正義のヒーロー、マリトラマン☆キララ☆
「リリィさん、生きてますか?」
「ま…マリさん…!?ゴホッゴホッ…うぅ…。」
この部屋にはベッドが4つあり、それぞれ同じ病気と思われる患者が寝ているようだ。
リリィさんは入って右奥のベッドで寝ていた。
「病院に運び込まれる程の熱って…まぁ、お大事に。」
「え!?…もう行っちゃうの!?」
「お供えものが欲しいんですか?オーク肉くらいならありますけど。」
「私死んでないよ!?…というか、病人に肉って…お供えものにも適さないでしょ!!…ゴホッ。」
「ゴホゴホ五月蝿いですね。」
「何!?何なの!?何か今日冷たいよ!?お見舞いに来てくれたんじゃないの!?」
リリィさんは涙目で訴えてくる。
「静かに!…他の患者さんもいますから。」
「なら優しくしてよぉ…。」
リリィさんが頬を赤らめて手を伸ばしてくる。
…ので、はたき落とした。
「酷い!?」
「風邪がうつるかも知れないでしょう?」
「熱はある程度引いたし、この空間は常時除菌魔法かかってるから大丈夫よ!!」
「接触感染!!!」
…あれ?
「そういえば、昨日もこの部屋にいたのですか?」
少し何かが気になった。
「…?昨日は隔離室にいたわよ?」
あぁ、なるほど。
「昨日アイリ来ましたか?」
「隔離室の窓の外からずっとご飯作れジェスチャーしてた…。」
「話さなかったのですか?」
「私が首を横にふったら帰ったよ…。」
「えぇ…。」
アイリも中々に酷いな。
私もだけど。
「…で、ただの風邪ですか?」
「ならとっくに帰宅してるわよ…。胃に穴が空いたらしくてね…。」
ストレスかな?
「痛くないんですか?」
「魔法で全身の感覚無くしてるから。」
あ、それ今一番覚えたいやつだ。
「それ、教えて貰えませんか?」
「え?……お代はキスで。」
「いい加減諦めて下さいよ…、お代は…貴女を健康体にすること…で、良いですよね?」
「へ…?回復魔法も使えるの!?…でも、体内を治すのって相当凄い魔術師じゃないと…」
「…で、受けますか?受けませんか?」
「治ったら教えるよ…ってか、今日冷たすぎない?」
私は無造作にリリィさんの胸を掴む。
おおっ…美形だ…なんだろう…しっかりとしている。
「…マリさん?回復魔法は…?」
あ、別に喜ばないんだ。
まぁ、喜ばれてもドン引きだけどさ。
私は意識を集中して、回復電流をリリィさんの全身に流す。
「ほんとだ…胃に穴が空いてる…面白っ!!」
「え…わかるの…?」
面白くないから!!と、突っ込まれたが気にしない。
簡単に治った。
「何か、スッゴい身体が楽なんだけど…。」
「もう治りましたから、さっさと退院して、明日から私達の朝食、お願いしますね。」
「…ん?…二人分!?」
「あと、感覚を無くす魔法も。」
「うわぁ…私、もっと病院にいたい…。」
「じゃあ、先生呼んできますね?」
「あんたは鬼か!?」
…そんなわけで、感覚を無くす魔法のコツを聞き出して、私は退散した。
「遅めのおっ昼はケッモカッフェで~♪」
私はお洒落で可愛らしいメイド喫茶のようなお店に入る。
「なぁ、なぁ、ちょっとくらい良いだろ~?」
「や、やめて下さい…。」
…入ってすぐのレジで、店員の獣人とハンターらしきおっさんが揉めていた。
「お、おさわり禁止、です!」
店員さんが必死に声を絞り出すようにして言うが、
「少しくらい許してよ~?…俺、ランクBのハンターなんだぜ?…逆らったら大変だぜぇ…?」
あ、これ、脅迫だ。
よく観察したら、店内の人達も皆レジの方を向いていた。
…が、誰一人として動こうとしない。
皆の敵意と嫌悪感は凄いが。
これは、正義の味方が登場するしかないでしょう?
変身!デストロイヤー☆キララ☆!!!
私は少し下がって誰からも見られないように仮面をかぶり、マントで服を隠し、男の肩を叩く。
「あのぉ…私、待ってるんで、早くしてもらえないですかね…?」
「あぁ!?…なんだぁテメェは……!!?」
「ランクAハンターキララです☆以後、お見知りおきを☆」
「なっ!?ランクAだと!?」
店内が一気にざわめく。
流石に、国王の隣にいたとなると、知名度は上がっているようだ。
「私、この店、好きなので…席も空いているようですし、早く入りたいな~☆って。」
「ぐっ…ここで国王様を敵にまわすわけにはいかねぇか…だが、こんな女がランクAだと!?職業は?」
「格闘家です☆」
何だろう、この屈辱的な感覚。
…格闘家…か…。
「ははははは!!!…格闘家だと!?余程剣も魔法も使えないようだな!!使えるのは親の力だけってか!?」
上手い…が、何だこいつ。
完全に私がお偉いさんだと勘違いしてる?
「キララに親なんていませんよ☆」
「はぁ!?」
男は驚いたようだ。
「…ふん、…おっ、そうだ!…お前、本当にランクAなら、俺と決闘しないか!?コイツを賭けて。」
男はニヤッと汚く笑った。
コイツとは…レジの店員さんだ。
「良いわよ☆私が買ったらケモカフェ出禁ね☆」
…あっ、店員さんにも聞かないと。
「勿論、良いですよ!!!」
あれ?…すっごく嬉しそうだ。
「では、王都の下流地区、ライアン演習場で待つ。逃げたら俺の勝ち、契約書も書いてもらうぞ!!」
「了☆解☆」
あぁ、このキャラ面倒臭い…。
「…というか、貴女も随分と簡単に引き受けたわね。」
「だって、シルヴィのご主人様なのでしょう?」
…ん?
「わ、私はキララよ☆」
「…マリさん。宜しくお願い致します。」
奥から店長らしき胸の大きなお姉さんが出てきた。
勿論獣人族だ。
…あれ?
レジの店員さんと、店長らしき人、シルヴィは黒い毛だ。
…確か、黒い毛の獣人は頭が良くて、他の色だとちょっと頭が足りない…だったよね。
接客は黒くない獣人達がやっているようだ。
…要所には頭の良い子を置いてるんだね。
というか、獣人って言い方良くないよね?
今度からはケモッ子でいこう!!
「シルヴィ…バラしたのね…。」
「私達の中のルールで、信頼できる人間の情報を共有するっていうのがあるから、許してあげてね♪」
あ、この人、リーゼさんタイプだ。
凄くやりにくいなぁ…。
「わかりました…あと、負けませんから安心して下さい。」
「楽しく遊んであげてね♪…それと、どちらにせよ法律的に意味のない決闘なのだけれど。」
あ、獣人族保護の色々な法律で守られてるんだっけ。
じゃあ、意味のない闘いなのか…。
「まぁ、遊んでくるよ…。」
私はため息をつきながら、店を出た。
「あ、いたいた☆」
私は飛んでいた。
あ、ちゃんと完璧に着替えたよ。
パーフェクト☆キララ☆モード!!!
…ふぅ、痛いね。
ズドーン。
「着地っと☆」
場所がわからなかったから、
飛んだり跳ねたりして下流地区を回っていたのだ。
「なっ!?なっ!?」
「ゴメンね☆場所がわからなくって☆」
男の動揺は見ていて面白い。
「さて、始めよ☆」
「あ、ああ…。」
「ルールは参ったって言うか死んだら負けってことで良い☆かな☆武器は無制限☆」
男は訝しむ。
「お前がそれで良いのなら…俺はコイツを使わせて貰うぜ!!」
そういうと、男は背中から大剣を引き抜き、構えた。
「じゃあ、ギャラリーも集まってきたことだし、始めますか☆」
謎の仮面少女が闘うという噂は雷のような速度で王都を駆け巡っているらしい。
…うわぁ、今更ながら、恥ずかしすぎる。
「試合開始!!」
男はそういうと、大剣を構えて飛び出してくる。
私は動かない。
「びびって動けねぇのかぁ!?」
男は大剣を振り上げる。
…弱い犬ほどよく吠えるとはこのことだね。
私は片手を硬化させ、受け止める。
「っ!痛いじゃない☆」
感覚を消す魔法はまだ使えない。
「なっ…何!?」
うわぁ…テンプレ過ぎる…。
「『ニトロム』」
私が図書館で見つけた面白い魔法。
触れたものを爆弾に出来る上位魔法。
私は距離を取る。
「っ、次こそは…」
ドガーン
「ヤ○チャしやがって…。」
男は倒れた。
思った以上に凄まじい爆発で私も少し驚いたよ。
ふふふ…でも、この魔法の真骨頂は…ふふふ…。
私がこの魔法を覚えようとしたのは、こんな使い方のためじゃない。
私は仮面のしたに笑みを携え、飛び立った。
「シュワッチ!」
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