お姉ちゃんって良いよね!
やっぱり私こういう話向いてないなぁ…。
「あのぉ…?アイリさん?」
女の子はおどおどしながら私に話しかけてきた。
「ん。…ありがと。」
女の子がガチガチに緊張していたので軽く微笑んでみた。
「わっ…えっと…す、素敵です!えっと…。」
女の子は少し照れた。
私は無意識に疑問を口にしていた。
「私って…可愛い?」
「へ…?」
しまった。これは何か違うな。
「あ、なんというか…故郷じゃゴミ屑みたいな扱いうけてたから。」
弁解しようと試みて、苦い記憶が甦る。
「え…?そ、そうなんですか?」
だが、意外にも女の子は驚いた様子で聞き返してきた。
「逆に…なんというか、美し可愛い?…お人形さんみたい?…うぅむ……とにかく、完璧な造形美?って感じです!」
何を言っているのかよくわからない。
「ブスかブスじゃ無いかで言うと?」
「ブ、ブスどころか真逆ですよ!?」
ブスの真逆…ドブス?
「ドブス?」
思ったことを口にしてみる。
「いやいや、それはブスのその先ですよ!」
女の子は首を振った。
「アイリさんが怖がられてる理由、何となくわかった気がします。」
私は無言で聞く。
「アイリさん、非の打ち所が無いスペックですし、クールな性格で…誰だって死神説信じちゃいますよ!!」
…この子は知らないんだね。
マーラも私のことを深くは言わないでくれたけど。
取り敢えず、非の打ち所が無いスペックという言葉に引っ掛かったので、軽く胸を撫でた。
「お、お胸も機能性重視というか…」
「もういいよ、ありがと。」
少し悪い気がしてやめたけど。
「ところで、このチケット、誰と行くつもりなの?」
実は私は芸術鑑賞なんて大嫌いだ。
あれは大嘘。
この前この女の子を助けた時に、お礼がしたいと言われたので、それを利用したまでだ。
「えっと、お姉ちゃんと、です。」
「他に兄弟とかは?」
「お姉ちゃんと私の姉妹だけです。」
ふぅん…。
「お姉ちゃん、どんな人?」
「えっとですね…」
その瞬間、女の子の目が、いや、顔面?違うな、表情が輝きだす。
「優しくて強くていつも私を守ってくれて色々なことを教えてくれて私の為に沢山のことをしてくれてとっても頑張り屋で格好良くて綺麗で頼り甲斐があってそれでついつい甘えてしまってでも怒るときはきちんと怒るしそれに…」
急に饒舌になったね。
…うん。
「もう充分伝わったよ。私とおんなじ。」
「この前の戦いのときも……へ?」
「お姉ちゃんって、凄いよね。」
「は、はい。…アイリさんもお姉さんがいるのですか?」
「うん、いたよ。とっても…とっても優しくて強くて賢い、最高のお姉ちゃんがね。」
私はそれ以上は話さなかった。
「ミトン、約束の場所と違うじゃない!!」
女の子…ミトンより一回り背が高く、凛とした女性がやってきた。
「貴女のお姉ちゃん?」
「はい!…お姉ちゃん、ごめんね?」
「理由は?」
「アイリさんが食いしん坊で…。」
あ、私のせいか。
「ごめん。美味しいものの匂いに連れられて…。」
「あっはは…。その串、全部食べたんですか?」
年上にも敬語を使われるのは少し変な気分だ。
「そうなの!何でこんなに痩せてるんだろ~ね。」
「ほ、本人がいるのに私に聞く!?」
「いや、お姉ちゃん最近ダイエットしてたじゃん?」
「ちょ、言わないの!」
「あはははは~!!」
ミトンは駆け出す。
「こら~ちょっと待ちなさ~い!!」
それをミトンの姉が追いかける。
…やっぱり、お姉ちゃんって良いね。
「仲良いね。」
戻ってきたミトンに話しかける。
「えへへ…。」
「この子の相手をしてると疲れるんですよ~。」
そう言うお姉ちゃんも笑顔だった。
…私のお姉ちゃんも、私の前でだけ、いつも笑ってたけど。あれは私に気を使ってじゃなくて、本当に……………………。
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私が生まれ育った大和の国は、鎖国というものをしていて、外の文化はあまり入って来なかった為か、私は悪習だと思う習慣が沢山あった。
女性に人権は無く、男性に絶対服従。
代わりに、男性は女性についての全ての責任を負う。
そして、それを完全にするために、女の子は産まれて直ぐに魔力核を取り除かれる。
私は、そんな国のとある町の民家で産まれた。




