青白い炎と赤黒い炎と光る剣
女はそれでも綴也に再び死の一撃を放とうとする。
すると光剣から光が放たれた。
光が更に強くなり女はたまらず飛び退いた。
やがて静まった先で綴也の持つ光の中から蒼い色は一切消え去りその玩具か
ら発せられる光の色は輝く白金と呼ぶに相応しいものになっていた。
「な!?」
「何なのよ!?それは!?」
「これって…あの時の?」
男と女がそして綴也の三人この突如起こった現象に驚いていた。
しかし男女がこの出来事自体に驚いたことに対して綴也の驚きは性質が異な
っていた。
綴也は一度だけこの現象を見たことがあった。
しかし見たのはその一度だけでそれ以来一度も見る事は無かった。
それがまさかこんな現実からかけ離れた状況の中で見る事に驚いていた。
「アンタ素人よね。私とアイツの事なんて何も関係ない癖に…いきなり戦いの
邪魔をするわ、私達の戦いを止めたいとかのたまって玩具の剣を振り回すわ
挙句訳のわからない光を使うなんて…正義の味方面していい加減にしろこのク
ソ野朗が!!私達が戦ってるのはアンタ達の所為なのに!!」
しかしこの場にいた全員の中でいち早く我に帰った女が激情に任せて赤黒い
炎を纏い再び綴也に向かって突撃してきた。
それを見た綴也は思わず白金の光を放つ自分の宝物を両手で握り彼女に向か
って金色の光を振るう。
「そんなもの!!」
女はそんな綴也を今度こそ斬ろうと上段から剣を振り下ろした。
赤黒い炎と白金の光がぶつかり合う。
しかし炎と光がぶつかった瞬間赤黒い炎はそれこそあっさりという言葉が当
て嵌まるほどに消え去っていた。
「え!?」
「なっ!?」
男と女の表情に驚愕が表れる。
しかし綴也は驚きはしない。
驚く場合じゃない。
痛みと恐怖で只立っている場合でもない。
そもそも何が如何してこんな事になっているかも解らない。
驚くにも何から驚いていいのかそれすら麻痺してしまったのかもしれない。
それでも忘れていなかった事がある。
それは何でこの出来事に首を突っ込んだのかという事。
この二人の戦いを止める事である。
それしか考えていなかった。
まるであの幻想の世界であの黒い怪物から二人の少女を守ろうとした時の様
だった。
「あがぁああああああああああああああ!!」
「!しまっ!?」
恐怖の混じった叫びを上げて彼はその白金の光を驚愕から抜け出せない女に
叩き込む。
剣は斬る為の物それは目の前の女を上から下を切断してしまう軌道だった。
しかしその光は彼女を斬れる事は無かった。
彼女の身体に触れた光の剣は自身の色と同じ光を放ち女を吹き飛ばした。
光が止んだ時そこにいたのは吹き飛ばされそのまま倒れて動かなくなった女
と…。
「はぁ…はぁ…」
痛みに耐えて息を上げる綴也が立っていた。
吹き飛ばされた女の方は距離はあるが気を失っているだけの様だった。
理由は綴也自身もわからないが彼女は生きている筈だと綴也は確かめる為に
彼女に近づく。
「うっ…」
「はぁ…痛ッ!?」
息がある。
その事に安堵した瞬間身体が痛みを発した。
痛みを無視して剣など振るった為に再び感じる全身の痛みに綴也は蹲った。
しかし理由はわからないが彼女を止める事ができた事を綴也は喜んだ。
後は男の人の方だが彼は話を聞いて貰えれば何とかできるかも知れない。
そんな事を思った。
「がぁあああああああああああああああ!!」
「なっ!?」
そんな綴也に腹の底から振り絞るような泣き声のような叫び声と共に男が
綴也にけて青白い炎を纏う剣を振り下ろそうとしていた。
綴也はその剣を光を剣で受け止める。
「痛っ…い!?」
「お前…よくも!!…彼女を…よくも彼女を殺したな!!」
「え!?…ま、待って彼女は…まだ…ぐっ」
「彼女を殺したのがそんなに嬉しいか!?」
「は?…」
「止めようとしたのに…!!」
男は女が綴也に殺されてしまったと思いそして綴也はそれを喜んでいると誤
解をして涙をむき出しに斬りかかって来たのだ
何でこんな事になったかは綴也も解らないし彼女は生きていると言いたかっ
たが男の方は聞く耳を持たない。
「君は彼女を殺したんだ!!それ以外の方法だってあった筈なんだ!!それ
なのに!!それが君達の正義なのか!!」
そう言った男の身体から青白い炎が激しく燃え上がっていた。
良く見ると傷口からも青白い炎が燃え上がりまるで男自身が炎になろうとし
ている様にも見えた。
「待って!!…良く解らないけどこのままだと貴方が…ぐっ」
「はぁああああああああああああああ!!」
男は綴也の言葉を聞く事は無く炎を纏う剣を綴也に何度も叩きつけていたが
その全てがの光を剣で受け止める事が出来た。
先程まで何も出来なかったがこの光が男の剣を受け止められる事に安心した
為かまるでアイディアルをやっている時の様に相手の攻撃を受け止めた。
「ぐっぅ…っ痛ッ!」
しかし実際に怪我をしているので一撃一撃を受け止める事はその痛みと泣き
顔になりながら耐える事だった。
しかし遂に耐え切れず綴也は男の剣に吹き飛ばされてしまった。
「がッ!?…グッゥ!!」
「俺は彼女を…だけど!!」
男の炎が更に燃え上がり最早体の一部も炎になっていた。
「俺は…お前が許せない!!何でお前みたいな正義ぶった奴の為に彼女が一
人っちにならなくっちゃいけないんだ!!」
そう言って男は綴也に突っ込んできた。
その言葉を聞いて綴也は痛みに耐えながら起き上がった。
「……」
何でそう思ったのかは自分でも解らない。
だが綴也は男の誤解を解く事を辞めた。
その代わり今言いたい事を思いっ切り言う事にした。
あの二人の事情を綴也は知らないし他にも色々考えなくてはいけない事はあ
る筈だが物語の主人公ではない自分には出来ないなと思った。
目の前の男も傍で眠る女性も言いたい放題だった気がした。
だから自分が今言いたい事をあらん限りの力を持って叫ぶ事にした。
炎になって翔けて来る男と自分の後ろで横たわっている女に向けて。
「そんなに…思っているなら…そんなに思っているのに…」
宝物を両手に思い切り握り締めて。
痛みも何もかも振り切って叫び白金に輝く宝物を青白い炎の塊に叩き込む。
「なっ!?」
白金の光は青白い炎を消し去る。
そこから綴也は女同様に白金に輝く光をこの男に叩き込む。
「理由なんて知らないけど勝手に仲良くケンカして自殺なんてやるな!!
このアホ馬鹿夫婦!!」
再び爆ぜてその中から男が吹き飛ばされてそのまま気絶していた。
そうしてこの公園には静寂が訪れた。
そこには気絶する二人の奇妙な格好の男女と傷だらけで息を荒げる少年の姿
があった。
「し、しまった。ケンカを止めようと思ったのに二人供気絶してるじゃない
か!!…イッ痛っ…どうしよう?」
息が整った傷だらけの綴也は途方にくれていた。
体の痛みが他にも考えないといけない事があるだろうと言うかの様に警告を
発する。
綴也は男の方に向かい気絶しているだけなのを確かめ安堵する。
しかしこの二人供気絶しただけでケンカを辞めた訳ではない。
しかし自分以外いないのにどうすればいいか考えていた。
しかも自分は大怪我でこのままではどうなるかなんて解らない。
しかしそれが考えられる程心が落ち着きを取り戻していた。
そうしてまずは救急車かなと考えながら気絶している筈のもう一人の方を向
いた。
しかし綴也は失念していた。
「何してるのよ…」
これは現実を超えた本物の異常事態なのだという事を…。
「…え?」
振り返るとそこにあの黒い髪の女が立っていた。
「そいつに…あたしの…に…何するのよ!!」
そう叫び女の両手にある長い剣が綴也を貫き次の瞬間蹴り飛ばされていた。
だが女は綴也に追撃などせずにそのまま眠る男に駆け寄って行く。
「…起きなさい!!…ねえ!!」
それは男に止めを刺す為ではなかった。
「…」
「…起きなさいよ!!…ねぇ…起き…てよ」
女はそこに眠る抱き起こす。
女は男を呼んでいる。
生きている筈なのに男は答えない。
男は息をしている筈なのに彼女にはそれがわからないくらい彼の顔は生気が
感じる事が出来なかった。
「…」
「起きなさいよ!!…死なないでよ…勝手に一人で死なないでよ!!」
女は男に叫ぶ。
男は答えない。
女の呼び声に涙が混じっていく。
「…」
「勝手に一人で死ぬくらいなら…」
表情も変貌する。
「死んじゃうくらいなら…」
涙とともに先程までの激情ではない何かが掘り起こされる。
「私と一緒に生きて一緒に死になさいよ!!」
それが彼女の本当の感情であり激情であり願いでだったのだろう。
呼び声は叫び声になってこの夜空に響き渡った。
「…うっ!」
「…っ!?」
「…あれ…?お…お…れ?」
「ああ…」
男は目を覚ます。
その眼に映っているのは先程まで殺しあっていた筈の女の泣き顔だった。
「ああ…ああ…もう!!」
「え?…ちょっ!?痛い!?」
女は男を抱きしめる。
それは怪我の等考えていない力一杯の抱擁だった。
痛みが男を襲う。
しかし女も怪我人で怪我はお互いがさせたものなので痛みはお互い様ともい
えた。
「…馬鹿!!」
「ちょっ…馬鹿って…」
「バカァ……バカァ……」
「あの…」
「バカァ……バカァ……」
「ちょっと…」
「ばかぁ…」
「…ごめん」
「どうせ死ぬなら私と一緒にいっぱい生きてから一緒に死になさいよ!!こ
の馬鹿!!」
「……ああ……そうだね……だったら一緒に生きないとな……」
しかし怪我など事など今は良かった。
男と女はお互い傷だらけの身体を優しく包み込む様に抱き合っていた。
そこに先程までの壮絶な雰囲気とは真逆のもだった。
それはお互いを想い合う男女の姿がそこにあった。
「よ…良かった…」
そしてその様子を倒れたまま見ていた者がいた。
「「!?」」
二人が振り向くとそこには心臓を剣で貫かれた少年が横たわっていた。
「だ…駄目ですよ…こ、恋人同志なのに…こんなケンカしちゃ…」
「き、君は?…まさか!?…俺達を…止める為に…」
「…」
「な、何でよ!?何でアンタは…そんな事!?」
「ご…ごめん…なさい。よ…く…解らない…でも…そっか…そうだね…僕…は…」
「…おい!!君!?」
「…ちょっと!?」
自分に駆け寄ってくる男と女の声が聞こえなくなる。
意識も意識できなくなる。
自分は物語の主人公ではない自分にこの結末も自業自得なのだろう。
こんな怪我を負った以上その先なんて考えるまでもなかった。
しかしそれでもあの二人を止める事が出来た。
(この二人…きっと父さん達みたいに仲のいい夫婦になりそうだ…ってそっか
…あの二人…どこか似ている気がしたんだ…)
そのことに不思議と満たされていく何かを感じながら綴也の眼と意識が閉じ
ていった。
「仲…良く…して…下…さい…ね」
そのまま綴也は眠りについた。
???…そういえばあの二人…何処かで見たような…。
???…そうなの?
???…うん、小さい頃に読んだ本…だったかな…
???…どんなお話なの?
???…冒険の旅に出た少年が何千年と眠っていた魔王と恐れら
れた女の人を目覚めさせてそれから二人で旅をするんだ。
???…魔王って悪者でしょう。
なのに少年と旅をするの?
???…詳しい経緯は覚えてないけど一緒に旅をしてそして…
???…そして?
???…なんだっけ…あ!!
???…どうしたの?
???…あの二人あの本の主人公と魔王さんに似てるんだ。
???…そう。
???…でもあの二人がどうなったのかは思い出せないな…。
あ!。
???…どうしたの?
???…本を読んでて父さんと母さんに似てるって思ったんだ。
それを言ったら父さんも母さんも顔が紅くなっちゃって…。
???…そう。
私は二人は心配要らないと思うわ…。
???…何で?
???…うふふ、内緒。
そろそろかしらね。
???…そろそろ?
???…目覚める時間よ。




