マリは何をやっているの!?<後編>(サヤ視点)
王都に着いたよ♪
私とソヨは元々おじいちゃんの所に泊まる予定だったけど、エリーがひとりぼっちになってたから誘ったよ。
マリとミレーヌ様が立ち去った後、私達はおじいちゃん家…魔術協会の一室に向かった。
魔術協会…正式名称は長いので省略。
…ん?
……いやいや、忘れた訳じゃないからね?
………まっさかぁ~…。忘れるわけ無いじゃん!
…嘘ついてごめんね。
そんなわけで、魔術協会に向かってます。
「魔術と魔法って何が違うんだろ~ね。」
私の質問にソヨは顔をしかめた。
「そういうことはおじいちゃんに聞きなさい!」
知らないらしい。
「魔術協会…何か…緊張します。今日一日だけで、胃に穴が空きそうです…。」
エリーはやつれていた。
「大丈夫だよ、別に貴族と話す訳じゃないし、魔法があまり凄くない職員だって沢山いるから。」
「サヤ!貴族様、でしょう?誰かに聞かれてたらどうするの!!」
「へ~い。すみませ~ん。」
正直、貴族はあまり好きではない。
お金にものを言わせて私達を支配するから。
そして、結局奴等が儲かるシステムになっている。
「…インスタール家はマシな方だけどね。」
前いた所は酷かった。
隣国との密貿易で栄えた街。
おじいちゃんのお陰で私達は生きている。
私は、いや、私達はおじいちゃんが大好きだ!
「おぉ~…高い…青い…凄い!!!」
気付くとエリーはハイテンションになっていた。
「これ、ドアですよね!…開かない!?」
いや、特定の人しか入れないロックがあるから。
ソヨが持っているカードをドアの隣の認証システムにかざさないと開かないから。
…気付けよ。
「ぐぬぬぬぬ…あ!成る程、そういうことか!!」
お、気付いたか…?
「チチンプイプ…」
「それでドアが開いたことあるの!?」
出来たとしたら、かなり高位の魔術師になるけどさ。
ウィーン
「開いた!!」
「おいソヨ、エリーを騙すのはやめなさい。」
「開いた開いた開いた~!!」
「可愛いから良いじゃない♪」
「えぇ…。」
「開いた~!!!」
エリーはさっきから五月蝿いよ!
「おおお~!!何ですかこれ!?凄いです!床が動きます!!」
魔術協会は螺旋状の塔になっていて、階段は無い。
その代わり、中央に自動上昇装置があったり、廊下の三分の一が動く床になっていたりする。
「エリー、降りるよ、ここがおじいちゃんの家。」
「へ?…こんな低い所なのですか?」
まぁ、そう言うのもわかる。
自動上昇装置を使わない方が早いくらいに下層だった。
「色々と理由はあるんだけどね。高いところは寒いし、塔が倒れそうになったときとか、下から支えないとでしょ?」
「う~ん、残念です。」
「高いところは怖いわよ?」
…ソヨは高所恐怖症だからね。
「おお、ソヨ、サヤ!元気にしてたか?…学校でひとりぼっちになってないか?」
…ぎりぎり、なってないです。
「同年代はいなかったけど、何だかんだでやっていけてるよ。」
今度からはマリの学校に遊びにいこうかな~♪
「それならよい。」
おじいちゃんは嬉しそうに笑うので、私も笑顔になる。
「ソヨも診療所はどうだ?」
「経営状態も問題なし、黒字キープ。」
ソヨがキリッとなった。
おじいちゃんの気を引こうと格好つけている。
「あ、でもね、マリに手をだ…」
「ん~?…サヤ、成績のこと、言っていい?」
ソヨは私の耳元で呟く。
「ごめんなさい何でもないです。」
成績は…まぁ、ね。
「あのぅ…。」
「あ、すまんすまん。久しぶりに娘達に会えて嬉しくてな。」
おじいちゃんは私達を娘と呼ぶ。
私達は、ザラさんをおじいちゃんと呼ぶ。
血は繋がってない。
おじいちゃんは独身だった。
…このお話は、またいつか。
「この子はエリー、少し変わった子だけど、凄く…純心でいい子だから、一緒に泊まっても…良いよね?」
私の上目遣いでおじいちゃんはイチコロだ!
「も、勿論じゃ…スペースはいくらでもある!」
おじいちゃんの部屋はとっても広かった。
まぁ、とっても凄い魔術師だし、妥当だね。
「あ、あの、私、エリーと言います!!不束者ですが、迷惑かけないように頑張りますので、宜しくお願いします!!!」
「…成る程、良い子そうじゃの。」
おじいちゃんは髭を擦りながらにっこりと笑う。
「あまり畏まらなくて良いからの~。」
そう言うと魔法で私達にお茶を出してくれた。
「熱いから…」
「うわっちぃぃ!!?」
「ひゃん!?」
「ごめんエリー!?」
エリーに高温のお茶をぶっかけてしまった。
私は慌てて回復魔法をかける。
こう言うときは水魔法と風魔法と回復魔法のバランスを考えて…状態異常は平気かな?…でも、驚いてるだろうし、落ち着き効果のある香りをつけて…。
「フローラルヒーリング!!」
私だって、半年間遊んで過ごしてただけじゃないんだからね!!
「うぅ…?…痛みが…消えて…?…良い匂い~♪」
「大丈夫!?エリー!!」
「サヤ!ありがとうです!!」
感謝言われる筋合いないんだけどね。
「だっ、大丈夫…かな?」
「見事じゃ!」
「やるじゃない!…わざと?」
「そんなわけ無いでしょ!!」
アピールの為に友達を傷つけるわけないだろ!!
…でも、私がちゃんと医療魔術学校でやっていけてることは、証明出来たかな?
この日はエリーも混ぜて、おじいちゃんと沢山遊んで、沢山お話したよ。
必然的に、マリに関するお話が多くなった気がするけどね。
美味しいご飯を食べて、シャワーを浴びて、温かいお布団で寝たよ。
おじいちゃんがいるだけで、当たり前の日常がとても楽しいことに感じられた。
そして、誕生祭当日。
「またこれ着るの~!?」
「折角の国王陛下のお祭りだからな、それに、とても似合っておったぞ?」
「そんなこと言って~。」
おじいちゃんは大抵可愛いとか似合ってるとか言うから宛にならない。
「うふふ、どうですか、ソヨさん!」
「とってもお似合いですよ!」
ソヨとエリーはノリノリだ。
仕方ないから、私も正装+化粧をした。
さて、午前の目玉、パレード!!
「うわぁ~美味しそうなものが沢山売ってます~!」
「ね~!!」
エリーはパレードより露店らしい。
まぁ、私もだけどね。
「二人とも、ちゃんとパレードを…あら?」
ソヨは私の肩を叩く。
ソヨの指の先には、巨大な紫色のドラゴンが見える。
パレードの進行に合わせて、ドラゴンの影が大きくなっていく。
ベロムナジュルという毒竜だ。
…表向きは兵士達が倒したことになっている。
「…あれ、間違いなくマリさんの仕業ですよね?」
エリーですら勘づいた。
というか、マリ本人が言ってた気がするけどね。
…だが、それくらいに、常人には不可能な倒し方をされていた。
「だろうね。頭が…崩壊してるし。」
案の定民衆は騒然とし、歓喜する。
…マリはいくら貰ったのだろうか。
「国王陛下を一目見たら帰りましょうか。」
ソヨの言葉に私達は賛同する。
因みに驚いて声も出ていないが、おじいちゃんもいるよ?
「あ、国王の馬車だ!!」
しかし、国王の馬車が近付くに連れて、私達の表情は変わっていく。
…何してんの?マリ…。
明らかにマリが乗っている。
国王の隣に。
仮面で顔は隠れていて、服装は違うものの、あれはマリだ。
「…マリ、さん…?」
ソヨも気付いたようだ。
「…あの子は何者なんじゃ?」
おじいちゃんも気付いたらしい。
…いや、気付くよ?
そこはかとなく感じるんだよ。
身長、体型、そしてひとつひとつの動作、完全にマリだ。
…いや、ほんと、何してんの!!?
「おおおおぉぉ~!!!」
エリーは何故かはしゃいでいた。
エリー意外の私達は、身体の硬直が解けるまで動けなかった。
「…何でマリが…。」
「これは、問い詰めるべき案件ですね…拷問とかいかがでしょうか?」
「ソヨの変態…。」
「な!?」
「二人とも、何を話しているのです?」
「何でもないよ…でも、まさか、マリがいるとはね…。」
「…?マリ、何処かにいたのですか!?…って、そんなことより!!私がマリにあげた仮面!!あれ、王様の隣にいた人が付けてましたよ!!!もしかして、王族に人気あるのですかね!?流行来ますかねぇ!!?」
あんな変な仮面が流行するわけ…ってそこじゃないわ!
あの仮面、エリーがあげたんだ。
そして、それでも尚気付かないエリーは流石だよ…。
「流行るかもしれないわね♪」
ソヨはエリーに教えない。
…私は、酷いお姉ちゃんをもったようだ。




