無双の男
メイリアの村であった場所は本来であれば冒険者と呼ばれる凄腕の者ですら集団でも太刀打ちができないようなモンスター達が蔓延る秘境の中にあり、本来であれば、村を護っていたはずの結界が消失されていた時点で蹂躙されていたはずなのだが、ちゃんと残っていた遺体は埋葬され、綺麗に整地されていた。
「………ここに来た奴らは滅ぼした」
事もなげにトウゴが言ったと同時に足元に巨大なドラゴンの死骸が複数現れる。
「………他の奴は消失させてしまったがな、………まあドラゴンであれば資金も潤沢になるだろう、何せこの世界の通貨は持ち合わせてないしな」
「そうだな、うっかり所持するのを忘れていた、私達は魔力吸収だけでも生きていけるからな………、まあ食事も心を満たす上では実にいいだろう、この世界は食のレベルは実に高いぞ」
「………それは楽しみだ」
ポカンと見ているメイリアの頭をくしゃりと撫でるとトウゴは穏やかに笑う
「………いずれ俺達の事も知るさ、今はお前の望みを叶えにきたと思えばいい、説明もいずれはする」
不思議とメイリアは信じる事ができ、ただ頷いた。
村から別れを告げた後、メディアとトウゴに自分に起きた現象を聞くと、自分自身に起きた現象というのは変質というもので感情の揺さぶりが起きると本来持ちえる属性とは違う属性を身につける異端となるらしい。本来であれば回復等の補助属性に適性があるはずの種族であるのだがそれとは別に攻撃魔法の適性も手に入れた事になるという、他の街に出向いたらメディア自身が教えてくれるらしい。何故自分を助けたのか、それは気晴らしとの事だ。
この二人は確実に強かった、おとぎ話にしかでないような最強種であるドラゴンを屠り、巨人種を滅ぼし、見た事もな強大な魔法を操る、トウゴは魔法剣士でメディアは万能型の魔法使いのように見受けられた。
表現として適切なのは蹂躙というものだろう、自分は極めて普通の子供よりも異質であると認識している。
三つにして全ての言語と大人が得るであろう知識を習得し、種族が習得すべき回復魔法と支援魔法も習得した。
七つになる頃には[幼き賢者]と言われるくらいの技術と思考は手に入れたはずだが、目の前の二人には遠く及ばない。
トウゴは間違いなく無双の男で、メディアは恐ろしく強い魔法使い。
この二人の言葉はどこまでのものか知らないが自分の目的を果たすのにはきっと必要な関係だと
メイリアは心に強く思った。




