個色持ち同好会?
月曜日の昼休み。
約一週間後にサクラとの決闘する事になった綴也はサクラから当日までの一
週間特別にアイディアルの練習を許された。
彼女が本当は自分を嫌っている事は分かっているしこの試合に自分が負け
たらアイディアルを辞める様にと言ったがそれでも練習時間をくれるサク
ラは優しいと綴也は思った。
綴也にはアイディアルで頂点を目指したいとかチームで全国を目指すとかそ
ういった願いや夢といったモチベーションは無い。
やり始めたのは面白そうだったという事だけだ。
それなのに自分はいつの間にか此処に来ていたが望んでた訳でもない。
だから他の人達からすればそんなましてや姫神殺しと呼ばれる自分が不快に
見えるのだろう。
だが姫神殺しと言う異名も欲しかった訳ではない。
それでもそうなってしまった時の試合を綴也自身後悔する事はそれほど無か
った。
そんな自分が久しぶりに公式の試合が出来る自身の引退がかかっているのに
試合が出来る事に綴也は嬉しかった。
彼女の真意はなんであれ試合を申し込んでくれたサクラには感謝しかない。
彼女が自分の事を本当は否定したいのだとしても今の自分が出来る全力でサ
クラに勝つ。
彼女の真意を知っても綴也はサクラに勝つ為に一週間の練習をどうするか考
えていた。
「見つけたぞー!朝倉 綴也!」
練習をどうするか考えていた中大きな声がしたので振り向くとそこに一人男
子が立っていた。
この学園には男子が一年生しかいないので同じ年なのは間違いないし背丈も
綴也よりも高く容姿も整っている。
だが彼の髪と眼の色は個色持ちのように赤でも青でもなく金髪でブラウンの
色をした少年だった。
「君の噂は様々な所で耳を立てていなくとも聞こえてくる!!だがそれでも
俺は君に話があって来た!!」
「は、話?で、ですか?」
「その通りだ!」
教室でも自分がいると周りの空気が良くないのが解るので屋上ならばいいだ
ろうと思っていたがどうも此処にいても予想外の客人が多いのでどこか別の
場所を探す事を考えた。
がどんな内容にしても話は聞いてからである。
人の話はきちんと聞くようにと両親からも初恋のシスターからもよく言われ
ているので綴也は食べかけの弁当をしまい相手に向き合うことにする。
「先ずは自己紹介からさせてもらう。一年のサイト・ウィリアームだ!」
「サイト・ウィリアム?」
「待て、アとムの間に伸びが入るのだ良く間違われるが…俺の家名はウィリ
アームだ!」
「は、はい」
「何でも先祖がウィリアムよりもウィリアームのほうが格好良いと思い改名
し今もこの家名なのだそうだ」
変わった家名だと綴也は思った。
しかし自分の親友にも代わった名前を持つ者がいるし父親の旧姓も変わって
いるのでそう思うのをやめて話しを聞く事にした。
「それで、話というのは…」
「…君を俺の部活に勧誘したくてな」
「ぶ、部活!?」
部活という言葉に綴也は驚いた。
部活動など中学時代は入る事も断られるし誘われる事など皆無だった。
そんな自分に部活への勧誘などそんな事が奇跡のように思えた。
「ああ、俺達の部活個色持ち同好会にな!!」
「…………へ?」
が次の内容で頭に疑問符が何個も浮かんできた。
「あ、あのー…その同好会って…?」
「うむ!!呼んで字の如く個色持ちの同好会だ!!カラーズの人々を許可を
取って写真や絵のモデルになってもらったりして個色持ちと風景が調和した
新しい芸術作品を作るのだ!!」
とサイトは右手を握り力強く言った。
この時に綴也はこの人物がどういう人間かを理解した。
世界に個色持ちが生まれ始めた頃から、彼等のマニア達がいるという。
そして今の時代芸術家特に絵画の世界で絵の中に彼等を被写体や登場人物に
する事も珍しくなく個色持ち誕生による芸術の新時代と芸術界隈では何十年
と論争になっているとニュースで見た事があった。
目の前の少年もそんな芸術家達の卵の一人なのだろう。
そして個色持ち好会と銘打っているが個色持ち寄りの美術部の勧誘である。
しかし自分はその方面は得意ではないしそんな部活動に参加する気は無いの
ではっきりと断ろうと思った。
「もしかしたら君は私を何かのカルト集団のように疑うかも知れないが俺は
この命と愛色憲章に基き活どぼっぶ!?…」
と彼の力強い言葉が途中で彼の顔にめり込んだ拳によって中断された。
彼が直前に言っていた愛色憲章はたしか全世界に存在する個色持ち愛好会の
会員が持っているルールブックでこれを破った者は酷い時には切腹しなけれ
ばならないという噂があるというのもニュースでやっていたなあと思いなが
ら綴也はサイトを殴り飛ばした拳の主を見た。
一見するとこの愛好会は少し怪しい集団に見えるが彼等は個色持ちが生まれ
始めた頃から彼等の人権保護にも大きく貢献した集団なのだった。
この少年は自分と年が同じなのにそんな由緒あるもの所持しているのでそれ
だけ個色持ちが好きなのだろう。
そしてその人物を殴り飛ばした人物は女子で髪と眼の色は赤色で髪はポニー
に纏めてある個色持ちだった。
しかしその拳の繰り出し方は素人のものではなくキチンと練習しているもの
である事がアイディアルをやっている綴也の目からも伺えた。
「すまない。この男が迷惑をかけたようだ…」
「い、いえ…」
少女の方は殴り飛ばした少年の方は気にするといった様子も無くこちらに謝
罪をしてきた。
「ア、アンナ…何を…する…?…お、俺は…」
「それはこちらのセリフだお前こそ何をやっている?」
「俺はこの少年を俺達の新たな…んぐっふ!?」
今度はアンナと呼ばれた少女の右拳がサイトの腹に吸い込まれサイトは身体
を正しくくの字に曲げて腹部を抱えて蹲っている。
「言わんで良い…それこそ愚問だった…」
「うグッ…」
アンナと呼ばれている少女の拳はさっきも見たが見事な一撃だった。
この二人はどうやら知り合いのようだが格闘技経験者が知り合いとはいえ拳
を振るうのは暴力事件として扱われないかと綴也は思ったがこの二人にそれ
を気にする雰囲気は無いので流す事にした。
「私はアンナ…アンナ・アルキュリアだ。いきなりこの男が変な事を言って
すまなかった」
「い、いえ…僕は朝倉 綴也といいます。部活の誘いは断りますけど…誘って
もらってありがとうございます…」
「…どういう意味だ?」
「いえ部活に入らないか?なんて今迄無かったんでなんか嬉しくて…」
「そうかそうか!?ならば君も一度俺達の部活にぐっぶっ!!」
今度はアンナのキックが力強い声を再び響かせ始めたサイトの顔を捉えた。
今度の一撃はどうやらサイトの意識を刈り取ったようだった。
アンナのキックは蹴りはまるで居合い斬りの様だだと綴也は思った。
「…アンタがどういう人間かは解らないが忠告しておく。そんな誤解を招くよ
うな言動は辞めた方が良いぞ…」
「え!?は、はい…?」
「まあ良いこいつは連れて行くから安心して昼飯を食ってくれ」
「え、えっと…お騒がせしました」
「それはこちらのセリフだ。ただアンタが本当はどんな人間かは知らないが
姫神殺し等の噂が立っているアンタをこいつの部活に入れるのはリスクがあ
りそうだからな勝手なお願いなんだがアンタも出来ればこできる限りコイツ
に関わらないでくれ…頼む」
「…はい」
彼女はいきなり現れてサイトに威力の乗った拳と止めに蹴りを見舞っている
がそれでも今の彼女の言葉にはサイトへの気持ちが見て取れた。
そんな相手がいることに綴也は羨みながらもサイトは幸せ者だと思った。
「じゃあ、ああ…もしかしたら何度でもコイツが誘いに来るかもしれないが
何度でも断って私が来るまで持たせてくれ。コイツを私が止めるから…」
「はは…」
先程まであまり関わらないでくれとお願いされたが向こうから関わってこら
れたら自分にはどうしようもないがそちらはこちらで何とかする言う発言が
何だかおかしくて返事も笑い混じりになってしまった。
去り方は格好が良いのにその手に気絶した少年をそのまま引き摺っているの
で今までの雰囲気が台無しだなと思いながら綴也は昼ご飯を再開した。
「凄い人達だったな…あの二人」
アンナの方からは出来る事なら関わるなとお願いされたがあの二人は見てい
て面白かったなあと思い綴也はサイトを面白そうな話し相手にしたいと思い
ながらお昼の休憩場所の変更計画を中止する事にした。
同じく月曜日。
お昼のとあるアイディアルセンター。
そこには人間にしか見えないが人間ではない女性が空間ウィンドウを操作し
ていた。
操作内容は通信間も無くしてそのウィンドウに女性が呼び出した相手が画面
越しに出て来た。
「久しぶりの学校だというのに貴様から連絡が来るなど…先ず聞きたい何故
私の連絡先を知っている?私は貴様に連絡先を教えた覚えは無い筈…」
「簡単な事です以前貴女のキューピットさんに連絡先を聞いたのですよ」
「…盗み見たの間違いではないのか?」
「…言い掛かりです。ちゃんと聞きましたよ…コショコショしましたけど」
「いつも疑問に思うのだが貴様はなんでそこまで彼をからかう事にこだわる
のだ?」
「愚問です。それが私の生き甲斐だからですよ!!」
「いい加減違う生き甲斐を見つけてその姿と声をやめろこのポンコツ野朗!!」
「…貴女こそいい加減彼の為になっていないお節介はやめるべきです!!今
回私が連絡したのは貴女のせいなのですから…」
雰囲気はとても友好的なものではない。
そもそも二人はお互いが気に入らない。
呼び出した彼女からすれば相手は恩人である彼の事を気に掛けながらもその
気遣いが裏目になっている事に未だに気が付いていない疫病神既婚女でしか
なく。
呼び出された彼女からすれば相手はお客である筈彼の事をからかう事が生き
甲斐だと言いそれに全身全霊を賭けている頭がおかしいポンコツ野朗でしか
ない。
この後彼女達は二十分以上口論を続けていた。
「…話がそれてしまいましたが貴女に協力を仰がなければいけないのでこう
して連絡してしまったのです」
「…その言い方は引っかかるがまあ良いどういう事か説明してもらうぞ…放
課後に」
「貴女の所為で話が進まなかったんでしょ!?この疫病神女!?」
「誰が疫病神だこのポンコツ野朗!?」
結局相手の休み時間終了五分前まで口論を続け最後にお互いに疫病神とポン
コツ野朗と言い会話を切った。
Mル…今回初登場の二人は作者が何か日常に夫婦漫才をしてくれ
る人はいないかなあと言うコンセプトで作られております。
E香…それは必要な事なのか?
Mル…漫才すなわちお笑い。
日常にはお笑いが必要なのだという作者の願いが込められ
ているのです。
E香…それがドツキ漫才なのは世代によって評価が異なりそうだ
がポンコツ野朗よりは真っ当だな…。
Mル…失礼な女ですね。
私貴女が本当に気に入りませんね。
E香…私もだ…貴様は気に食わん。
Mル…作者が連載にかまけておろそかにしたあとがきでわざわざ
本編前に私達を喧嘩させてくれる位気を回してくれるんで
すもの…うふふ。
E香…全く、作者もたまには良いことをする…ウフフ。
二人…ウフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフフ。




