第三話 自己紹介
ヨボヨボの老人は、教卓の前に立つと、挨拶を始めた。
「始めまして、私がこれから一年間、あなたたちの担任をすることになりました、
船越と言います。担当教科は国語です。」
冒険者科とは言っても、学校法人の高校である以上、普通科ほどでないにしろ、
国語や数学などの教科も勉強しないといけない。
国語の先生ならヨボヨボでも平気か、なんて思っていたら、
「それじゃあまずは軽く自己紹介でもしてもらおうかなー」
なんて言いはじめた。
まあまずはそれだよなあ。うーんしかし困ったなあ。
俺は自己紹介が苦手なんだよ。ていうか得意なやつなんて知らない。
そうこうしているうちに次は俺の番だ。
しょうがない。普通っぽいことを言って誤魔化そう。
「えーと、所沢市の中央中学校から着ました。斎藤仁義と言います。趣味はマンガの読書です。」
クスクスと笑われてしまった。
なぜだろうか?笑われる要素はなかったはずだが・・・。
とにかく、自分の自己紹介が終わったことで、落ち着きを取り戻した。
他のクラスメイトの自己紹介を聞いているうちに、なんとなく笑われた理由がわかってきた。
マンガ読んでる場合じゃないだろってことか?
冒険者になりたいんじゃないのか?みたいな?
なんて悩んでいるうちに、山田の奴の番が着た。
「山田元気です!中央中出身です!親父が勇者やってるんで、よく冒険に連れてってもらってます。趣味は冒険です!」
なんてことだ、山田。おまえこそ勇者だよ。
これこそ冒険者科にふさわしい自己紹介と言える。