マリは何をやっているの!?<前編>(サヤ視点)
サヤです。
私の友達にマリという女の子がいます。
マリは遠くから来たらしいです。
マリは貴族というのがどういうものかを知っています。世間知らずに見えても、ある程度は知っていて、理解するのもかなり早いんです。
…なのに、貴族と…ミレーヌ様と…普通に話します。
気持ち程度に様付けしていますが、敬意は一切無い気がします。
帰り道、私と、マリと、エリーは、ミレーヌ様に遭遇しました。
すると、ミレーヌ様は変な事を言い出したのです!
…トモダチになる?
……ヨビステ?
どこかの国の挨拶か何かでしょうか?
「あっ、ヨビステ~!」
「ヨビステ~。」
とでも挨拶する国があるのでしょうか!!?
エリーは即座に泡を吹いて倒れ、現実から逃避しました。
私はザラおじいちゃんの知り合いに貴族も沢山いる…という話は聞いていたので、とっても強いらしいマリなら…と思い、気は失いませんでした。
…まさか、私も含まれているとは。
そして、ミレーヌ様はインスタール家の馬車に乗るかを聞いてきます。
マリさんは勿論、断…らずに乗る宣言をします。
そして、勝手に私達も含まれてしまいました。
ここからの記憶はございません。
私は、気付いたら気絶していて、マリの回復魔法で蘇りました。
気絶している間、大きな河の向こうにおばあちゃんを見た気がしました。
そういえば、私の知らない間にマリはランクBになっていて、…遂にはAになったらしいです。
凄いですね。
何で私のテンションがいつもより遥かに低いかって?
…これからミレーヌ様…インスタール家に行って、貴族様の個人馬車に乗らせて頂くからですよ!
「ソヨ?…何かムズムズする。」
「大丈夫、似合ってるから。…我慢しなさい。」
でも…
「この靴、歩きにくいよ?」
よろよろして貴族様に迷惑をかけたら大変だ。
「でも、これが正装よ?」
ソヨもよろよろとしていた。
「でも、サヤが化粧出来たなんてねぇ…。」
ソヨに化粧のアドバイスもした。
「医療魔術学校、大人でお金がある女性が多いからね…話合わせたりするためにもね。…というか、人形にされてた…。」
「サヤが弄られ役!?何それ見てみたいわぁ!」
「絶対に嫌!」
私は対等な付き合いのが好きだ。
少しテンションがあがってきたところで、マリがやって来た。
「おお~可愛い!二人とも似合ってるよ!!」
マリにそう言われると落ち着く。
勿論、マリの正装姿も…………………ん?
「あのぅ…マリさん?」
固まった私の代わりに、ソヨが尋ねた。
「ん?何?」
何?じゃ、無いでしょう!!
「服、それ、普段着…だよね?」
正装のせの字もありゃしない。
「ん?そうだけど?…私は要らないでしょ?」
は?…何を言っているの?
「貴族様の馬車に乗るんだよ!?」
私は訴えるが…
「そのくらいで怒ったら友達じゃないよ。」
世間知らずにも程がないかい?
「マリさん、お化粧とかどうですかね?」
ソヨは直ぐに切り替えて、保身に入った。
「わ、私も、ど、どう?」
ポージングしてみる。
「スッゴく可愛いよ!」
私達は緊張して何度もマリに同じことを聞いたと思う。
そして、エリーがやって来た。
やはり、マリに突っ込みを入れた。
だが、マリは軽く受け流す。
エリーはちゃんとした格好だった。
…エリーの方が、常識はあるらしい。
私達はインスタール家に行った…と思う。
おっきかった…。多分。
緊張で殆どの会話をマリに任せてしまった気がする。
馬車の中で、ミレーヌ様のルックスの話が始まった。
マリは当たり前のようにミレーヌ様をからかう。
私ソヨ、勿論エリーも、そんなこと出来る筈無かった。
…貴族様と友達とか…畏れ多すぎて無理だよ。
だが、話はマリのルックスへと移った。
「マリは駄目なパーツが無いわよね。」
ミレーヌ様はじっとマリを見つめている。
「ちょっと、…そんなにジロジロ見ないでよ。」
マリの照れた姿は、重犯罪級だった。
この時初めて、マリを襲ったソヨの気持ちが少しわかってしまった。
エリーも頬を赤くしてマリをじっと見つめている。
「ちょっと!?やめてよ!!」
ヤバい、可愛すぎる!!
「これでメイクしてないとか…ずるいですよ!」
ソヨが訴える。
「私ですらメイクしてるのに…でも、私が欲しいのはかっこよさや可愛さではなく、妖艶さですので、許してあげます。」
ミレーヌ様はふてくされている。
「可愛いとかっこいいと美しいの黄金比だよね。」
私は喋った後、生意気だったかな、と緊張する。
「そうですわね♪」
「そうですね!!」
「えぇ!!」
三人の声が重なった。
私達は固まったが、ミレーヌ様は気にしない。
「ふふふっ♪皆同じ意見ですわね!」
…どちらかというと、嬉しそう?
「皆さんは、マリの何処が欲しいですか?…全部は駄目ですよ!」
「何言ってんのよミレーヌ!!」
マリの顔が熟してきたね!
「私は…取り敢えず、胸ですかね。」
ソヨの返答に、
「あ、私も!譲らないですわよ?」
ミレーヌ様が宣戦布告する。
「あ、…」
「私を奪い合わないで!!」
ソヨが譲ると言う前に、マリが叫んだ。
「サヤは何処が欲しいのです?」
ミレーヌ様は私にも聞いてくる。
「えっと…髪、かな?」
綺麗で艶やかな黒髪。
「私の髪、直ぐに痛むんです。」
「それはサヤが手入れを怠っているからです!」
ソヨに痛いところを突かれた。
「女の子何ですから、ちゃんとしてください!」
エリーにまで諭される。
「髪は女の命ですわよ。」
ミレーヌ様にまで…。
「マリはどのような手入れを?」
ミレーヌ様の問いに、
「か、回復魔法で…。」
マリは完熟した顔で答える。
「マリさんの回復魔法、おかしいんです!同じ魔法なのに、体力も傷も服も状態異常も全部治るんですよ!?」
そんな夢の魔法があるなら、医療魔術とか要らなくね?
「ほ、ほら…心までは…治せないから…。」
シーン…。
「うわあぁぁぁ~!!!」
マリは熟しすぎて、落ちた。
「ご、ごめんって…。」
「す、素敵でしたわよ?」
「すみません…。」
「感動しました!!」
エリーだけ、何か違かった。
「エリーは何処ですか?」
ミレーヌの問いに、エリーは考え込んだ。
そして…
「心…ですかね…?」
「「「あっ…。」」」
その手があったか~!!
「さ、最近、マリがなんだか冷たい気がするんです。」
…ん?
何か想像と違かった。
でも、
「マリ酷~い!」
取り敢えず煽ってみた。
「え!?そんなこと無いって!」
マリは狼狽する。
「エリーはマリにどうして欲しいのですか?」
ソヨの問いに、悪ノリの空気を感じ取ったエリーは、
「キス…ですかね?」
的確な答えを言う。
「あ、私も、欲しい!」
私ものるよ!!
こういうの大好き♪
「勿論、私もです!」
まぁ、ソヨはのるよね。
「私も欲しいですわっ!」
ミレーヌ様までのってきた!
「で、では、マリに教わったジャンケンというゲームでキス順を決めましょう!!」
貴族がいるということも忘れ、私達は盛り上がる。
「や、やめて~!!?」
マリを弄っているうちに、ミレーヌ様と私達は、とっても仲良くなれたのでした。




