴也は激突の直後まるで弾かれたように飛び退き再びサクラに再び銃
を連射する。
「クッ!」
その一連の動きにサクラは一瞬驚きながら二刀で綴也が放った光の弾を次々
に弾いていく。
銃と剣で勝負をするならば有利は銃を使う綴也である。
しかし綴也の銃の発射する速さにサクラの弾を弾く速度が追いついて追い越
したサクラの剣が綴也に襲い掛かる。
綴也はサクラの二刀を剣と銃を後ろに重ねて受け止めた。
その時綴也は出来る限り目の前にある危険なものは眼に写さぬよう集中して
いた。
「まさか銃を持ってるってだけで貴方がこんなに戦えるなんて驚いたわ。一
瞬撃たれるかと思ったわ」
「それはこっちの台詞です。会長の剣だって速かった。終わらせる心算で撃
ったのに全部弾く打つ前に斬りかかって来るし…」
「私これでも理想求者は引退してるけどあれ位のスピードで撃たれるほど易
くは無いわよ!!」
「解り…ました!!」
二人は弾かれるように離れサクラは剣を也は銃を構える。
綴也は再び銃の掃射を再開する。
しかしサクラはその掃射をものともせずに全て弾いて綴也に迫る。
「このくらいなら引退した私でも全て弾くわよ!!」
「ぐっ…」
そして再び剣と剣の戦いになる。
二刀流のサクラ剣が綴也に幾重にも襲い掛かる。
綴也も左手の銃を剣の代わりに受け止める。
しかし銃で剣の代わりには限界があり女性との接近戦は危ない物が眼に映る
のでますます自分が不利になっていく。
「グッ…」
遂に綴也の肩にサクラの剣が傷を刻んだ。
刻まれるMRの痛みに耐えて綴也はサクラに至近距離で銃を放とうとするが
その手に衝撃が襲い掛かった。
「ぐっ!?」
それはサクラの蹴りだった。
何とか銃を手放す事は無かったが手の痛みに耐えて手放さない事を優先した
為そこからの反撃は出来ない。
サクラがそこから蹴りを綴也の腹に叩き込み綴也を吹っ飛ばした。
綴也とサクラの距離が再び遠く離れた。
流石に遠いのかサクラもそこから追撃はしなかった。
「ゲホッ…会長も格闘術を使うんですね」
「そう?そんなに意外だった?」
「意外でした…って…あ!?」
綴也はふと初めて出会った時に彼は不幸な事故で彼女に拳を顔に叩き込まれ
た事を思い出した。
その時は直後に自分が吐いたりしていたのですっかり忘れていた。
「あの時は剣だけだったけど剣だけじゃないのは君だけじゃないって事
よ!!」
そこからサクラが再び距離を詰めに来たので綴也は接近させまいと銃を連射
する。
サクラは放たれる光弾を二刀の剣で弾いて近付いて蹴りを再び叩き込もうと
する。
綴也はそれをかわすがサクラは蹴りの体勢から更に両手の剣まで放ってきた。
綴也は蹴りをかわしたままの体勢から剣と銃を右方向に交差させて受け止め
る。
しかし避けた体勢から受け止めたので勢いを押し殺す事は不完全でそのまま
綴也は吹き飛ばされる。
それでも綴也はサクラの吹き飛ばされながら彼女に銃を向け連射する。
サクラも剣で綴也の光弾を弾くが強引な体勢の攻撃後だったためか何発か腕
や肩や足を掠めたり貫通していった。
「ツっ!!」
そして吹き飛ばされながらも銃を連射した綴也はサクラからの追撃を阻むの
に必死でそのまま背中から地面に叩きつけられた。
「グっ!!」
綴也は背中の衝撃に耐えながらもそのまま立ち上がってサクラを見据える。
先週の練習試合と違い剣一本だけの勝負ではないので視覚情報でのダメージ
はあの時より少ない。
(会長も体勢を崩せば自分の銃撃を全て弾く事はできないんだ。銃弾をいつ
でも全て防ぐ事が出来る訳じゃない!)
その事に少し心中胸を撫で下ろしながらも勝負はこれからと気を引き締めて
自分に迫るサクラに再び銃を向け放つ。
流石に傷を負っていても体勢を崩さない限りは銃弾を弾かれた。
ならばもっと速く銃弾を打ち込むか視覚ダメージ覚悟で近距離で剣で戦いな
がらゼロ距離で彼女を打ち抜くかの二つが浮かんだ。
綴也はすぐに後者を選んだ。
理由は三つ。
一つは手段としては自分が不利になる事はわかっているが銃を撃ちすぎてこ
のままだと銃が弾切れの恐れがあった。
綴也の銃は弾切れを起こしても自動的に再充填されるシステムだがその間は
一切銃は撃つ事が出来なかった。
二つ目は体質の問題だった。
アイディアルをやっている以上女性が相手とはいえ体質を理由に銃に頼って
ばかり戦うのは何だか気分が良くは無かった。
体質を考えれば銃を使えば良かったのだが今は武器を替える事も不可能で元
々剣で戦いたかった。
だから例えそれがダメージに繋がるとしてもこれが克服に繋がるのならば逃
げるのは嫌だと思った。
そして三つ目はただ単に折角久しぶりの試合で攻められてばかりは悔しいし
面白くないというシンプルな理由だった。
綴也は自分の人生が少し掛かっている試合ではあるが二年ぶりに大好きなス
ポーツで試合ができる事が嬉しくて心が弾んでいた。
そんな事を考えている内に銃弾を弾くサクラの剣が再び綴也に迫る。
綴也は一刀を剣で受け止めた弾くががすかさずサクラの蹴りが綴也の横腹に
入る。
「グッ…!?」
そこから二撃目が迫った。
剣では間に合わないと蹴りの一撃に耐えながら綴也は咄嗟に銃を迫る剣に向
け数発撃った。
どうやらそれはサクラも予想外でサクラの二撃目は綴也の銃弾に阻まれその
まま弾き飛ばされた。
綴也はその隙にサクラに剣を叩き込もうとしたがサクラの方が一歩速く後退
した。
「銃なんて卑怯だぞ!!」
「会長は剣で戦っているるんだからアナタも剣で戦え!!」
「潔くアイディアル辞めて学校も辞めて警察に自首しろ!!」
試合は熱気を帯びて行く様に学生達も歓声を挙げる。
しかしその中で生徒達のブーイングが綴也の耳に度々入っていた。
その内容も今の試合内容に対するヤジだったり姫神殺しに対して等様々だっ
た。
綴也も自分が姫神殺しというアイディアルというスポーツの嫌われ者である
事は自分自身なりに自覚はしている心算である。
何時ものスポーツセンターでも実は時々ヤジやブーイングをされる事はそれ
なりにあったし帰りに自分の悪口を聞く事も珍しくもない。
ただあのスポーツセンターにいる電子製命体が個性が強いのでそのお陰でさ
ほど気にする事なかった。
確かに剣に銃で戦うのは傍から見れば卑怯に捉えられるのかもしれないが綴
也は銃も使ってでも戦わないと女性相手に勝つ可能性は更に少なくなる。
先週の練習試合で改めて思い知ったので卑怯と言われても銃を使うのを辞め
る訳にはいかなかった。
ちなみに余談ではあるがアイディアル武器の中に銃は正式に許可されている
ジャンルの一つである。
彼が銃を使う事が卑怯か否かは観客の一人一人の主観次第である。
「ふう…」
それでも試合の最中にこのような事を言われるととても気分の良い物ではな
かった。
この試合はサクラだけでなくこの試合会場の観客自体が綴也のもう一人の敵
ともいえる状態だった。
「銃を使っているだけでこんなに近付き難いなんて本当に予想外…私君を舐
め過ぎてたわ…さっきので剣を飛ばされちゃったし」
「でもそんな風には見えないんですけど…」
「本当は銃が持ってても二刀と蹴りで勝てるって思ってたの。でも実際にや
ってみたらこの有様…」
「これでも自分なりに練習はしているので簡単にはやられたくはないです」
「そう。だからここからは今の私が出来る全力で貴方を倒すわ!!」
そう言ってサクラは再び綴也に向かって駆けて来た。
「―貴方を知った時私は憧れ、貴方の真実を知った時私は泣いた…」
綴也は接近を阻止する為に再び銃を放つ。
しかしサクラは剣で銃弾を全て弾く事はしなかった。
「―それでも貴方は私の幻想であり理想…」
サクラは全て弾く事を捨てて傷を負いながらも綴也に接近して来た。
「―例え幾年月が流れてもどれ程私が変わっても…」
驚きながらも綴也は銃を連射するがサクラは致命傷になりそうな所だけを弾
きながら止まる事無くそのまま綴也に片方だけとなったサクラの剣が迫る。
綴也はそれを剣で再び受け止めようとする。
「―貴方が真実どんなものであったとしても…」
サクラはその寸前に再び蹴りを放って剣を持つが右手を弾いて来た。
そこにサクラの剣ではなく拳が迫ってきた。
「くっ!」
綴也は拳を叩き込まれて吹き飛ばされる。
「うっ!?」
立ち上がって銃を放とうとしたが綴也は吐き気に襲われた。
視覚情報のダメージが黄色信号を発するのか先程の拳が良い所に当たった為
か或いは両方かは解らない吐き気に襲われて放つ事ができずそのまま動く事
が出来なかった。
そこから吐き気を堪えながら彼女の追撃に備える為に立ち上がったが綴也が
警戒していた追撃は何一つ無かった。
「―私の思いと誓いが無くなる事は無い…」
そこには眼を閉じて何事かを唱えるサクラの姿があった。
それは物語に出てくる魔法の呪文の詠唱の様だった。
それが何を意味しているのかは理解できなかったがそれが終わると自分は不
利になると解釈した綴也はサクラの行動を阻止したかったが今は吐き気を落
ち着かせないとそれこそ戦えなかったので阻止できなかった。
「―私は貴方の様になりたい。
だから私はこの理想という名の戦場で戦う。
十二の剣と共に!!」
そうして彼女の詠唱が終わった瞬間。
彼女の腰に差してある左右の鞘が輝きながら分解しそれぞれ大きさの違う十
二本の剣になっていった。
その剣一本一本が物語に出てくる名剣と呼ばれそうなデザインで剣達はまる
で意思を持っているかのようにサクラを護る騎士の様にサクラの周りを囲ん
でいた。
「……」
その姿に綴也は言葉は出なかった。
「これが今の私が出せる全て!!かつて理想求者のだった者の誇りとかつて
の二つ名に懸けて…姫神殺し(あなた)の理想を今日終わ
らせるわ!!」
そんな十二の剣を従えたサクラはそう宣言した瞬間観客席から彼女の宣誓を
讃えるかの様な歓声が響いた。
「行くわよ!!」
響いた歓声が合図であるかのように直後十二本の剣が綴也向かって突撃して
いく。
綴也はその決して多くはないアイディアルの経験において実はこの様な能力
を持った理想求者を見た事は初めてではない。
テレビで見た試合にあのように物体を手を使わずにコントロールして攻撃手
段にする理想求者もいるし対峙した事もある。
しかしこうして自分がそんな能力を持った相手と戦う事は初めてだった。
見た事があるだけで実際に体験したわけでもないし対峙した時も当時タッグ
を組んでいた理想求者がそんな能力の持ち主を他の者達と纏めて全て呆気な
く倒していたからである。
綴也は彼女の戦い方は知らないサクラも綴也の戦い方を知らない筈だった。
しかしこの様な力を持っていた事は予想の斜め上としか思えなかった。
しかしそれでも覚悟を決めた綴也は向かって来る剣を回避あるいは武器で迎
撃しながらサクラに接近し一撃を叩き込む事を決めた。
だから綴也も剣に向かって行きながら銃を連射していく。
かつて見た能力は銃や剣等で撃ち落せる類の物だった為である。
相手よりも攻撃の手が少ないのならばそれを少しでも減らしたいのは心情と
しても判断としても間違ってはいない筈だった。
しかし剣達はまるでそれぞれが意思を持っている様に放つ光弾を弾いたり避
けていく。
そして剣の一本が攻撃の返礼とばかりに斬撃を放って来た。
「えっ!?」
驚きながらも綴也はその剣を受け止めるも剣は二撃三撃と綴也に剣を叩き込
んできた。
その動きは明らかに見えない剣士が剣を自分の意思で振るっている以外に無
い動きだった。
そんな驚愕を飲み込む暇など無く他の剣が綴也に向かってきた。
それぞれの剣の動きもこの剣同様に見えない剣士が剣を振るっている様に見
えた。
綴也一本目の剣の一撃を避けて後ろに飛び退いて迫り来る斬撃の集団をかわ
した。
(この剣…凄く厄介だけどこのくらいなら何とかかわせる!!)
「このくらいならかわせるって思っているなら甘いわ!!」
綴也の安堵を読んでいるかの様に凜とした声が突如耳に入った。
「クッ!!」
それはいつの間にか弾き飛ばされた片方の剣を取り戻したサクラだった。
その一刀で綴也は右肩に傷を負った。
その間にサクラの二撃目が迫った。
綴也は銃を打つ間も剣を振るう間も無くその剣を右手の剣を前に左手と交差
し受け止めるしかなかった。
「何で打撃やあの玩具の光剣とかを使わないの!?」
「…え!?」
「私貴方の戦いを一度だけ見た事があるわ!その時君は蹴りや光剣…あのP
Dを使ってた…なのに貴方はこの戦いでは一度も打撃も光剣も使ってないわ
!どうして!?」
まさか戦いの最中にそのような事を言われるともましてやサクラに戦いを見
られていた等思いもしなかった。
しかし彼女が見たという戦いとは綴也の記憶の中で思い当たるのは一つしか
なかった。
まさかサクラがあの時の試合を見ていた人間だったとは本当に予想の外だっ
た。
「会長が見たあの時の戦いの後のペナルティで僕は戦い方に制限を掛けられ
て制限を解除しないと打撃と光剣が使えないんです!」
「!?どういう意味!?」
「さっきの会長の様に魔法の呪文の様なワードを唱えないとその制限を解除
できないんです。その制限を解除しないまま打撃や光剣を使ったらその時点
で反則負けになっちゃうんです!」
そう当時の綴也は剣と銃のほかに打撃を駆使していた。
状況によっては拳も蹴りも使っていたが姫神殺しという烙印を刻まれた時に
打撃の使用には制限を設けられてしまった。
その制限を解除しないと綴也は体術も使う事が許されなかった。
だから綴也はこの試合で剣と銃だけで戦っていたのだった。
そして今綴也は打撃やもう一つの武器を使わなければ明らかに不利と言う状
況だった。
サクラの強さは経験の浅い綴也でも引退している身とはいえ今日此処で審判
役をしている恵理香に迫るとおもえるものがあった。
まして今は鍔迫り合いの近距離で再び視覚情報のダメージが綴也を襲い始め
る。
「何だか悪い事を聞いちゃったけど貴方は油断できないって知ってるから悪
いけど容赦なくこのまま行かせて貰うわ!」
何時も練習相手には解除しようとしてその途中で負けている為に解除に成功
した経験はなかった。
しかしこのままでは綴也の負けは必至で負ければアイディアルは辞めなけれ
ばならない。
(それは嫌…だな…)
アイディアルは自分の将来の夢とは関係は無い。
将来アイディアルに関してはどんな風に関わるのかすら解らない。
ましてや高校生活が終わったらアイディアルを辞めてしまうかもしれないし
その可能性が高かった。
しかしこのまま負けてアイディアルを辞めるのは嫌だと思った。
アイディアルを辞めるとしてもこのような終わり方は受け入れる事はしたく
なかった何より折角の試合がここで終るのは嫌だった。
「―我が右手は理想に災禍をもたらし、我が左手は理想を悲嘆に落とす」
だから綴也は言葉を紡ぐ。
これは朝倉 綴也が勝つ為の戦いの始まりだった。
Mル…さて綴也さんのイリュシオンの引退を懸けた戦いが始まり
ましたが…。
嫌われてますね…。
T也…やっぱり野次は気分は良くないです。
けど気にしている場合じゃないので…。
Mル…さて綴也さんは此処で何やらまるで魔法の呪文の様なもの
を唱えだしましたがどうなる事やら…。
T也…ミフさんは知っているのにそんな風に知らない振りみたい
な事して良いの?
Mル…昔はそうやって次回に続いたのが様式美の様なものだった
んですよ。




