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怪力少女にご注意を!  作者: アエイラ
本編
88/93

久し振りの主人公だったから張り切り過ぎたんです…。

2学期開始まであと三日。

私、マリは忘れておりました。

………課題。


「ギャ~~!!??」

「…どうしたの。」


アイリが冷めた目でこちらを見て、立ち上がり、私の手元を覗いてくる。


「これ出さないとどうなるの?」

「え~とですね……退学。」

「マリは卒業したいの?」

「一応、楽しいし。」

「課題内容は?」

「5体の有名モンスターについてのレポートだね。調べる方法は自由。ただし、参考文献や調べ方は明記。」

「わぁお。」


私には時間が残されていない。

王都から学園都市までの移動時間を考えると馬車で国道を通る一般的なルートでは今日出発しないと間に合わないだろう。

無論、私にその気はないが。

…そしてこの世界の人々は勤勉だ。

やる気の無い人間…つまり課題をやらないような人間は容赦なく淘汰される。


「モンスターは、ゴブリン、オーク、ツノウサギ、ツチモグラ、パピヨンバードね。」


アイリは知っているようだか、私は後半の2種類は知らない。


「私も生態は詳しくない。取り敢えず、ツチモグラはゲロマズ。パピヨンバードは珍味。」

「その情報は要らないかな…。」


両方とも美味しくは無いのだろう。

というか、アイリさん?貴女何でオエェってしてんの!?…あんた、食べたのか!?

何というか、アイリ、怖いもの知らず…。




「で、どうするの?流石に今から図書館で調べる時間は無いでしょ。」

「うん、自分の足で調べるよ。この辺に全部いる?」

「ギルドの人のが詳しいと思うけど、モグラは西の方。鳥擬きはそこから北へ向かえばいる。」

「了解、行ってくる!」


私は水筒を持って駆け出した。





ギルドで目的を伝え、地図に印を付けて貰い、フリーの探索として依頼を受けずに飛び出す。

その際とても目立っていた気はしたが、今は真夏なのだ。こんな暑い日に冒険者用の服なんて着られるか!(着たこと無いけど。)

半袖Tシャツにショートパンツは正義!!

まるで気分はピクニック!


「…な~んて言ってるけど一応警戒はしていますから。キリッ。」


私は一応Aランク冒険者だからね。







「さーて、ゴブリン発見。何を調べようかな。やっぱり…強度?鳴き声?いや、泣き声?」


…課題って出せば良いのよね!

どんなに低レベルなレポートだろうと出せば一応点にはなるし、実技で頑張れば退学は…流石に無いよね?



ドスッ。



「2割で手が心臓に貫通。」



ドコッ。



「頭蓋も2割で砕ける。」



ピーーーーーーー。(規制音)



「4割チョップで一刀両断。」

「ゴブ~!!?」

「ふむ…ゴブリンの泣き声はゴブ~ね。」


実に順調であった。





…と、思われたが、2つの問題にぶつかったのだ。

1つ、今倒した3匹のゴブリン、倒したからには片付けないといけないのだが、私にはチートなアイテムボックスは無いし、見事にアイテム袋を持って来忘れた。

2つ、私が持ってきた水筒、中身が空だった。


「何やってんだろ…。」


私は火の魔法でゴブリンの死体を焼いて止血し、両肩に一匹半ずつ担いでギルドに戻ることにした。

勿論、真っ二つのゴブリンと血塗れの私を見て、ギルド内が悲鳴の嵐になったのは言うまでも無かった。

忘れてたんだよ、回復?魔法で汚れを消すこと。






「さ~て、リスタート!!」

再び、今度は水筒に王都で買ったジュースを入れて、走り出す。

水筒は腰に付けてあるのだ。

ビュッと飛んでズダーンと地面を蹴って再びビュッっと飛ぶ。



暫くすると(2分くらいかな?)ツノウサギの群れを見つける。

取り敢えず、一匹の首根っこを掴み、持ち上げてみる。


「うわぁ…ふてぶてしい顔…。」


正直、凶暴じゃなくて食料でもなかったら飼いたい。

けど、唾とか飛ばしてくるって噂もあるから注意かな。今も何かモゴモゴと口を動かしてるし。


「取り敢えず、ゴブリンと同じことするか。…ごめんね。」


今気付いたけど、私、取り敢えずが多いな。




そんなわけで、ゴブリンと同じように三匹の私の課題の生け贄となった哀れなウサギ達をアイテム袋へ……?


あ、アイテム袋、持ってくるの忘れてた。







ギルドに戻ると、主に女性のハンター達からのエグい悲鳴がこだました。

そして王都のギルマスさんにメッチャ怒られた。

また、私は回復?魔法で服の血の染みを消すのを忘れていた。


一旦アイリん家帰って課題とアイテム袋持ってこよ。



「と、いうわけで、戻って来ました。」

「…おかえり。」


アイリは相変わらずのテンションで串焼きを食べて自宅で涼んでいた。


私がゴブリンとツノウサギの調査結果をレポート用紙に書いていると、覗いてきて、


「…何を調べてんのよ。」


と呟き、アイリは呆れながらベットに寝転がり、新たな串焼きを頬張りだした。


「寝ながら食べるのは良くないですよ~。」


一応私は注意すると、


「うん、ごめん。やめるからゴブリン3匹とツノウサギ3匹分のお金、プリーズ。」


素直に謝ったと思ったら容赦なくお金を要求してくる。


「これは私のお金です。」

「ここは私の自宅です。何かあったらマリが治してくれるでしょ。」

「あんたねぇ…。」


続きを言うのは面倒になったので止めて、家を出る。


「いてら~。」

「うん、行ってくる~。」


今度こそアイテム袋と課題とペンを持ってギルドを飛び出した。





あ、水筒忘れた。


気付いたのはギルドから6キロほど離れた、オークがよくいるらしい場所についてからだ。

日差しが暑い。

まだギルドを出てから5分も経ってない筈なのに、体力…というより精神力が大きく削られていた。


「おっ…冒険者のパーティがオークの群れと戦ってる……お!!」


私は気付いた。

今、冒険者パーティの内の一人が水の魔法を使った。

つまり、冷たい水を浴びられる可能性が!!





私は背後からそ~っとパーティに近付きつつ、観察をする。

男性2人と女性3人、連携もしっかりしている…のだが、オークは目視した限りで13匹もいる。

はっきり言って押されている。

なのに逃げない。

理由は直ぐにわかった。

魔術師の女性が足を怪我しているのだ。

それでも魔法を撃っている根性は凄い。

オーク達の興奮度的に逃げられそうも無いので、助太刀に入る事にする。


「こ~ん、に~ち、わ~!」


子供の頃に見た教育テレビのお姉さんのように挨拶をしながら登場する。

いきなり割り込む事になるので、ハンター達の警戒心を解く作戦だった…のだが、


「ちょっと!?何固まってんのよ!!」


ハンター達は全員揃って私を見て固まった。

オークの一匹が男の剣士ハンターを襲おうとしたので取り敢えず心臓を貫く。


「3割だね。」


続いて口をパクパクしている女性ハンターに向かってきたオークの頭にゲンコツを入れる。


「む…4.5割?頭の脂肪が邪魔だねぇ。」


そして、逃げ出したオーク達の内のリーダー格っぽいやつを捕まえ、素手で一刀両断する。


「6割、分厚い…。」


振り向くと、女性ハンターの内二人と男性ハンターは失神していた。





「依頼はもしかしてオークの群れの討伐?」

「いや、フリーだ…一応、助かった。」


リーダーの男は苦笑い、というより、ひきつった青い笑いをしながらそう言った。


「私もフリーで、学園の課題で惨たらしい殺し方しなきゃいけなかったのよ…。」


身体を綺麗にして、岩を二つに割って、平らにして机にし、課題をやりながら、倒れている3人を少し気の毒に思った私は、精一杯の言い訳をしてみた。


「学園のせいみたいに言ってるけどこれ貴女が勝手にやってることよね?」

「…すみませんでした。」


一瞬でバレたね。

やっぱり嘘はいけない。


「…それに、弱点、全身って何よ。ツノウサギも弱点、角以外って。」

「だって事実だもん♪」

「さっきの見てるからどんなに可愛い子ぶってももう遅いわよ…。」


それは心外だ。

きっとどこかには需要がある筈なのだ。きっと。


「…で、お前さんが倒したオークはどうする?」

「あげる。真っ二つのやつとか、嫌なら回収するけど。」

「…じゃあ、この三匹を焼いて飯にするか。お前は食うか?」

「貰えるなら。」

「…あんなことしといてよく食えるな。」

「剣士なら一刀両断とかしないの?」

「オークはそんなに柔らかくねーよ!!」


怒られてしまった。

彼等はCランクパーティでリーダーだけBランクらしい。

私がトラウマを植え付けてしまったのかと心配になったが、その対象は私らしいので大丈夫だとか。

オークの惨状ではなく私への恐怖で気絶とか…なんなのよ、もう!

…てかそれでよく私を食事に誘ったな!?


「お前が非常識なだけの普通の女の子だとわかればコイツらも大丈夫な筈だ。いいか、自然体で接してくれ!変に可愛い子ぶるな、また気絶するぞ、斯く言う俺もさっき寒気がした。」

「酷いよ!」

「そうよ、女の子にそれはないんじゃない!?」

「えぇ!?」


知らぬ間に私の味方になっていた女性ハンターに苦笑するしかないリーダーであった。






「あ、起きた。」

「ひいぃぃぃ!!??」


ちょ、ヘコむんだけど…。


「た…。」

「た?」

「食べないで下さい!」

「食べないよ!!!」


私は猛獣か!?





まぁ、そんなわけで、魔術師の女性の足を治す代わりに水浴びをさせてもらった私は、意気揚々とツチモグラ、パピヨンバードを調査し、レポートを書き終えたのだった。









ゴブリン

弱点、全身

心臓、2割

頭蓋、2割

素手で真っ二つ3割

泣きながらゴブ~って叫んで逃げてった。


教師コメント

2割とか3割って何かな…?




ツノウサギ

弱点、角以外

心臓、指で1割

頭蓋、指で2割

真っ二つ、しようとしたら肉片になった。

ふてぶてしい顔だった。


教師コメント

貴女は鬼ですか!?悪魔ですか!!?




オーク

弱点、全身

心臓、3割

頭蓋、4.5割

真っ二つ、6割

脂肪が邪魔で手の通りが悪かった。

一緒にいたパーティの3人が気絶をした。

私が原因らしい。ごめんなさい。


教師コメント

素手で…真っ二つにしていたのですね。

…私も貴女が怖いです。




ツチモグラ

弱点、日光、全身

心臓、3割

頭蓋、2割

真っ二つ、4割

豆知識

食べると土の味がするからツチモグラらしい。


教師コメント

初めてマトモな事が書いてあって感動しました。




パピヨンバード

弱点、火、全身。

心臓、2割

頭蓋、2割

真っ二つ、3割

高いところに飛んでいたのでジャンプして捕まえた。

羽が蝶みたいに綺麗だったけど、顔がしわくちゃのブサイクだったので、着飾ってるオバちゃんにしか見えなくて残念だった。


教師コメント

貴女は何メートルジャンプしたのですか?

少なくとも6メートルは飛んでいると思うのですが。

私もパピヨンバードを見て顔が残念でショックを受けた身ですので、最後の文には共感しました。


マリさん

レポートをやり直せとは言いませんが、

放課後、2-Bで特別補習を行います。

科目、常識

忘れずに来てくださいね。

最後のレポートは提出後の評価ですね。


つうかこれ、レポートじゃなくね!?

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