子供×ワイングラス=大惨事
「…ん?」
謎のお茶会が始まった…。
「ケティです、宜しくお願いします。」
「え?…あ、宜しく…お願いします?」
私は困惑している。
「ね、ねぇ?……恐らくだけど、お姫様だよね?」
「…?はい、そうですね。」
代わりにクレアが答えてくれる。
「…何で庶民の私がお姫様に丁寧にお辞儀されてるの?」
「マリお姉ちゃんはもう庶民では無いからです。」
「いやいや、庶民だよ?」
「ケティ様、これが謙遜というものです。皇女たるもの、傲慢になってはなりません。」
いつの間にか、お姫様の隣に眼鏡のお姉さんが立っていて、テーブルにはお茶が置かれていた。
「いや、ほんとに王族じゃないんで…これは謙遜ではありません。」
「???」
ケティ様は首を傾げている。
「マリ様、ケティ様を困惑させないで下さい。」
何で私が怒られてるの!?
「と、取り敢えず…お茶でも飲んでゆっくり話しましょうか…。」
クレアの提案で私達は席につく。
「お茶菓子持ってきますね♪ケティ様、ちゃんと座って待っているのですよ?」
「は~い!!」
ケティ様は大きく手を挙げて返事をする。
…が、落ち着きがない。
「…小さい子って可愛いですよね!!」
クレアがケティ様の頭を撫でながら言う。
「…いや、クレアも…いや、何でもないよ。」
クレアは小学4、5年生くらいにしか見えない。
…というか、年齢的にも恐らくそれくらいだ。
「私は充分に大人です!」
「え~?…じゃあ私はおばさん?」
「お、お姉ちゃんはお姉ちゃんですよ!!」
「…私はババアですか?ゾンビですか?」
「…何か、ごめんなさい…。」
眼鏡のお姉さんがお菓子を置いて笑っていた。
…凄く怖い。
「あ、申し遅れました、私はケティ様の教育係を任されております、ガーベラと申します。以後、お見知り置きを。」
ガーベラってお花の名前だっけ?
こっちの世界だと…特に何もないや。
ガーベラさんは赤みがかった茶髪のボブカット、眼鏡のエリートって感じがする人だ。
「宜しくお願いします。」
…少し緊張する。
私はゆっくりとお茶をすすった。
「………。」
「………。」
「おいちぃ♪」
…見られてる。
主に魔法の天才と眼鏡のエリート系な女性から見られてる…。
「ゴクッゴクッゴクッ…。」
うぷっ。
「………。」
「………ぶっ。」
「…クレアさん、折角マリさんが頑張っているのに吹き出すのはどうかと…。」
「だって…必死なんだもん…。」
…そうですよ。
私、紅茶苦手なんです。
「折角入れて貰ったのに…ごめんなさい。」
「カトラルの実の果汁なら飲めますか?」
「あ、はい!好きです!」
「では、お持ちしますね。」
アイリやリリィさん辺りがいたら反応しそうな台詞も、ガーベラさんは受け流してくれる。
「…クレアさんが堪えられれば無言でおかわりの紅茶を注げたのに…。」
「ごめんなさい…。」
「ちょっと!?」
眼鏡はドSの方程式だね。
「どうぞ。」
ガーベラさんは果汁をグラスに入れて持ってきてくれた。
とても綺麗なワイングラスだ。
勿論アルコールは入っていないが。
「美味しいです!」
「お口に合ったようでなによりです。」
露店で買って飲んだ時のカトラル果汁より高級感がある。
何と言うか…渋味がない?
「そりゃそうですよ、ちゃんとした製法で作られてますからね。」
確かに露店でも飲めるものを王族に出すわけないか。
私が果汁を飲み終えると、ケティ様はグラスに興味を持ち始める。
「ケティ様、危ないですから触らないで下さい!」
「やだ!触りたい!!」
「ケティ様!我が儘は駄目ですよ!!」
「や~だ~!触りたい~!!」
「ケティ様!!!」
「うわああぁぁぁん!!!」
ケティ様は泣き出してしまった。
「クレア、何か泣き止ませる魔法とか無いの!?」
「あったら使ってますよぉ!!」
「…困りましたね。」
ガーベラさんは溜め息をついた。
「…ケティ様、もし今すぐに泣き止むことが出来たなら、少しだけ触らせてあげますよ?」
「ああぁぁ…ぁぅ…本当?」
「ハンカチをどうぞ、涙を拭いてください。」
「触って良いの?」
「…はい。」
泣いたから仕方なく、ではなく泣き止んだら、という点は上手だと思った。
「落としたら割れちゃうので、ゆっくりしっかり持ってくださいね!」
「おおぉ、凄い!綺麗!!」
ケティ様ははしゃいでいる。
「ケティ様、あまり動くと…」
「あははは、綺麗、綺麗!!!」
ケティ様は私とガーベラさんの間をすり抜け、走り出す。
「ケティ様!!!」
その時、ケティ様が転けた。
ケティ様の手からグラスが離れ、柵の隙間を通って一階の庭園へと落下していく。
「とっ!」
気付いたときには私は落下していた。
「よしっ!掴んだ!!」
グラスの細い部分を握り、何とか着地する。
「何者だ!!!」
そこには見知らぬ男が3人いた。
「えっと…。」
「敵襲か!?」
「何処から現れた!?」
「そのグラスは何だ!?」
ど、どうしよう…。
「答えられないとなると…盗人か?」
「お主も運がなかったな!」
「拘束させて貰うっ!」
はぁ!?…ちょ、闘うしかない!!?
「くっ!」
私は男の内の一人に高速の裏拳を浴びせ…
躱された!?
懐に潜り込まれそうになり、慌てて後ろへ飛んで逃げる。
「グラスが邪魔っ!!」
私はグラスを空高く投げ上げる。
…割れない程度に。
一人の男が肉薄してくる。
私はその男の右正拳をしゃがんで躱し、腕を掴んで片足で無理矢理男の足を薙ぎ払い、無理矢理背負い投げた。
「がっ!?」
男は倒れた。
『超力業背負い投げ』、決まった!
私は落下してきたグラスを回復させながら受け止め、再び上空へ放り投げる。
「私は女に負けるほど落ちぶれては…」
私は踏み込んだ足で男の足を踏みつける。
そして、男がよろけた瞬間を見逃さずに、無慈悲なビンタを叩き込んだ。
バチイィィン!!!
男は起き上がらない。
…残りは1人!!
私は再びグラスを上に投げ、男と対峙する。
飛び込んできた男の抜き手突きを躱し、その腕を取ってアームロックをかける。
「ぐっ…あぁぁ!!?」
抜けられるわけない。
力の差がありすぎるのだから。
だが、なかなかタップしないので、無言の腹パンで気絶させた。
「ふぅ、あ、グラスは!?」
「お姉ちゃん!!グラスは受け取ったよ~!!」
おぉ、良かった~♪
じゃあ、二階に行こう。
私はジャンプした。
カーテン閉めきってると日がいつ沈んだかわかりませんよね?(言い訳①)
私、日本、とは言ってませんよ?(言い訳②)
通信かサイトの調子が悪かったんや…。(言い訳③)
色々とあって短めの投稿です。




