第零話 受験
中学三年。
受験シーズンである。
担任の先生に、一人一人呼び出されて、お説教を食らっている。
進路指導である。
ついに俺の番が着たので、さっそく進路指導室に行ってみる。
この進路指導室というのは、なんでか学校の隅っこの、それも
誰も行かないような場所にあるよなあ。
なんてぼんやり思いながら、指導室まで歩き、ドアをノックして中に入る。
さっそく入ると、担任の教師が、喜びとも悲しみとも違う、複雑な表情をしていた。
「まあ座れ。」
「はあ。」
なんて気がない返事をしながら対面の椅子に腰かける。
「斎藤、おまえ行く高校ないぞ。」
いきなりひどい言葉が投げかけられた。
「おまえの内申点悪すぎだぞ。これじゃあどこも受からないんじゃないのか?」
「ダメもとで沢山受けておけよ。」
とにかくひどい言葉のオンパレードで悲しくなってきた。
こちらの気持ちを察してか、
「おいおい、悲しいのはこっちだぞ。お前がどこも受からなかったら、先生が
おまえの就職の面倒みなきゃいけないんだからな。」
冷静に考えてもひどいことを言われているとしか思えなかった。
「そもそもお前はどんな学校に行きたいんだ?大学は行きたいのか?」
「斎藤、おまえやりたいこととかないのか?」
なんて言われても困ったものだ。
正直言って、進学と言ってもなんにもビジョンが浮かばない。
高校ってなにするところなんだ?よくわからない。
かといって、中卒で働くのもイヤだし。
うーん。なんて思っていると、先生もしびれを切らして。
「山田が冒険者になりたいって言ってたから、今度冒険者科のある高校に見学に行くんだ。
一緒に行ったらどうだ?」
山田と同じ学校かあ、まあそれも悪くないかなあ。
そんなことを思いながら、見学をさせてもらうことにした。
ちなみに、この山田というのは、中学のクラスメイトで友達である。
一緒に遊ぶくらいの仲ではあるぞ。
見学した結果、まあ特に冒険者になりたいわけでもないけど、
面白そうだから良いか!なんて思った。
結局先生の脅しによって、5箇所も学校を受験した。
そのすべてに合格したが、最後に県立の学校に受かった。
県立というのは、受かったら行くしかない。
というわけで、冒険者科のある、県立田舎高等学校に行くことになったのだった。
なりゆきはいいかげんだったが、春をそれなりに楽しみにしていたのであった。