婚期逃すぞ☆
「何このパンケーキ!!可愛い~!!!」
あぁ…携帯があれば…。
「しかもウマ…美味しい!!」
何か王国語で適する言葉を探す毎に言葉が正されていく気がするよ…。
でも、すっごく美味しい!!
…そんなわけで、閉店後のケモカフェでケモッ娘達に囲まれながら、パンケーキを満喫しております。
「…マリ、お疲れ様です。」
「あ!シルヴィ、どこ行ってたの?」
「丁度買い出しに行ってました。今回の件、ありがとうございます。」
「いやぁ…レジの子もふもふ出来たからねぇ…もうお礼はお腹いっぱいだよ~♪」
「…私のが、毛艶良いし。」
シルヴィがボソッと何かを呟いた気がした。
「ふふふっ、いつもなら害虫はシルヴィが追い払ってくれているのですが、稼ぎ時に不慮の買い出しとなると、人出を割けなくて…一人での外出は他の子達には危険なのでシルヴィに任せるしかなかったのです…。」
厄介な客のことを害虫と呼ぶあたり、リーゼさんタイプ確定だね。
「シルヴィなら良いんだ。」
「多少は強いですから。」
「しるゔぃはね、あたまがいいくて、つよいんだよ!!」
獣人族の一人が会話に混ざってきた。
褐色の元気な女の子だ。
「へ~!!おっ!貴女の赤いリボン、すっごく可愛いね!」
「えへへ、これ、おかあさんにつくってもらったんだ~♪」
嬉しそうにくるりと回る。
あぁ、元気で活発なケモッ娘もたまらん…。
「ナキ、お掃除終わったの?」
シルヴィが尋ねる。
「とちゅう!!」
「ならお掃除しなさい。」
「は~い!!」
そう言うと、スキップしながらテーブル席に戻っていく。
「ふきふき~♪」
あぁ、マジで可愛えぇ…。
「マリ。」
いつになく真剣なシルヴィの声に、思わず振り向く。
「な、なに?」
「…呼んだだけです。」
「ここで、お姉さんの豆知識~!!!」
店長さんがいきなり謎のコーナーを始めた。
「黒い毛の子の特徴として、良く言えば一途、悪く言うと嫉妬深い…って言うのがあるの。これも、黒い毛の子が高く売られてた理由の1つね。」
…つまり。
「ね?シルヴィ♪」
「…何のことだか。」
あぁ、可愛い…シルヴィ可愛い…。
「シルヴィ♪」
私はシルヴィを撫でる。
「えへ……。」
ふあっ!!可愛いよ~~~!!!
…だが、店内にいたケモッ娘達は凍りついていた。
店長だけが溢れる笑顔でシルヴィを見ている。
「…接待!!接待だから!!!」
シルヴィは顔を真っ赤にして慌てて弁解をする。
「な~んだ~。」
「しるゔぃはおとなだね。」
「でもしーちゃんがせったいってめずらしくない?」
「かわいかった~!!」
これで納得してしまうケモッ娘達…可愛い!!
「あらあら~♪」
「うふふふっ♪」
黒い毛のレジの店員さんと店長さんだけは、やや犯罪臭のするにやけ顔をしていたのだった。
「この店の裏が泊まれるスペースになっていますので、何かあったらおこし下さいね♪」
「…来ないでって言ったのに。」
シルヴィは嬉しそうだが、やや拗ねている。
「また何度か来るかも。美味しいし!」
「…せめて営業時間後に来てください。」
「営業は午前10時から午後2時までとなっておりますので、是非、営業時間内に来て下さいね♪」
「了解!!」
「…店長!!」
「ふふふふっ……♪」
「…マリ、太っても知りませんからね。」
「私は運動してるし、大丈夫だよ!!」
…回復魔法で痩せられないかな?
…逆に肥えるかもしれないね。
「それじゃ、またね~!!」
「…闘技場での試合、絶対に見に行きますからね!!」
「…え?シルヴィさん今なんと…。」
やめて欲しい…。
「勿論、お店はお休みにして、皆で観戦するつもりよ♪」
「…ぎゃ~~~!!!?」
…マジか。
……マジでか。
私は悲鳴と共に、店を飛び出したのだった。
例の日まで、後4日に迫ったある日。
私は遂に感覚を消す魔法を使えるようになった。
「さあ、アイリ、私の心臓を、そのナイフで貫いて!!!」
「…本当に、大丈夫なの?」
「大丈夫…だと思う!!」
他人の攻撃で試したことは無いので、少し怖い。
「…じゃあ、いくよ?」
アイリのあまり躊躇わないとこ、好きだよ。
「…おわっ!?…おお、貫かれてる…。」
「大丈夫なの?」
「えぇ…ナイフ、抜いてくれる?」
「了解。」
私は傷を即座に治す。
そして、感覚を治す。
「しょっぱ!?」
口の中の血も慌てて消す。
…これ、もはや回復じゃ無くね!?
気にしないけど。
「かんっぺき!!!」
「よかったね。」
「でも、まだまだだよ!!やるからには全力で、最高のエンターテイナーになるんだから!!」
「頑張れ。お金のために。」
「笑顔のためだよ!?」
もうお金はいらないんだよ。
…国王から貰ったお金、約束の3倍入ってたんだから…。
あの国王、許すまじ…。
…アイリには勿論言ってない。
言ったらあの子、絶対にだらけるから。
「そうだね、お金、沢山あるしね。3000万もあれば暫くは食費にも困らないね。」
「…アイリさん?」
「少し、頂戴しました。」
「覗いたどころか使ったんかい!!?」
「お手伝いさん雇う?」
「雇わないし金返せ!!」
「じゃあ、払えないから身体で返すね。」
「どっかに売り飛ばすぞコラ!!」
「あ、それは駄目。私はマリ専用のオ…」
「いりません!!!」
…結局、私が許したよ。
甘過ぎるかな?私。
「えへへ…ありがと♪」
最近のアイリのキャラ崩壊レベルの媚びが酷い。
「ねぇ、もしかしてアイリって…こうやって生きてきたの?」
「そんなわけないじゃん。マリにだけだよ恥ずかしい。」
…こういう人は多分、皆そう言うんだけどね。
「…お金無くても、一緒にいる?」
「当たり前。」
「…じゃあ、もうお金渡さないから。常に全額持ち歩いてやる。」
「えっ!?…ちょっと待ってよ!!?」
「何でだよ!?」
「それとこれとは話が違うよ!!」
「でも、これは私のお金!!」
「…なら、結婚しよう!!!」
「何でそうなるのよ!!?」
流石に女の子同士で結婚となると…
って、違う違う。
アイリは友達だし、流石にそれはない。
ちょっと、まともな男とも関わらないと、私、おかしくなりそう…。
「でも、キスしたり一緒に寝たりする仲だし…そろそろ頃合いじゃない?」
「何がよ!!?」
「あんまりのんびりしてると、婚期逃すぞ☆」
「まだ18だから!!!」
まだまだ時間は充分にある筈だ。
…ある…筈だ。
……ある…よね?
何だか少し怖くなった私であった。
投稿遅れます。




