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テスト?知らない子ですね  作者: 型破 優位
第一章  常識と非常識
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研究室?慣れないですね

日常的なことや普通の報告等は全て活動報告に移動します。

重要なことはこちらで書きます。



 ――いつの間にか、眠ってしまったようだ。



 まだ寝ていたいと脳が言っているような気もするが、場所を確かめなければいけない。重たい目蓋(まぶた)を開くと、そこには白い天井と自分を(のぞ)くいつもの女性の顔。



 目を開けたのを確認した女性は水の入ったコップを差し出してくれたので、それを一気に飲み干す。

 冷たい水が喉を潤し、意識を鮮明にしていく。



 ――どうやら、またやってしまったらしい。



 何かに震える手を見つめて思った。

 そういえば、これを始めたのはいつからなのだろうか。

 中学一年の頃は、まだ正常な考え方を持った普通の中学生だったはずだ。普通に勉強し、クラスメイトと交流を持ち、家に帰ったら友達と遊び、宿題と次の日の準備をして寝る。



 両親の遺伝のおかげか、少し勉強するだけでもテストでは上位に組み込めたし、スポーツも全て平均以上。顔や身長もそれなりにあり、友達との関係も上手くいっていた。



 そんな自分が変わってしまったのは、中学二年の頃だっただろうか。

 確か深夜に強盗が寝込みを狙って窓を割って侵入し、寝ている両親を殺害。たまたま起きていた俺は、窓が割れた音を聞いて駆けつけた時には両親が寝ているシーツは既に血に染まり、全く知らない男が部屋の中を物色しているところだった。



 そのあまりの怖さに、思わず「ヒッ」という声が漏れてしまい、さらに腰を抜かして倒れ込んでしまったために強盗が気づかれてしまう。強盗は血のついたナイフを手に近寄ってきた。



 瞳孔は開き、心臓は爆音を上げて激しく脈打つ。



 そこからの記憶はない。

 次に覚えているのは、血だらけに染まって倒れている強盗と、その強盗の体内に手を突っ込んで何かを握っている自分。手には何かを刻んでいる感触と、妙な生暖かさがあった。



 既に夜は明けており、家の中には警察官が溢れ返っていた。俺にひたすら声をかけ続けていたが、その言葉は全く耳に入ってこなかった。



 それからはこの施設に送られて、今もここで中学時代を過ごしている。この光景ももう何度見ただろうか。

 少なくとも、十回以上は確実だ。



 俺の手には、まだ生暖かい脈打つ何かの感触が残っている。

 この感触が好きになったのも、確か俺が変わったあの日からだ。



 ――どうやら俺はまた、心臓を手で握ってしまったらしい。



◆◆◆



「貴方達。一体何をしているのかしら?」



 警棒を携えて、白衣にメガネといういかにもな白髪の女性が歩み寄ってくる。だが、世論を見ると何故か呆れたような表情になった。



 とりあえず、弁明はしておく。




「こ、この坂田という男がここにいる人に会いたいとか言って、成り行きでこうなりました!」



「ちなみに比亜里。俺が会いたかったのはこの人だよ」



「だそうです! ――は?」




 いきなりのカミングアウトに、世論からは変な声が出た。

 女性は横目で坂田の方を見て、一回頷く。ネットに絡まって坂田の表情は見えないが、また何かあったのだろう。



 ――ところで、どうしてこの学校にいる人たちは、喋ること無く意志疎通が出来るのだろうか。




「とりあえず訳は分かりました。ネットをほどかないといけないですね」



「全く。この人に世話をかけさせるなよ」



「誰のせいだ! というか、お前も絡まっているだろ!」



「え? 俺は絡まってないけど」



 ネットに絡まりすぎて手足が全く動かず、身体も動かすことが出来ないため真偽を確かめることが出来なかったのだが、それをする必要はなかった。



 倒れて捕まっている世論の前に坂田が現れたからだ。




「比亜里が偶然盾になってくれたおかげで、俺はネットにあまり絡まること無く抜けることが出来たんだよ」



「おま――何が偶然だ! 知ってて盾にしたろ!」



「まぁ、デコピンの報復だと思っておけ」




 ――この野郎。絶対にまたデコピンを喰らわせてやる。



 ここに来るまでは迷わず先頭を歩いていたのに、この研究室に入るときだけは肩を押されたのだ。

 罠があるのを知っていたとしか思えないし、これなら世論が捕まったときに笑っていた理由も納得だ。



 密かに逆襲を決意し、今はネットをほどいてもらうために大人しくする。

 それを見て、女性はポケットからハサミを取りだし、大雑把に次々とネットを切っていく。

 ネットの網目の大きさは、手と足は通るが頭はどうやっても通らない程度の大きさ。念のための事故防止だろう。




「よし、もう動いても良いですよ」




 女性の合図で、世論は立ち上がる。

 身体を締め付けていたネットはその拘束力を失っており、世論も問題なく立てた。

 身体も解放されたため、やっとこの女性に会いに来た理由をきく――




「喰らえ坂田!」



「あぶっ!? やめろって!」




 ――必要など無い。逆襲のお時間だ。

 立ち上がってすぐさまデコピンの手を作り坂田に襲いかかるも、坂田に反応されてしまい手を捕まれてしまった。




「離せ坂田! 離してくれたらデコピンしてあげるから!」



「離せるかバカ!」



「ねえ貴方達……用がないなら私は戻りますよ?」




 本日二回目の呆れ顔。

 世論にとってはこの女性がいようがいなくなろうが、全く関係ない。だが、坂田にとっては死活問題だ。




「比亜里! 悪かったから許してくれ! 後でジュース奢るから!」



「おう、それならいいぜ――と言うとでも思ったかバカ。無料だろうが」



「なんでこういうときだけ話聞いてんだよ! てか、お前にだけはバカって言われたくない!」




 バカほど扱いやすく、バカほど怖いものはない。

 普通の知恵比べならバカにはどうしようもないだろう。

 しかし、それが悪知恵比べやバカ度合い比べだとしたら、圧倒的に得意分野だ。



 さらに、バカには予想以上に根性があり、とてもしつこい。今回の場合世論は意地でもデコピンを撃とうとしている。そのため静かにさせるにはデコピンを許すしかない。




「分かった! デコピンは後で受けるから! 今はやめてくれ!」



「よし、許す」




 だが、受け入れた瞬間に何事もなかったかのように振る舞うものだから、性質が悪い。坂田はため息をつき、身体を女性の方へ向きなおした。




「大変申し訳ありませんでした……えっと、自分は一年D組の坂田 真緋流と言います」



「俺は一年D組の比阿里 世論だ。決して毒は持ってないから安心しろよ」



「おい、敬語使えよ」



「今さらだろ」




 年上の相手にも問答無用で定型の自己紹介を使うあたり、世論の性格が出ているだろう。

 何も考えていないという可能性も、勿論ある。




「ふふ……仲が良いのですね。私は三年B組の新発田(しばた) (みそぎ)です」




 白髪やメガネはもとかく、白衣と今までの騒ぎによってすっかり忘れていたのだが、彼女もこの学校の生徒で、しかも三年生だ。

 つまり、少なくとも学校側から『面白い人物』と認められているということだ。




「新発田さんのことは個人的に興味があるのですが、まず最初に少しだけ学校について。来週の木曜日に行われる『ゲーム大会』について、具体的な情報をくださいませんか?」



「そうね……まず行う場所は体育館です。一年が二つ、二年と三年はそれぞれ一つずつ使って行われます。行うゲームは学年によっても違いますし、その年によっても違います。重複していることもあるらしいですが、詳しいことは私にも分かりません――けど、一年生ならそこで約一割の生徒が退学になりますね」




 入学して一週間後には退学者が一割。

 ゲーム内容は分からないが、そこでも『面白い者』か『つまらない者』かを見極められるということになる。




「ゲームはどういうものですか? さすがにポーカーやブラックジャックといった一般的なものではありませんよね?」



「勿論違います。ゲームは基本的に学校に指定されます。ギャンブルや遊びで使われるゲームもあったらしいですが、基本的にはオリジナルですね。少なくとも、私が在学中に一般的なゲームが使われたって話は聞いていません。一応、一般的なゲームを応用して行うことはありましたね」




 ――少し、頭がヤバイかもしれない。



 この研究室の生臭い臭いや、先ほど騒いだことによる疲れにこの止めの説明の嵐だ。パンクしそうである。

 しかし、そんな世論を他所に、次々と話を進めていく二人。




「でも、何のために競うのですか? ただ人を見極めるためだけにそんなことをこの学校がするとは思えませんが」



「ポイントよです。ゲーム大会ではこのポイントを使ってゲームが行われます」



「ポイント? 最初から配られるんですか?」



「んー、基本的には一番最初に行うゲームでポイントは決まりますね。勿論、例外も存在します」



「例外ですか」



「例外です。先程真緋流君が言ったように、最初からポイントが配布されたり、生徒一人一人にポイントを持たせて、ギャンブルで増やしたり減らしたりさせてから始めるって年もあったそうですよ。でもヒントを出すとしたら――抜け穴ですかね」



「抜け穴ですか。なるほど……比亜里。ここにいるのがキツいなら廊下で待ってても良いぞ」




 坂田に名指しされたことにより、ようやく視点を浴びた世論。

 もう頭はパンク状態だ。

 それに加えて、さっきから鼻腔を通る生臭い臭いがキツい。




「ああ、じゃあそうする。話が終わるまで廊下にいるわ」




 結局、ただここに捕まりに来ただけという結果になってしまったが、一応こういうところがあると分かっただけでも良しとしよう。そう思うことにして、開けっぱなしだった扉から廊下へと出る。




「臭いキツいだろうから、閉めておくよ」



「頼む」




 扉を開けっぱなしだっために廊下も少し臭うが、室内よりかは幾分かマシになっており、さらには扉も閉めてくれたことによりじきにここの臭いも取れていくだろう。



 まずは頭の中の整理を始める。

 先程の話からこの頭でも分かったことはいくつかある。



 まず、このゲーム大会でも退学者は出る。

 そして、ゲームはほとんどがオリジナルで、ポイントを競うということ。

 場所は体育館で行われるということ。

 ヒントは抜け穴。



 この四つから整理を始めようと決め、扉との向かい側の廊下の壁にもたれ掛かり、休憩をしながらも一応『ゲーム大会』について考えることにしてみた。



 そして、世論が廊下の端で壁にもたれ掛かりながら座って休憩と思考を始めたころ、室内に残った二人はお互いに顔を見合せ――口角を上げて笑った。




「さて、真緋流君。情報を彼に渡すためなのだろうけど、随分とあからさまな演技でしたね。それに、彼もほとんど理解できてないでしょうに」



「恐らく理解できてないでしょうが、見覚えのある単語ぐらいは羅列出来ると思いますよ」



「そう……では、本題へと入りましょうか」



「ええ、勿論」

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