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殺し屋フウの異世界譚  作者: Bell
一章/前
24/25

しつこい男は嫌われる

 数時間前、明け方に訪れた時とは打って変わってガヤガヤと騒がしく賑わい立つ冒険者ギルド。

 

 確かに昼前というのは冒険者達が日銭を稼ぐため依頼を受けに来る時間帯ではあるが、それにしてはどうも様子がおかしい。

 全体的に空気が張り詰めており、冒険者達の多くは受付の隣に併設された広い食堂の席に腰かけ依頼を受ける様子もない。

 

 明け方ですら二人体制だった受付にも担当は一人しかおらず、他の職員達はギルド内を忙しく動き回っている。


「…無事に戻って来たって話は聞いたけど、なんだ随分と元気そうじゃないか」


 受付前のロビーでシルヴィへそう声を掛けて来たのは槍を背負った金髪の青年。


 すぐ後ろには仲間であろう男女二人の姿もあり、全員が銅で出来た冒険者証を腰から下げていた。


「無事で悪かったわね。セリオ」


「そう邪見に扱わないでくれよ。俺達だって心配してたんだぜ」


「それはどうも」


「何があったのかは聞かないけど、君もソロの危険性は実感しただろう。そろそろうちのパーティーに入らないか?後衛である魔法使いがソロっていうのは何処かで限界が来る。金級に昇格したいならパーティーを組まないと…」


「余計なお世話よ。それよりこの騒ぎは何?」


 その冷めた対応に苦笑を浮かべ肩を竦めたセリオに代わり、後ろの小振りな丸盾に片手剣を腰から下げた茶髪の女が口を開く。


「緊急依頼、『北の街道で確認された竜種の討伐』だそうよ」


「竜種?どういうこと?」


「詳しくは私達も知らない。今さっきギルドに来たばかりで、緊急依頼を通達されたんだから。ただ『受諾義務対象は銅級以上の冒険者。鉄級以下は、銅級以上のパーティーメンバーであり本人が希望する場合のみギルドの判断で参加』って話だから、中位の竜種でしょうね。今日はまだギルドに顔を見せていない連中も知り合いを通じて呼びに行かせてるみたいだし。もっと早いうちにさっさと依頼受けておけば良かった。貧乏くじもいいところ」


 そう溜息を吐く茶髪の女を、


「竜種が出たのならそれすなわち街の危機、その排除は冒険者の義務だ。それを貧乏くじなんて言うべきじゃあないだろう」


 もう一人の仲間であろう大弓を背負った大柄な男がそう諫めた。

 体格は大きく異なるが同じ茶髪に何処か似通った雰囲気の顔立ち、兄妹だろうか。


「その通り。大体、竜種なんていたら安心して魔領域で活動も出来ないからな。緊急依頼はシルヴィも受けるんだろう?」


「まぁ、そうせざるを得ないでしょうね」


 つい昨日まで賊に捕らわれていたシルヴィは体調も装備も万全ではない。

 が、グラナタ最高位たる銀級冒険者が街の危機に対して発せられた緊急依頼を断って降級、なんてことになればその評判は地に落ちる。


 一ヶ月行方不明になっていたことで様々な風評が広まっているであろうことも考えれば、むしろこの依頼で活躍して見せるくらいはしておきたいくらいだ。


「ジャックさんの姿もあったし銀級が二人もいるなら安心だな。と、そちらの彼女は新顔のようだけど鉄級ってことは別の街からの鞍替え組かな?」


「こんにちは、ボクはフウ。この街にはまだ来たばかりで彼女に色々と教えて貰っていたんだ。よろしくね」


 セリオ達三人から向けられた視線に、フウは相変わらずの見事な営業スマイルで答える。


「これは丁寧にどうも。俺はセリオ、冒険者パーティー"虹羽"のリーダーで等級は見ての銅級だ。後ろの二人はパーティーメンバーの…」


「フィラメラよ、こっちが弟のフェルナンド。女の冒険者は色々と大変なこともあるだろうから、何か困りごとがあったら声を掛けてくれて良いわ。まぁシルヴィが居れば大丈夫だろうけど」


 どうやら茶髪の二人は兄妹ではなく姉弟()だったらしい。


「メンバーはまだあと二人いるんだけど、ちょっと今はこの場にはいなくてね」


「そういえば確かに姿が見えないけど、どうかしたの?」


「アルセナは寝坊で、ウーゴはそれを起こしに行ってる。それにしてもフウさんは鉄級冒険者にしては随分と身軽な格好だけど、防具は持っていないのかな?」


 フウの格好は未だにチュニックの上にジャケットを羽織り下はスラックスと防具らしい防具を身に着けていない。


 一応斜め掛けにした革鞄は内側に織り込まれた合成繊維で銃弾も防げる優れた盾でもあるのだが、一目見ただけでそんなことが分かる筈もなく。

 

 石級や鉛級には魔物などとの戦闘は極力避け街中の依頼を中心とする冒険者もいるが、鉄級となれば昇級時点である程度の戦闘力が求められるもの。

 ギルド内を見回しても全く防具を身に着けていない冒険者はゼロだ。


「前にいたところではここで使われるような防具は必要なかったから、この街での活動に合った物を改めて揃えようと思ってね。シルヴィさんにそのあたりも案内して貰おうと思っていたんだ」


 二十一世紀の地球において鎧なんぞを纏っていたのはコスプレイヤーか役者くらいであり、実際に使われていた防具は防弾チョッキやヘルメットあたり。


 それも治安の良い日本で身に着けていたら不審極まりないため、拠点の肥やしとなっていた。


「なるほど、もしかして前に活動していたは港町だったりとか?」


「まぁそんなところかな」


 東京という都市は歴史的に見れば港町だ。


「ということは船上戦闘の経験もあったり……」


 そんな風にのらりくらりと質問を受け流していた時、


「シルヴィさんにフウさん!お話し中にすみません。丁度、宿に使いを出そうとしていたところだったんです。ギルドマスターからお二人に話があるそうでして」


 慌ただしい様子で駆け寄って来たのは、明け方に冒険者登録を担当してくれたギルド職員のクーリだった。


「ふむ、俺達は邪魔みたいだな。失礼しよう。シルヴィ、一度冷静になってパーティーの件…何度誘われてもお断りよ」

面白かったらブックマークや評価をいただけると幸いです。


一週間に三話投稿したいとかのたまっておきながら二週間もスパンが空いてしまい本当にすみませんでした。自分の執筆速度を過信し過ぎてました。そして死ぬほど仕事が忙しかった。

今週中にもう一話は間違いなく投稿します。

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