殺し屋だった彼女のステータス
少し短めです。
「そこの姉ちゃん、宿を探してるんだろ」
宿を探すためギルドを出た直後、年の頃10歳ほどの少年に声を掛けられる。
「ん?あぁそうなんだよ。それで少年は僕になんか用かい?君とは初対面だと思うのだけど、よく宿を探してるって分かったね」
不思議に思ってそう尋ねた僕に、少年が呆れたように答えた。
「いや姉ちゃんキョロキョロと辺りを見ながら"宿は宿は"…て呟いてたじゃないか。そりゃ誰でも宿を探してるんだなって分かるよ」
あれ、声に出てた?
「そんなことより、俺が宿を紹介してやるよ。ここからも近いし安全だ。女の人でも安心して泊まれるぜ!」
「ほう、それはありがたいね。じゃあ頼もうかな」
多少安全じゃなくても、問題はないんだけれど…日も落ちて外も暗くなってきたし、サッサと宿は取りたい。せっかくだし、お願いしようか。
「よし来た!なら銅貨1枚だ」
少年はそう言うと、小さな手をこちらに向けて出した。
「お金取るのかい?まぁ良いけど…渡すのは宿に着いてからだよ。本当にちゃんとした泊まれる宿に連れていってくれたら、そうだね銅貨3枚払おう」
「マジか!じゃあ俺に付いてきてくれ」
少年に連れて来られた宿は、大通りから一本裏に入った場所に建っていた。
「ここだよ。どうだい良いとこだろう!」
「いやぁ、外で言われてもねぇ」
思わず苦笑を浮かべて、宿の扉を開く。
ふむふむ、中は1階が食堂になっていて、上が泊まる部屋になっているみたいだね。壁や床も綺麗だし、良さそうかな。
一目見た時の清潔感は大切だ。ロビーが綺麗で手入れが行き届いた宿は、他の面も優れている場合が多い。その逆もまた然りだ。
「うん、ここにしよう。案内ありがとうね」
腰の袋を漁って取り出した銅貨3枚を放ると、少年は上手い事それをキャッチする。
「まいど!俺はタンジっていうんだ。いつもギルドの近くにいるから、困ったことがあったら声かけてくれ、安くするからさ。じゃあ姉ちゃんも頑張れよ!」
「あぁ、また機会があったら頼ませて貰うとするよ」
タンジ少年が踵を返し元気よく宿を出て行くのを見届け、僕はフロントの男性に声を掛けた。
「どうも。部屋を取りたいんだけど」
「ご宿泊ですね。何日のご予定で?」
「とりあえず、1週間お願いするよ」
「では、銀貨4枚と鉄貨2枚になります」
串焼き84本分か…1週間、ビジネスホテルに泊まるって考えれば安い方かな?この世界の物価が分からないから、何とも言えないけど。
宿泊料を払い鍵を受け取る。部屋は階段を上った3階の角。
中は6畳ほどの広さになっていて、シンプルだがよく清掃されているのが分かる。小さいが各部屋にシャワーのようなものまで付いているようだ。
じゃあ早速ギルドカードで、ステータスとやらの確認をしてみようか。確かこの円に親指を押し当て魔力を流す、と。魔力ってどう流すんだろう……
それから部屋で1時間ほど試行錯誤していると、だんだん魔力とやらの感覚が掴めてくる。
おっステータスが浮き出た。
名前・フウ 種族・人族 ランク・F
基礎能力
体力・B 魔力・B
筋力・C 器用・S
敏捷・A 精神・S
スキル
暗殺術 lv・10/10
狙撃 lv・10/10
体術(殺)lv・7/10
短剣術 lv・9/10
投擲 lv・8/10
毒耐性 lv・10/10
魔道能力
闇魔法A lv・0/9
毒魔法S lv・0/10
創造魔法E lv・2/5
特殊能力
●●●● lv・10/10
●●●● lv・1/10
なるほど、これが僕のステータスか。うん、分からない!
基礎能力は、基準を知らないから何とも。低くはない、と思うんだけど。
スキルは多分、身に付けてる技術のことだね。右側に表示されてるlvが現状と上限だろう。けどこれ、スキルとして表示される技術の基準って何なんだろう。
この魔法ってのは…使った覚えがないのに、なんでレベル上がってるものがあるのかな?
極めつけは、この特殊能力って奴だ。表示されてないじゃないか!ニュアンスからして超能力的な何かだとは思うけど。僕、そんな物使えないよ。何故か片方、レベル10まで上がってるし。
ステータスの内容は、全くもって分からないことだらけだった。
そういや荷馬車に乗せてくれたおじさんが、この街には図書館があるって話してたな。色々調べたいこともあるし、明日にでも行ってみるとしよう。