無知なる船旅〈二〉
全然カオスじゃなくなった…。
2月って憂鬱ですね…。
後一話でアイリ篇は無理矢理終わらせます。
この小説は100話で終わらせる気です。
あと十何話か、お付き合い頂けると幸いです。
出航してから3日。
ついに…。
「…無くなったな。」
「無くなりましたね。」
「ど、どうしましょう…。」
「…あんたらが容赦なく食うからだろうが!」
団子屋の突っ込みには皆苦笑いだった。
「釣竿も使えませんしね~!」
リナさんが馬鹿にするようにアカネさんを小突く。
「悪かったって言ってるだろ…。」
戦闘時のアカネさんの炎の魔法で結構大事な物が色々と焼け焦げて…消し炭になってしまった物もある。
「あの…私の水魔法で…何とか魚を捕まえて…。」
ユメカさんが提案するが、微妙だ。
飲み水や身体を綺麗にする時など、現状でも結構酷使してしまっているからだ。
「で、でも、他に方法が…。」
シーン…。
「…よし、わかった!俺が泳いで捕まえる!!」
沈黙を破ったのはアカネさんだった。
…だが、アカネさんの得意魔法は……。
「…因みに、この中で泳いだことある人は?」
シーン…。
「しゃらくせぇ!私が捕まえてきてやるって言ってんだよぉ!!」
アカネは半ばやけくそで主張する。
「…じゃあ、縄にくくりつけて海に落としてみるか。」
団子屋は容赦なかった。
「……かはっ。」
「だ、大丈夫ですか!?」
「い、今…治してますから…動かないで…。」
結果。
アカネさんはカナヅチだった。
余計にユメカさんに負担がかかってしまう。
「…すまない…私の力不足だ…。」
アカネさんは暫く動けそうにない。
「…ふむ。」
今度は団子屋が何かをしだした。
「どうしたの?」
「いや、風魔法で糸を付けた串を飛ばしてみたんだが、…やはり、当たらないし、反しが無いと引っ掛からないな。」
…何を言ってるのかよくわからないが、魚を取ろうとしているらしい。
「う~ん…あまり大きいと引き上げられないしなぁ…。」
先ず大きな魚と遭遇してない気がするけどね。
「よっしゃ!」
団子屋が小さめの魚を捕まえた。
「よ…よし、…焼いて…食おうぜ…。」
何とか復帰したアカネさんの主張に待ったをかけたのはユメカさんだった。
「そ、その魚…毒があるかもです…。」
「え!?魚に毒なんてあるの!?」
驚いたのはリナさんだけではなかった。
皆…勿論私も驚いた。
「焼けば…食えるだろ…?」
アカネさんは完全に捕食者の顔で炎を出し始める。
「もしかしたら…危ないかもです…焼いても消えない毒を持ってる可能性があります…。確か、屋敷にいたときに…聞いたことがあります。特殊な料理法でしか食べられないとか…。」
「何それ怖い!?」
「…これは捨てるか…。」
団子屋は魚を投げ捨てた。
「あああ…折角の食料がぁ…。」
「死んだら元も子もないでしょう!?」
私もアカネさんと同じく勿体ないと思ったよ?
「…でも、そうなると怖くて魚なんて食べられないですね。」
リナさんがもっともな意見を口にした。
「というか先ず魚が捕れないわ…。」
団子屋はその後ノーヒットだ。
もう日が暮れてきている。
「もしかして、このまま餓死?」
「それは絶対に嫌です!!」
これはいよいよヤバくなってきた…。
「あの…虫もですけど…魚も光に寄ってくると聞いたことが…。」
再びユメカ様が発言した。
光に寄ってくる…と、なると?
「え、私、虫無理だから!?」
ジー…。
「嫌ぁぁぁ!!!」
「餓死よかマシだろう?」
「お、…お願い…します。」
「よろしくな、リナ。」
「私達の命、貴女に託します。」
「アイリ!?重いよ…。」
決まりだね。
「あ、あ、いや、虫!?、ひっ、あぅ…。」
「五月蝿い!!」
団子屋の喝が飛ぶ。
「騒ぐとお魚逃げちゃいますよ…?」
ユメカさんも見守る。
「アカネさんもアイリも此方に来てよ~…。」
「「ヤダ、ムシ、コワイ…。」」
団子屋とユメカさんは何で平気なんだ?
「よっしゃあ!!飯だ~!!!」
「いえ~い!」
「もうお嫁にいけない…。」
「えっ、虫にナニされたよ…。」
「お前ら、アイリがいるのにそういう会話すんな!」
中くらいの魚三匹を分け合う。
皆嬉しそうに食べているが、…私は引っ掛かっていた。
「…私だけ、何もしてない。」
リナさんが集めて、団子屋が捕まえ、ユメカさんが洗い、アカネさんが焼く。
…じゃあ、私は?
「アイリちゃんはまだ子供でしょう?」
「いるだけで癒されるから…。」
「その分食うけどな~!」
どっと笑いが起きる。
…だが、私だけが笑えなかった。
私は一人で夜の海を見ていた。
「月が…綺麗…。」
もう潮風のベトベトにもなれた。
「…私に…出来ること…私だけの…魔法……影!…魔法…。」
夜の海は黒く染まり、船に波がぶつかる音だけが永遠に続いていく。
それはまるで…漆黒の…!!
「まさかとは思うけど……!!!」
この魔法、何でもありかよ…。
魔法って…本当に凄い!
「さて、朝と昼はどうする?」
「夜の為に蓄えとこうぜ…。」
「ていうかこの方角であってるの?」
「ほら、これ見て。方位磁針っていってね。方角がわかるんだ!」
「…で?どっちに向かってんの?」
「北。北に行けば大陸にぶつかるでしょう?」
「雑!?…大丈夫か?」
「ん~?何とかなるだろ…。」
急に不安になっていく一行であった。
「よっしゃ~!者共!!飯捕りの時間じゃい!」
「「いえ~い!」」
アカネさんとリナさん、ユメカさんはかなり仲良くなっているようだ。
「ほら、さっさとやるぞ!」
皆が集まって魚を捕っている間に私だけ船の反対側に行く。
「ふぅ…。」
私だけ、何も出来ないのは嫌だ!
私だけ、してもらってばっかりは嫌だ!!
「…覚悟は出来てる。」
そして私は、夜の海に溶けた。
「くっそぉ~!!」
「光が弱いんじゃないか?」
「団子屋が大事なチャンスで外したのが大きかったんですよ!」
「み、皆さん静かにぃ…。」
ズシン…。
「…え?」
リナさんが振り向き、固まる。
「…いやいや…。」
アカネさんが振り向き、固まる。
「ア、アイリ…?」
団子屋も振り向き、唖然としている。
「…す、凄いです!」
ユメカさんは嬉しそうに跳び跳ねている。
…強いな、この子。
「ふふっ、おっきなお魚捕まえたぜ☆」
「捌ける人~?」
「私、実はお兄ちゃんが料理人だったから…出来るかも!」
そんなリナさんの指示で団子屋が切っていく。
そして…
「うめ~!!」
「最高~♪」
「魚汁温まるわ~。」
「炙ったのも美味しい…。」
私は、堂々と無言で食らいつく。
「にしても、どうやって捕ったんだ?」
団子屋の問いに説明する。
「夜の海が真っ暗だったから…もしかしたらと思って影潜りしてみたら…スイスイ泳げた。しかも海を影化したら魚は泳げないから…そのまま連れてこれた。…どや。」
ゴツン!
いきなり頭部に打撃が襲う。
団子屋のげんこつだ。
「痛いよ…団子屋…。」
「何かするときは私に報告!一人で危ないことするな!」
でも、その後抱き締めてくれた。
「これで、全員仕事人だな!最強のチームじゃね?」
皆で顔を見合い、私達は夜の海の上で笑い合った。
そういえば、フグの刺身って食べ過ぎると毒で死ぬらしいですね。筋肉には毒が少ないってだけらしいです。
あと、フグは自分で毒を作ってるわけではないと知ってびっくりしました。
びっくらくら寿司です。




