祭りの夜は、終わらない。
話は主人公sideへ戻ります。
「…で、なんだけど。」
何とかカルネとエリナの誤解を解いたアトラは、私に向き直る。
と、同時に私は囲まれる。
「これ、どういうことですの?」
そう言うとアトラは何かのポスターを見せてきた。
そこには、
『美少女仮面、キララ☆参上☆』
と、描かれ、私の写真が大きく載っていた。
…ん?これ、絵だ!!
「ほんとだ!すっごく上手な絵だね!!」
「そこじゃない!これ、貴女でしょう!?」
あ…この子達は知らないのか。
「ちょっくら友達の貴族様に脅迫されちゃってね~。」
「貴族様!?」
「脅迫!?」
「いや、まず脅迫してくる友達って何よ…。」
あ~…順序あって…って説明するのは面倒だからいいか。
「ちょっと!?貴族様と友達って何よ!?」
カルネが私の肩を激しく揺さぶる。
「いや、少し落ち着きなさいよ。さっきパレードで王様の隣にいた子よ?今更何に驚いてんのよ。」
アトラの冷静さに救われる私。
というか、私も納得した。
「た、確かにそうだな…マリって何者なんだ?」
「えっ?…普通の女の子?」
「おいエリー…こいつは悪だ!」
「悪!!…でも、勝てる気がしない…私は…弱いっ!!…でも、…もっと強くなって…いつか、あの人のように…。」
何かエリーが過去編に入りそうな雰囲気を放っているが、入らないからね?
…女の子が剣士になる。
まぁ、何かしらの理由がない限り、普通はならないよね。
カルネは家族が皆魔力の放出が苦手で、魔法をあまり使えないため、剣術の一家として名を馳せているお家柄らしい。
…が、エリナは違う。
孤児だ。
それに、放出系魔法が一切使えないどころか、自己強化系魔法すらろくに使えないほどに魔力が少ないらしい。
それでも、彼女は剣士を、そして、ハンターを目指している。
そこには、何か特別な理由があるに違いない。
「えっと~エリナ、大丈夫?」
「あ、はい!…いつか貴女を倒せるくらい強くなってみせます。」
「なら、先ずはベロムナジュルを一人で倒せるくらいにはならないとね♪」
「「「「…え?」」」」
…ん?
「…やっぱりマリでしたか。王国軍にベロムナジュルをあそこまで出来る力があるとは思えなかったので、納得しました。」
シルヴィだけは落ち着いている。
…そう言えばこの子達、私の怪力のことも電撃のことも知らなかったんだっけ?
「ふふっ…そりゃあ特別授業になるわけだ!」
カルネは直ぐに納得してくれた。
「…せめて、迷惑かけないくらいには…強くなってみせます…。」
エリナ…随分と目標が下がったね…。
…というか、私の力を知らずに勝てなそうとか言ってたんだ…。
う~ん、戦士の感?女の感?…何でだろう?
「「あばばばばば…。」」
アトラとマルグリットは壊れた。
「えっと…やっぱりベロムナジュルって強かったの?」
「何でお前が聞くんだよ…?」
確かに何度もお腹に穴を開けられたけどさ。
「世界三大竜害の一つ、猛毒竜ベロムナジュル。」
シルヴィがボソッと呟いた。
「竜害?」
「はい、別の個体の話ですが、マリの倒したベロムナジュルも過去に幾つかの国を滅ぼしています。国とまではいかなくても、森は枯れ果て、街は滅び、水は腐る…これまでに出た被害は数知れず…です。」
「あ~…毒…私じゃなきゃ死んでたかも…。」
…雷魔法が使えるのは確かに謎だ。
だが、このチート回復魔法の方も、謎だ。
…私、謎過ぎる。
「あ~…マリは魔術師だもんな…ベロムナジュルの壊れ方を見る限りには物理攻撃にも見えるが…回復魔法…か。羨ましいな。私は出来て肉体活性までだからな。」
カルネは完全に落ち着きを取り戻して、私を羨む。
「その肉体活性って、どうやるの?」
「…ん?後で教えようか?」
「お願いっ!!」
私は鍛練を怠らないよっ!!
「お姉ちゃ~ん!!」
私達の方に向かって、幼女が駆けてくる。
「あ、あれは、クレア様!!?」
復活したアトラはまた固まった。
「お姉ちゃん!これ、使えるようになると便利だと思うの!!」
いきなり魔導書を渡された。
「…ん?ナニコレ?」
「収束魔法とか周りに被害が出ないように魔法を包む魔法とか…ほら、お姉ちゃんの魔法、強力過ぎるから…。」
「あ、あ~…ありがとう!!」
恐らく、私の『天帝の怒号』のことだよね。
クレアの気遣いに感謝する。
「も、貰うよ?ただで良いの?」
「あんな貴重な経験させて貰って…こんなに刺激を受けたのは初めてで…マリお姉ちゃんには感謝しかありません!!実は、お姉ちゃんのお陰で目が覚めたんです。才能に甘んじることなく努力して…もっともっと凄くなりたいって!」
「自分で才能とか言っちゃうところに嫌味を感じる…。」
アトラの呟きは隣にいたマルグリットと私にしか聞こえなかったようだ。
「そ、そう…頑張ってね…!」
「はい!!!」
そう言うと、クレアは無邪気に笑って去っていった。
「マリ…魔法…そんなに凄くなったの…?」
「ベロ…なんちゃらに全く効かなかったからね。その後は毎日訓練してたよ!!」
「私も、死霊魔法、凄くなったよ。…後で、狩り行く?」
「行く行く!!」
「…とても、学生の会話とは思えないな。」
「…この子達、入学してまだ半年…ですわよね?」
「私も頑張らなくちゃ!!」
「エリナは前向きですね。」
なんだかんだで私達に刺激を受けて、彼女らは大きく成長していくことになるのだが…それはまた後の話…。
「夜の街は危険がいっぱいですからね、皆で歩きましょう!」
日は暮れ、誕生祭も終わりが近付いてくる。
私達は皆で夜の王都を歩いていた。
夜でもとても明るい。
…でも、夜は迷惑な酔っ払いとか変人に遭遇しそうで怖いね。
「は~い!そこのお嬢ちゃん達~?ちょ~っといいかなぁ~??」
…いきなり出たよ不審者。
凄い変な格好をした人だ。
「…私達に何の用ですの?」
アトラは強気で前に出る。
「ふふふっ…あ、…えっとね。こほん、その女を置いていけば、命だけは許してやるぞぉ~?」
…うん、リリィさんだね。
黄色のかつら、黒のサングラス、黒いコートでわからなかったけど、リリィさんだね。
…何やってんの?
リリィさんが指を指したのは、勿論私だ。
「そんなこと、するわけ無いでしょう!!?」
エリナが庇うように前に出る。
…いや、何なのこの茶番劇。
「貴女達が束になってかかってきても、私は倒せないわよ?…あ、やべ。」
完全に素で返答していたリリィさんがいたたまれなくなったので、助け船を出すことにする。
「…リリィさん、何の用ですか?」
「へ?…マリの知り合い?」
アトラは驚いている。
いや、私だってこんな変質者を知り合いとは言いたくないんだけどね?
「…あ、バレてましたか。良い友達に恵まれましたね、マリさん。」
リリィさんはかつらを脱いだ。
「あ~…うん、どうしたの?」
わざわざ…何?
「えっとね、ほら、今日ってすっごいロマンチックじゃん?…それでね……」
ん?…あそこから覗いてるの、アイリじゃん!
皆と一緒も楽しいけど、アイリと一緒にお祭りを回るのも楽しそうだなぁ…。
一緒には…キツいかも…。
アイリの死神って話は皆も知ってたし…尾ひれついて凄いことになってたし…。
「おっ…女同士ですわよ!?」
「いや…でも…愛は性別を越えるとか言いますし…。」
「マリはモテるのですね。」
気付いたら何か盛り上がってた。
「で、どうかな?」
「……ん?何が?…ですか?」
そういえば私がアイリのことを考えている間、リリィさん、何か言ってた気がする。
「マリ、全く聞いてなかったですよ?」
シルヴィは気付いていたらしい。
「え、え~…私、何度も練習してきたのにぃ~…。」
「何の話?」
「罪づくりな人ですね…。」
「諦めないことが大切です!」
「まぁ、頑張ってくださいな。」
「私は反対ですわよ?」
…何か、皆がリリィさんを慰めている。
アトラは反対?…らしい。
「…で、何の話?」
「この期に及んでまだ言うか!」
カルネに怒られた。
「デートのお誘いだよ。」
シルヴィが教えてくれた。
絶対しないけど。
「ねぇ、皆は私がデートに行っても、ついてこないで、笑顔で送り出してくれる?…その後も陰口とか言わない?」
私は聞いてみる。
「言いませんよ?寧ろ、応援します!」
勧善懲悪なエリナがいるお陰で私達のグループは陰口が少ない。
「まぁ、愚痴は言うかも…ですわね。」
アトラはさっきから冷たい。
「アトラは…婚約者とか親に決められちゃいますし…。」
マルグリットが教えてくれた。
そっか…アトラは貴族だから…。
「何か…ごめんね?」
「ふふっ、別に少し羨ましかっただけで、…友達の恋を応援しないわけ無いでしょう?…いってらっしゃい。」
「そりゃそうだ。」
「お熱いですねぇ…。」
「後で結果を教えて下さい!」
「…むぅ。」
シルヴィはリリィさんを睨んでいる。
…でも、私がデートするのはリリィさんじゃあないんだけどね。
「ありがと、皆…それじゃ、行ってきます!!…それと、リリィさん、さようなら!!!」
「「「「「「え????」」」」」」
私はリリィさんの横を駆け抜け、迂回してアイリの元へと向かう。
直線で行ったら皆を驚かせちゃうかもだからね。
…でも、デートって話で脱け出して来ちゃったしな~…適当に話を作る?
…絶対にボロが出るよね。
…う~む、どうしよう。
誕生祭の夜は、まだまだ続く。
実は私、この小説書くときキャラ名及びに設定メモ見ながら書いてます。
私ですら誰が誰だかわからなくなるので、読み手からしたらちんぷんかんぷんですよね。
…近々キャラクター紹介入れます。




