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IFかもしれない世界で綴る物語(あるかもしれないみらいで生きるライフ・ストーリア)  作者: きちだ しんゆう
理想と幻想の間~ミックスド・リアリティ
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幻想と勝負への誘い






アラームは鳴り響いたが両者は剣を構えたまま動かなかった。


「剣を構えたままって…綴也君…巌流島のつもり?」

「?…がんりゅうじまって何なのかわかりませんけど…何時もなら剣と一緒に銃を使うんですけど今日は剣でどう戦おうかと思って…」

「?…どういう事?」

「えっと…女性と近距離で戦うと否が応でも視界に胸のあたりが入ってしま

って…気分が…」

「ああ…体質ね…そうだったわね…君」


これが男同士ならば剣だけでも戦うのに支障は皆無だが異性と戦う時は近距離で戦うのがほぼ常なので視界に体調が悪くなるものが入ってくる回数が多くなる。

少し入るだけでも綴也にとっては結構なダメージになるので戦いにくいのだった。

この時だけは綴也自身も自業自得とはいえ何故こんな体質になったのか嘆きたくもなった。


「綴也君には悪いけど私もこのままって言うのも困るから…遠慮はしないで行かせて貰うわ…」


そう言うとサクラは剣を構えて突っ込んでくる。

綴也は剣を構える。

綴也とサクラの剣を交差し刃が響くように音を立てた。

剣と剣が交わっては音を立て続ける。

サクラの剣を綴也が受け止めまた綴也の剣をサクラが受け止める。

綴也が左から剣を振るえばサクラがその剣を右から剣をふるってぶつかり合いサクラが上から剣を振るえば綴也は下から剣を振り上げて受け止める。

綴也が剣を持って翔ればそれに応えるようにサクラも翔る。

剣と剣は交差し離れまた交差を繰り返す。

交差を繰り返せば繰り返すほどにその速さも激しさを増していった。

ここに観客がいたら一見見ると互角の勝負か剣舞と見られるかもしれなかったが綴也は最初から不利だった。

身長の体格差等を上げられる事が多いが最早普段の練習相手は自分より大きい人ばかりなのでそれほど問題ではなかった。

しかし綴也にとっては体格の差は事女性と戦う場合は別の意味で大きな問題があった。


「ぐっ…うっ」


それは先程から当人も何度も言っていた事ではあるが近距離で戦うと綴也自身の眼に無自覚な視覚情報として取り入れてはダメージになってしまう物を取り入れる回数が格段に多くなる事であった。

綴也の身長が相手よりも高ければその回数も減らす事も出来たかもしれないが綴也の身長は下手を打つと丁度それがほぼ望まなくても視覚情報として取り入れてしまう位置になってしまうのが多かった。

眼を閉じてその瞬間だけやり過ごす事もその一瞬で命取りなので出来なかった。

イリュシオンではそれは可能だったがあれは綴也自身の実力だけでは無くあのあの世界の環境ゆえに出来た事で現実では出来なかった。

良く練習相手をしている電子製命体も。


「この欠点だけは本当に残念でなりませんね。本当に勿体無い私が相手でもこんな風になるなんて…微笑ましい様な気もするですが…」


心のそこから残念といらない太鼓判を押すほどだった。

そうしてその問題は結果となって現れ始める。

二人が剣を打ち始めて綴也の剣に明らかな遅れが生まれ始めた。


「クッ!!」


剣を打ち合った時間は少なくとかなりの時間が立っていたがそれでもサクラの剣は段々と剣の速さが増していた。

それに比例するように綴也の剣は気分の悪さが増せば増すほどに剣の速さ削られていく。

綴也もそれでも食らい付いて行くが遂に剣自体を弾かれて体勢を崩してしまった。


「クッ!」

「終わりよ!!」


そう言ってサクラは綴也に一撃を放つこれが当たればサクラの勝利だった。


(僕は…負けるのか…?)


気分は吐き気で苦しい中そんな事を思考する。

銃無しで戦えばこんな事になる事はミフルとの練習で嫌と言うほど思い知ら

されている。

しかし自分でもよく持った方かも知れないとも思った。

サクラの剣が迫る。

女性が相手である事を負けの原因か?

自分の手に銃が無いからか?

それが今の自分の実力なのか?

そんな事が綴也の中を駆け巡る。


(いやだ…終りたくない…な)


負けるのは練習で幾らでも負けている。

負けても悔しいけど仕方が無いのかも知れないとも思った。

でも嫌だと思った。


(折角の試合なのに…)


そう彼にとっては練習試合とはいえ久しぶりのアイディアルの試合だった。

相手も何時もの練習試合とは違い天と地程の差は感じないが自分より強いと思った。

でも…届かないとも思えなかった。

そんな相手に諦めるなんてそれこそ情けない気がした。

何より折角の試合を…アイディアル(大好きなスポーツ)を此処で終らせたくないと思った。


「まだ…だ!!」

「!?」


その瞬間綴也は弾かれた右手の剣をそのまま地面に刺すとまるで棒高跳びの様にそのまま飛び上がった。


「な!?」


サクラが驚いている間に綴也は体をばねの様にして後ろに着地して剣を引き抜きそのままサクラに詰め寄り一撃を振ろうとした。

その際にまたしても視覚情報でダメージを食らってしまい吐き気が強くなったがそれでも綴也は剣を振るう事をやめなかった。


「はぁああああああああああ!!」


ただサクラに一矢報いる為に吐き気すら無視した。


「ストォォォォォォォォォォォォォォォプ!!」


その一撃が決まる前に第三者の声がかかり彼の顔ににパアァン!!という音

が鳴った。


「痛っ!?た…って…え?」


剣を振りおろした途中の体勢のままを見るといつの間にかお笑い番組のボケた相手に突っ込む為に用いられる道具を手にミトラが立っていた。


「え?ではありませんよ。綴也君、反則負けです!!」

「は…んそ…く?」

「最初に言ったではないですか…剣以外は使っては駄目と…()()も駄目です!」

「僕、蹴りなんて…」

「彼女を見てみなさい!」

「え!?」


ミトラの指摘で綴也はサクラを見るとサクラの手から剣がなくなっていてサクラは苦笑しながら手を握ったり開いたりしている。

綴也は周を確かめるとサクラの後ろに彼女の剣が刺さっていた。

つまりあの時知らずに彼女の剣を蹴り飛ばしてしまった事にようやく気が付いた。


「そもそも武器を失った人にそれも女性に対して剣を振り下ろすなど以ての外です!!反省です!!」


そう言われようやく綴也は自分が失敗してしまった事に気が付いた。

まさか勝負に熱中しすぎて練習である事もわすれさらに相手の武器を飛ばしてしまった事にすら気付かない自分に恥ずかしく顔が赤くなりながらも綴也は頭を下げた。


「ごめんなさい!!会長!!」

「いや、ま…まあ…ワザと無いなら今度は気をつけてくれれば…」

「いや!!僕練習試合のルールも忘れちゃ…うぷっ」


綴也が自分の失敗を自己申告しようとした瞬間羞恥で赤くなっていた顔が突如として青く変色したのだった。


「綴也君!?」

「まああれだけ見ちゃってたんですから気持ちが悪かった筈なのにあんな無

茶をすれば当然ですね。綴也君、後でキチンと床掃除して下さいね…」

「う…うん」


自分の事を無視した行為と相手の事を気づかなかった事ははこうしてまるでバチが当たったかのように綴也の勝負の結果となって体に現れたのだった。


「ぜはぁ…ぜはぁ…」


その後掃除も終わらせて休憩を挟み練習試合はキックやパンチの使用も改めて禁止し練習試合は再開され残り全部が綴也の負けに終わるのだった。


「銃が使えない形式ではこんな結果ですか…」

「それでも…私にとっては驚きだわ、もう引退しているとはいえ私の剣に毎

回毎回こんなに食い下がれるなんて…最後なんて私も余裕なんて無かったわ

よ…」

「あはは…それくらいは出来ないと…いけないと思って必死だっただけです

。それに数を重ねるほどに限界が来るのが早いし…」


そうどんなに食い下がっても限界が来てそれが致命的な隙となり一本を取られて負けの繰り返しだった。

最後の一回だけは一撃を入れられまいと必死に抵抗し続けて我慢が限界を超えるまで戦い続けた。

結果は試合続行不可能で綴也の負けとなり再び掃除を挟む事となった。


「そうですね全部で五戦して綴也君の五連敗とはいえ残りの四敗は決して反則は使わずの上での惜敗ですから内容は悪くは無いでしょう。最後は一時間以上も吐くのを我慢しましたし…おっと僕とした事が妹を誑かす男を誉めてしまうなんて…はあ憂鬱ですね…」

「誑かしてません!!」

「おや、妹があんなにも人間に誑かされているのは綴也君だけなのですが…」

「だから誑かしてません!!寧ろからかわれているじゃないですか!!」

「困りますね。妹も優秀な電子製命体だというのにこのままではスキャンダルになってしまうかも…」

「うう…そんな事言われても…」

「しかし…君とのコミュニケーションを奪われたら妹はきっとトチ狂って世

界中コンピュータをハッキングして核兵器を爆破させるかも知れない。ああ…一体どうすればこの難問を解決できるのか…頭が痛くなりそうです」

「何だかすみません!!」

「せめて君が姫神殺しなんてやっていなければ後は僕の特別更生カリキュラムで君を更生させれば済む話だったのですが…やれやれ」


ミトラはミフルの兄なので何度も話はしている。

決して仲も悪くもないが彼は妹のミフルと違い綴也の事を快くは思っていない。

寧ろ綴也が姫神殺しを知っていてもあのように接してくるミフルの方が良く言えば珍しいのだ。

ただ若干ミフルが元気が良いのであのように妹の事で頭を悩ませている事が多い。

その何割かに自分も関わっているのでその事に関しては綴也も頭が上がらない。

しかし厳しい事言ってくる言いながらも綴也と関わってくれる数少ない人でもある。


「ねえ…綴也君」

「は、はい?」

「やっぱり本気でアイディアルを辞めてイリュシオンに来ない?」

「え?」

「正直君がこれほど強いとは思わなかったわ…でも今回の練習試合ではっき

り思った、君の体質はアイディアルをやるには不向きだわ…」

「…でも僕は…」

「でもね…イリュシオンでならば君は多分私や黒トカゲを超えると思うの…

だから理想求者をやめて幻想住人にならない?」

「え!?いや…僕は…」

「じゃあ…私と勝負して」

「え?」

「私が勝ったら君はアイディアルをやめてイリュシオン一本にするの!綴也君が勝ったら…あの時の要望どおりにどっちもOKにしてあげる!!ね!!」

「あ、あの…会長!?」

「あの時は言えなかったけど君は理想求者よりも幻想住人に向いている筈よ!!この私が言うんだから!!」

「でも…僕はまだイリュシオンに慣れて…」

「そんなの君の根性でならば何とかなるわよ!!姫神殺しした後もこんなに技を一人で磨き上げたのだもの!!イリュシオンの環境を克服できない筈がないわ!!君はどっちもやるよりもどっちか一本に決めるのも大事だと思うの!!」


サクラの言っている事は決して間違ってはいないし寧ろ正しい事だろうと綴也はその言葉に首肯できずにいた。


「でも僕は…」

「イリュシオン酔いの事や体質の事だったら一緒に克服しましょう。私も手伝うから…」


サクラが綴也の手を握りまじまじとした眼で見つめて来る。

そこにはどこか獲物を見る肉食動物じみてて少し怖いと思った。

後何か忘れている気がしたがサクラの押しの強さに綴也は困惑しきりで思い出す余裕は無かった。


「あの…会長…何でそんなに僕をイリュシオンに入れたいんですか?」

「そんなの…私やあの黒トカゲよりも強くなるかも知れない男が現れるなん

て面白そうだしそんな男がイリュシオンをやらないなんて勿体無いからよ!!」

「でも…僕は…」

「良いではないですか…」

「え?」


サクラのイリュシオンに対する思い入れに押されながらもそれでも自分の意思を声にしようとする前に第三者の声が綴也にかかった。

しかしそれはミトラではなかった。

綴也達が顔を向けるとそこには山吹色の髪と眼を持ったミトラと似ている雰囲気を持った綴也にとっては見慣れた女性が立っていた。


「ミフさん!?」

「はーい。綴也さんの専属インストラクターミフルちゃんですよ!!」

「そんな職業無いでしょ!?」

「綴也君…この人は?」

「始めましてお客様。私は先までお客様たちを見ていたミトラの妹でミフルと申します。以後お見知りおきを…」

「あの…ミトラさん…お兄さんは?」

「あの兄ならば私が此処に戻った瞬間この問題児のお世話は貴方に任せますとさっさと去っていきました。全く私がこの子に関わるのを嫌がっているくせに私に押し付けるんですから…全く」

「さっきそれを辞めさせたらミフさん世界中の核兵器をハッキングで爆破しかねないってミトさん言ってたけど…」

「そんな事するわけ無いし出来る分けないでしょう!!全く…私がするとすれば全世界のネットワークにウィルスを感染させる事くらいで…」

「それも駄目です!!」

「冗談ですよ。私の生き甲斐が無くならない限りはそんな事はしませんよ」

「生き甲斐って?」

「あの…楽しそうな会話中良いかしら?」

「あ!」

「申し訳ございません。お客様…それで」

「それで…ミフルさんね、今貴方は私の意見に賛成してくれたのかしら?」

「はい。綴也さんは何時も此処でアイディアル練習ばかりで今では友人も今は東京へ…ならばいっそこの機会にアイディアルを辞めて他の事を始めるのも一つの道かと思いますので」

「ミフさん!?」

「ねえミフルさん。電子製命体とはいえスポーツセンターのインストラクターAIが一人のお客様に対してそんな事言って良いの?」

「フフ、私と綴也さんの付き合いは姫神殺しをやる前からなので長いんですよ。だから老婆心の一つや二つは芽生えてしまうのです。これは私が与える試練なのです」

「試練?」

「ええ…綴也さんのこれからが掛かった試練です」

「ねえ?これは勝負成立って事でいいのかしら?綴也君?」

「え!?えっと…わ、解りました。勝負を受けます」

「そう。じゃあ…ルールは正式な試合形式で今日みたいな練習試合じゃない

から君も銃の使用もOKで。試合は一週間後の土曜日で此処でやるわ。私もかつての勘を出来る限り取り戻したいから一週間時間をもらうわ。その間綴也君も土曜日まではイリュシオンよりここでアイディアルの練習に集中して良い。この条件でどうかしらミフルさん?」

「そうですね…お互い条件は五分と五分の様ですから問題はないかと…」

「良かった。じゃあ今日はこれで失礼するわ…綴也君今日は練習相手ありが

とう…楽しかったわ」


そうしてサクラが去っていくのを見送る。

しかし翌日に行き付けの施設でサクラと会って練習試合をしてアイディアルを続ける為にも彼女と勝負する事になるなど思いもしなかった事態に彼女がどんな思いで勝負をしようと思ったのかその答に心の何処かで理解している

気がしながらも答は出ないとわかっていながらも彼女の後姿が扉の向こうへ消えるまで考えていた。


「まさか…あの娘だったとは…全く皮肉というべきなのかも知れません」

「ミフさん…会長の事を知ってるんですか!?…ってイリュシオンで知って

ますよね…」

「ええ、アイディアル時代の彼女の事も知ってるんですけどね」

「え!?アイディアル!?そうなの!?」

「彼女は有名でしたから…ですが此処で彼女の事を喋るのは恐らく不公平で

しょうね」

「不公平?」

「まあ綴也さんは彼女の戦い方を全部知らないし彼女も貴方の戦い方を全部知らないでしょう。だから此処で私がそれに関する事を喋るのは…ね」

「ああ…じゃあもう一つ…さっきこの勝負を試練って言ってたけど…どうい

う事?」

「大雑把に言うとアイディアルとイリュシオンの二足草鞋をする人はどちらからも良い顔をされる事は少ないです…っと言うのは建前で…」

「建前なの!?」

「向こうの真意が何であれ折角の試合の機会が出来たのですから…とも思いまして…それにここで断っても彼女に怪しまれるだけでしょうし…」

「怪しまれる…ですか?」

「綴也さん、午前中に私に泣きそうな顔であのお嬢さんが好きなのにあのお嬢さんに学校から追い出される計画を立てられているほど嫌われているって相談した事を忘れていませんか…?」

「あ…ああ…うん…そうだね…そうだったね…」


綴也はようやく先程思い出せなかった事を思い出した。

そうどんなに親しそうに会話をしてもあんなに肉食動物じみた眼でイリュシオンに勧誘してこようと彼女の真意はもう知っているのだ。

そう思うと少し綴也は寂しくなった。


「ただ、建前と言ったことも決して冗談ではありませんよ…」

「冗談ではない?」

「片方だけとはいえ少しは知ってるでしょ?理想求者と幻想住人はお互いに対抗意識を燃やしているのです。故にアイディアルもイリュシオンもやっているどっちつかずの人はどちらでも嫌われやすいんです」

「そうなの?」

「イリュシオンの運営側からすれば頭が痛くなる話なんですけどね。だから理想求者界一の嫌われ者の貴方が二足草鞋なんて知られたらどうなるか…」


ミフルの真面目な物言いに綴也はただただ驚いた。

まさか生まれて初めてのゲームと大好きなスポーツを両方したいというだけでコレだけの事を言われる等綴也は思いもしなかったのだ。

それだけに何だか心に重々しいものが乗っかっていく様な気がした。


「まあ、一概にお互いを嫌っているとも言えないのですがね貴方も出会った悪役生会のような人達もいますし中には枠組みを超えて人気のある人もいましたから」

「そうなんだ…どんな人なのかな?」

「例えば…先程のサクラさんや白い姫神です」

「あの…僕…姫神殺しって知られたらもしかしてイリュシオンの人達にも嫌

われる?」

「だから試練なんです。貴方は理想求者最大の嫌われ者である貴方が理想と幻想の二足の草鞋を履くに値するか自分を試していただくのも良いかと思いまして…」

「それで僕が負けるとしても…?」

「ええ、アイディアルだけに情熱を掛けるだけが人生ではありません。それに貴方の夢にはどちらも関係ありませんから…」


確かにミフルのいう事は絶対的に正しかった。

アイディアルもイリュシオンも綴也自身の将来の夢には関わり合いが無い。

それ故に綴也にはいずれそれを辞める日が必ず訪れるかもしれなかった。

ミフルの行為はそれをほんの少し早めたとも言える行為だった。

だから綴也も強く反論できなかった。

それでも辞めないのはアイディアルは好きだから。

イリュシオンを続けると決めたのはあの恐怖から逃げるのは嫌だからであ

ったからだ。


「もし貴方が負けた時は貴方のPDをお家にさせてもらってプライベートAIにでも転職しましょう。貴方をからかう事は私の生においてどんな事よりも重要ですから貴方が此処に来なくなったら人生の楽しみが消えてしまいます…」

「何か僕をからかう事しか考えてないでしょ!?」

「それこそ我が人生!!だからです!!貴方のプライベートAIになった暁には貴方が死ぬその瞬間までからかって愉快な人生をお約束いたします!!貴方の夢が叶えられようとも敗れようともね…()()()()()()()()()()()()

「…はあ」


動機にどこかこの人らしい理由を聞いて呆れるようなホッとするような気持ちになりながら綴也は一週間後に自分の人生の岐路になるかも知れない勝負をする事となった。


「それでは今から練習を再開しましょうか?」

「あの…二回も吐いたからもう少し休みたいんだけど…」

「折角試合が出来るんですから喜びで肉体の限界を凌駕しませんと…」

「試合が出来るのは嬉しいけど一日中練習しているから流石に…」

「あら、こんな所に綴也さんの大好きなおみきさやさんの無料食事券が…綴也さんの今夜のご飯はおみきさやの鳥の天ぷら卵とじ丼と海老天ぷらざるうどんいうのはどうですか?」

「頑張ります!!」

「ふふ、やる気がでてよろしい」


自分でも大好物を食べられるチャンスで奮い立てる自分の現金さに自分でも呆れながらもやる気が出た綴也はその後練習を耐え抜き彼女からお食事券を貰った綴也は両親に今日は晩御飯は要らないと言う連絡を入れて家の近所にあるお店に赴き好物堪能して家路に着いたのだった。



旧天神のとあるスポーツセンター。

そこには数多の人影がいた。

これらは全て立体映像である。

数にすると百人それらは全員が上位の理想求者であり現役でプロ活動している人物のものもある。

立体映像達の向かう先には一人の少女が立っている。

右手に剣を携え自らの髪と眼と同じ色軽装の戦装束を身に纏いサクラ・レノンフォードが百人を前に剣を構えている。

立体映像とはいえ向かって来る百人の猛者を前にしても怯む事無く立っている。

彼等に向かってサクラは翔る。

それに呼応するかの様に立体映像達も各々武器を構えたりサクラに向かって行く。

百人対一人。

普通に考えれば勝敗は考えるまでも無い。

しかしすべてが終った時戦いの最後に立っていたのは桜色の髪と眼を持つ少女一人だけだった。

そこに傷という傷は無い。

その戦力差をひっくり返したのである。

彼女がアイディアルを退いてから二年ほど経つがそれでも彼女にはそれだけの力があった。

だがサクラはこの勝利で驕る様なことはしない。

何故ならこれよりも何倍の人数を相手に一人で戦い勝利した理想求者もいるからだ。

彼女は一週間後その理想求者と戦って勝利した者と戦う。

彼女が綴也に勝負を提案した直後彼女は電車で旧天神の行きつけの施設に赴き一人で練習をしていた。

その時間は一時間も掛かっていない。

しかし彼女の顔に強敵と合間見える競い合う者同志の喜びはなかった。

そこにあるのは怒り。

それも悪と呼ばれる者に対する多くの人間が抱くであろう正しい怒りと呼べるモノだった。

彼女が綴也に勝負を提案し負ければ彼がアイディアルをやめる事を要求したのは彼女が綴也に言った事が真意ではない。

姫神殺しである彼が何事も無い様にアイディアルを未だにやっている事に心の中で義憤を抱いたからである。

彼はあの白い姫神との戦いに勝利したが彼女はそれが正当な勝利では無いと思っている。

どんなに考えてみても彼が彼女に勝てる要素も要因もありはしない。

それこそ何かの反則があったとしてもおかしくない。

そう思う程白い姫神と朝倉綴也には力の差があった。

なのに彼は彼女に勝った。

反則を使って勝ったのだと思った。

何故なら彼女はその場で見ていたのだから。

あの試合を最後に彼女の憧れはアイディアルから去っていった。

「一度自分が負ければ私は引退をする」と公言してしたので約束を守ったともいえる。

それでもその原因である彼自身もそんな彼が未だに何食わぬ顔でアイディアルをしている事も許す事は出来なかった。

サクラ・レノンフォードは故あって理想求者退いた身だった。

しかしアイディアル自体を嫌いになった訳ではない。

だからこうして今もイリュシオンの後はアイディアルを趣味の様に楽しんでいる。

周りの人たちも良い人達でアイディアルを楽しいと思えている。

だから反則を行なおうとする輩が許せないとも思う。

ましてやその時の事をなんとも思っていない人間ならばなおさらだった。

彼がどんな目的でこの学校に来たのかは解らない。

彼の言動は普通にも思える。

しかし彼女は信じようとは思わなかった。

あんな事をやった卑怯者の言葉は信じることなど出来る理由も無い。


「必ず…あの男に勝って見せる!!私の全てで…」


かつて理想求者であった者としての誇りと今もアイディアルが好きな者としての純粋な思いが彼女の瞳と剣とその周りを漂う複数の刃に宿っていた。


「貴方の思い通りになんてさせないわ…朝倉 綴也!」


Mル…全くあの兄は…。

   私がいない時に綴也さんに失礼な事をしませんでしたか?


T也…そんな事は…無いですよ。


Mル…何で答えに若干の間があるんですか?


T也…解ってて聞いてますよね!!絶対!!


Mル…何の事でしょう。

   ウフフ…。

   さてこの回での綴也さんとサクラさんの練習試合ですが綴

   也さんは女性相手では近距離武器で戦うと胸が眼に写って

   しまう事で吐き気という名の視覚情報ダメージが発生しそ

   れが限界を迎えると。


T也…吐きます。


Mル…と言うわけで綴也さんは剣と一緒に銃を使う様になったの

   です。


T也…自分で言ってて何だか理由が格好悪い…。


Mル…ですが剣と銃を使って戦うというのは人気らしいですよ。


T也…そうなの?


Mル…白い姫神が剣と銃でしたから…。


T也…何だかすみません。


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