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殺し屋フウの異世界譚  作者: Bell
一章/前
22/25

地元のガイドは大体情報通

 借りたばかりの『賢者の帽子亭』三階の角部屋。そのベッドに腰を掛けたフウは椅子に座ったタンジから、彼の知る街の異変に関する話の概要を並べ聞いていた。


 そもそも案内役(ガイド)というのは見方によっては、その土地に関する情報を商品としているとも言える。

 特に現地ガイドは本やインターネットでは知り得ないような話をいくつも有しているというのも往々にしてある話。

 

 故にフウは街の案内で金銭を稼いでいるというタンジからも得難い情報を引き出せる可能性を考えていた訳だ。


「…どうだフウの姉ちゃん、お金になりそうなのはあるか?」


「うん、興味深い話はあったよ。まず最近グラナタを訪れる旅人が減っているって話。いつ頃から減り始めたか詳しくは分かるかい?」


「今になって思い出せば半年くらい前には減り始めてた気がする。とくにここ三ヶ月くらいは一気に減ってほとんどいなくなっちまった。そのせいで案内の仕事もなくて……」


 そこでベッドの隣に立ち真面目な表情で耳を傾けていたシルヴィが口を挟む。


「半年も前から?そんな話は聞いたことがないのだけど」


 自分が賊に捕らわれていた一ヶ月の間の話なら知らなくてもおかしくはないが、半年も前から減り始め三か月前にはほとんど旅人がいなくなったというなら流石に話題として何処かで聞いている筈だ、と。


「減ったのはオレが案内してた一人で細々とやってる行商や吟遊詩人、大道芸人みたいな人達なんだ。冒険者や大きな商会の商人なんかはあまり減っていないから、北や西の方で生活してると分かり辛いかもしれない」


 そんな銀級冒険者の疑問に、まだ少し緊張した様子でそう話すタンジ。


「けど、南や東の住人は皆、何となく感じてる筈だ。オレみたいのはそういう旅人を見込み客にしてたからハッキリと実感してる」


 グラナタの街は住民や店の分類によって大きく四つの地域に分けられる。

 冒険者向けの宿や酒場が並びギルドも位置している北側、主に商会や貴種に属する人々の家が建て並ぶ西側、所謂グラナタの一般的な町民に衛兵やその家族が生活する東側、そして貧民街が広がる南側だ。

 広さで言えば北>東>南>西とバラバラで、境目も曖昧ではあるが。


「確かに銅級に昇格したあたりから、北の区域以外にはほとんど足を運んでないわね。それに、そう言われると大通りで歌っている吟遊詩人なんかが減った気も……」


 ある程度の等級の冒険者達は基本的に北側に構えた拠点と冒険者ギルド、そして魔領域の三つをぐるぐると回るような生活を送っており他の区画に足を運ぶことは稀。

 街壁の整備や下水の処理等といった街中の肉体労働にも勤しむ等級の低い冒険者達も、日々の暮らしに手一杯で他のことに意識を割いている余裕はないだろう。


「その旅人が減った理由は分かっているのかい?」


「それが、オレも分からないんだ。周りの人達も原因が分からないのに旅人だけ減ったから困ってて」


「なるほどね」


 数の減っていないという冒険者や大商人と、ほとんど見掛けなくなったという行商などの旅人との違いで真っ先に思い付くのは武力の差だろう。

 戦う術を自身が有している冒険者は言うまでもなく、金満な商人もそういった戦力を雇い揃えることは難しくない。


 一方で行商や旅人といった一個人が戦力を雇うというのは想像以上にハードルの高いことだ。


 となると、おのずと旅人が減った原因もいくつかの可能性を推測は出来そうだが……


 シルヴィも納得したらしいところで次の話に移る。


「次は、そうだね。一時的に広まった人攫いの噂っていうのはどういうものなのかな」


「あぁ良いけど、それは大した話じゃないぞ。旅人が減り始めて少しした頃だったかな。住人が急にいなくなることが続いて、人攫いがいるんじゃないかってうわさが広まったんだ。まぁ衛兵が調べたら大半は夜逃げだったったらしいんだけどな」


「夜逃げ?」


「あぁ、旅人が減ったせいで仕事が立ち行かなくなって、借金を返せなくなったりと困った人達が逃げ出したんだって」


 そう話すタンジは何の疑問も持たずその答えに納得しているようだ。


「タンジ少年はそれを話を何処で聞いたんだい?」


「孤児院の教会によく来る衛兵のおっちゃんがシスターと話してたんだ。調査の結果、夜逃げってことになったみたいだ、って。大体いつも酔っぱらっていて自分は南門で一番偉い、なんて言ってる変な人だけど言ってることは不思議と当たるんだ。その後すぐにうわさも消えて、夜逃げだって話が広まったし。あ、おっちゃんはさっき南門にいたスケベ男とは別だぞ」


 スケベ男というのは先程、南門で見張りをしていた衛兵のことだろう。

 色々と教えてくれたのが下心ありきなのはフウも察していたが、子供の目線でも明らかだったらしい。


 ()()()()()()()()()()()みたい、か。もしその衛兵がタンジ少年の記憶通りにそう言ったのだとしたら、何か含みを感じるよね。


「こっちの話は知ってる?」


 フウの問いにシルヴィは首を振った。


「いえ、それも聞いたことがないわね。街中の事件の解決は衛兵の領分だから冒険者の間では大して知られていなくてもおかしくはないけど……」


 先程の旅人の話といい、グラナタは地域によって大きな断絶があるらしい。

 もしくは冒険者だけが特殊な立ち位置なのか。


 半年ほど前を起点とした旅人の減少に人攫いの噂。

 確かシルヴィを捕らえていた賊の被害も半年ほど前から表面化していたという話だった筈。


 随分ときな臭くなってきたね。

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