マリVSクレア
「ゆっくりしましょ~ね~♪」
クレアの様子があからさまにおかしい。
「クレア様、どうかなされました?」
「ん~?…あ、このお菓子美味し~♪」
何かを誤魔化している?
…でも、グラスは無事だ。
「クレア?」
「クレアお姉ちゃん?」
ケティ様も心配そうに見ている。
「え、え~…っと…もう少しゆっくりしてればわかるから…。」
クレアは言葉を濁した。
20分後
「説明をしろ!!!」
国王様が来た。
「ケティ様がグラスを落としてしまいマリさんが拾いに行ったところ、誤解されたようです。」
「あ、下にいたマッチョな三人組?私はタイプじゃないな~。」
関節技で逃げられなくして襲われそう。
…いや、ほんと、トラウマものだからね?
「そんなこと聞いてないわ!!…何故止めなかった?」
「いや~…面白そうだったからつい…。」
クレアはキョロキョロしながら必死に言葉を探しているようだ。
「…もしかして、結構なお偉いさんだったり?」
「…そうではないが、…自信を失って全員ランクを返上してきてな…ワシが今日の演武をどれだけ楽しみにしていたことか…。このっ!このっ!このぉっ!!」
国王様は私をベシペシと叩いてくる。
「あ~…何か…ごめんなさい…。」
威厳も何もあったもんじゃないが、哀愁だけは凄い。
「責任とってお主が踊れ!!」
「嫌ですよ!?」
「ケティが踊る~♪」
ケティ様はノリノリで踊り出す。
すっごく可愛いね♪
最初は納得のいかない顔だった国王様も次第に笑顔…いや、ニタニタ顔?になった。
「…む、そうだった!…マリ、ギルドカードを貸してくれるか?」
「何で?…罰則!?」
「いや、…ちょっとな。」
「お姉ちゃん♪ケティ様、疲れちゃったみたいですし、私達、少しお散歩しながらお話しませんか?」
クレアは国王様と目配せをしている。
「クレア?何を企んでるのかなぁ!?」
「な、何でもありませんよ?…お姉ちゃんがもう少し弱かったり、面倒臭い性格じゃなかったらこんなことしなくて済んだのですけどねぇ…。」
「堂々とディスられたんだけど!?」
「??…わ、悪気はないですし、私はお姉ちゃん大好きですけど、ルールってものがありますから…その、…国王様、行って下さい!!…ここは私が全力で食い止めます!!!」
「任せたぞクレア!!」
そう言うと国王様は逃げ出した。
「逃がすかっ!!」
「貴女の相手は私です!!」
追おうとする私の前に、クレアが立ちはだかる。
「クレアのヘンテコ創作魔法シリーズ、『喋るゴミ箱』」
ゴミ箱が出てきた。
「ワ、ワタシハ…ゴミバコ…。」
「おぉ~すげぇ…!!!」
…って、何を感心してるんだよ!!
というか何でゴミ箱を喋らせようと思ったんだよ…。
「悪いけど進ませてもら…」
「クレアのヘンテコ創作魔法シリーズ、『ブリキの音楽隊』」
おおっ!!ブリキの兵隊みたいなのが3体出てきた!
賑やかだねぇ…。
私も口笛吹こうかな?
「おお~お姉ちゃん上手!!」
「えへへっ…。」
「私に教えて下さい!創作の幅が広がりそうですし!」
「うん!えっとね…まずは…」
20分後
ピュー…
「音が出ましたよ!!」
「おお~早いね!!」
「お姉ちゃんの教え方が上手なんですよ!!」
…あれ?私、何か忘れているような??
「おお、クレア!よくやってくれた!!」
あ…。
「あ、国王様、終わりましたか?」
「あぁ、完璧だ。」
しまったぁぁぁぁ!!!?
国王様は私にギルドカードを渡してくる。
格闘家ランク…
私は現実を直視出来ずにその下を見る。
「魔術師ランクA!?」
「正規の手順ではないが、ランクSの者に認められればランクAまでにはなれる。そしてクレアはランクSだ。」
「そうなの!?」
「はい、お姉ちゃんも直ぐになれますよ。」
「へ?…そうなの?」
「なれんだろう…魔術師ランクSになるためには魔術師ランクSの内の3人から推薦状を貰い、更には国王の…つまりはワシの許可が必要になる。」
「この国だと、私とザラさんとリビナードさんですね。」
「リビナード先生もランクSだったの!?」
「知らなかったんですか?リビナードさんくらいしか暴走したレミュレットさんを止められる人はいませんしね…。特殊な魔法ならあの人に敵う人はいませんよ。」
「特殊な魔法?」
「封印術とか呪いとかですね。それに、闇魔法の事なら世界一でしょうし、単純に一番戦いたくない人ですよ。」
「そんな凄い人だったんだ…。」
「レミュレットさんも国王様が承認拒否しなければランクSだったのですよ?」
「あんな悪魔を承認出来るわけないだろ!!」
「最近は婚活に必死で随分丸くなりましたよ?」
「あれと結婚しようとする猛者などいるのか…?」
「レミュ先生が見た目も性格も良いのに独身な理由って…。」
「昔有名になり過ぎたからでしょうね。」
「未だにまともな友人はリビナードくらいだろうしな。」
うわぁ…可哀想だけど…怖い…。
「でも、子供達には人気の先生ですよ?」
「何か、教え子と結婚しそうだな…。」
「私も同じこと思ってました。」
レミュ先生の戦うところ、見てみたいね。
「…で、です!!」
私は現実を見る。
「何で私の格闘家ランクがSになってるのですか!?」
マジで意味がわからん!
「いや、だって…。」
クレアが言葉を濁す。
「この国には格闘家ランクSが3人いたんだ。」
…物凄く嫌な予感がする。
「今日、その3人に集まって貰って、演武をしてもらうことになっていたんだ。」
「ヘ~…サンニンカ~…。」
流石の私も察したよ。
「だが、ワシが行った時には全員気絶していて、しかもランクSを返上、お前を推薦までしてきた…。」
「クレア…何で止めてくれなかったの…?」
「面白そうだったからつい…。」
クレアはポリポリと頬っぺたを掻いた。
「…でも、私には拒否権無いの?」
「ランクSが0人になると色々と問題が出てきてな。」
「ランクSのみの特別会合という名の各国の探り合いとか、まぁ、他にも色々と。」
「クレアもそれに出たことがあるの?」
「常連です。リビナードさんは全く来ないですけど。うちの魔術師ランクSは全員化け物ですし、レミュレットさんの恐怖も他国には植え付けられていますしで…だから世界魔術協会はこの国にあるんですよ?」
あれ?世界…なんて付いてたんだ。
というか、クレアさりげなく自分の事も化け物に含めたよね。
「格闘家は特に血の気の多い奴ばかりだし…大変かもしれないが、頑張れよ?」
「不参加は…」
「勿論駄目だ。」
「……。」
「そう落ち込むな、まだまだ先の話だ。」
「…わかりました。」
諦めるよ。仕方ない。
私が軽く倒しちゃったのが悪い訳だし。
…こうなったら全ランクSでも目指してみる?
私に良くない考えが浮かんだ瞬間であった。
今日が沈むまでには投稿します。




