プロローグ──着弾──
プロローグだけ先に投稿。
1話から先は書き溜めをしてから投稿するので遅くなります。
見渡せば上は雲一つない広い空に眩しい太陽、下には森やら平原やらがどこまでも続いていて、遠くには外壁に囲まれた街のような物が見える。
俺が凄まじい勢いで地面へと接近しているという事さえ考えなければ素晴らしい景色だと見惚れていた所だろう。
察しの良い方なら既に何となく気付いてるであろう。
そう、俺『銀川 凌』は御察しの通り絶賛落下中である。
何言ってんだこいつとツッコミたいだろうがそこは勘弁してほしい。俺も何でこんな状態に陥ったのか理解できていないのだ。
何の変哲もない平凡な1日を過ごしいつも通り家で心地良い疲労感に浸りながら眠りについたはずなのだが、体に感じた凄まじい風圧と風を切る音で目が覚め気付いたらスカイダイビングをかましていた。
理解できるかい?俺も理解できない。夢だと思いたいが⋯⋯夢にしては感覚がはっきりとし過ぎている。
鳥になったり翼を生やして空を自由に飛び回る想像をした事もあるし、憧れてもいたが流石に人間隕石になる展開は望んでいない。
その状況で良くそんな冷静でいられるなって?今の状況を説明する事で現実逃避しているだけだ。
──さて、そんな事を考えている間にも着々と地面へと接近している。現実逃避をするのもやめてこの状況から脱する方法を考えようと思う。
このままでは潰れたトマトなんて表現が生易しく思える状態になってしまうだろう。
脳漿どころかその他様々なもの、文字通り全てをぶちまける事になる。それは勘弁願いたい。
現在は落下中、最初に説明した様に上を見ても空しかないし、見た所俺の着弾予測地点は平原だ。草が生い茂ってはいるものの空から落ちてくる人間の勢いを殺す程の緩衝材にはなってくれそうにもない。
俺自身の所持品は寝る時に着ていた寝間着のみ。
──取り敢えずシャツをボタンが引き千切れる勢いで脱ぎ、パラシュートとして使用してみた。風圧で千切れて飛んでいった。
せめて着弾地点を森の方にできないかと平泳ぎやらクロールをしてジタバタともがいてみるが、案の定意味なし。
むしろ風に煽られたのだろう、心なしか街のようなものに近付いた気さえする。
この状況から生き残るのはもう無理だろう。現実は非情であったようだ。
残された時間は少ない。もがくのは諦めてこの際だからと今までの人生を思い返そうとしたが、せいぜい誰かと喧嘩することが多かったくらいしか特筆することのない人生だったと感じるだけに終わった。
こんな訳のわからない状況になってから思うのも変だが、馬鹿ばかりしてないでせめて何か一つくらいは熱中できる事を探しておくべきだったと思う。
後悔は先に立たずとはよくいったものだ。
幸いと言うのも微妙だが両親は既に他界しているし、特に親しい者もいないので、俺が死のうが居なくなろうが誰かを悲しませる心配は無いだろう。
とりあえず地面に衝突して爆散する瞬間なんて見たくないからここからは目を閉じていよう、後数秒で着弾する。
嗚呼⋯⋯こんな時に空から落ちても無事でいられる程体が丈夫だったらと、ありえないことを思ってしまう自分が憎い。
──せめて来世に期待しよう。
「今世の俺はパラシュートなしでスカイダイビングをした程度で死んでしまう反逆者でしたが、次の俺はきっと上手k」
──轟音と共に衝撃を感じ、俺は意識を手放した──