不気味で可愛い不審者、お城に泊まる。
「着いた~♪」
「着きましたね!!」
「お…おおきいです…。」
初王都はエリーと私だけらしい。
「それで、宿はどうする気?もう殆どは埋まってるかもだけど…?」
インスタール家の方々は泊まる所があるらしい。
「私とサヤはおじいさま…ザラの所に泊まる予定です。」
ソヨさんとサヤはザラさんの所。
「私は王様が用意してくれるって言ってた。」
私は大丈夫だ。
…私は。
「…これって、私…ひとりぼっちなやつだ…。」
エリーだけ何一つ予定が決まってなかった。
「エリーは私達と一緒に来なよ♪」
サヤがエリーを誘う。
「それとも一緒に王様の所に行く?」
私も一応誘ってみるが…
「絶対に嫌です!!!」
断られてしまった。
何か傷付くなぁ…。
「じゃあ、私は王様んとこ行ってくるね~♪」
THE、王宮って感じがする大きな建物が中心にそびえ立っていた。
「マリ?…まさかその格好で行くのですか…?」
心配してくれたのはまさかのミレーヌだ。
「マリは常識を知らないから大丈夫ですよ、きっと。」
エリーは何かを悟ったように語った。
…でも、何か心外だなぁ。
王宮に入る格好なんて学校で教わってないもの…。
ん?…格好…学校…ふふふ…。
王国語では駄洒落にならないのが悔しいところだ。
「そんじゃ、また後で~!」
皆に別れを告げて、いざ、王宮へ向かう。
王宮…王城…?
お城だから王城?
うぅ…わかんない。
日本語辞書がないのは辛いね。
取り敢えずお城の前に来た。
門番に追い返された。
…あれ?何でだ?
「あ、仮面か!!」
私は着替えられる場所を探す。
…無い!?
これはピンチだ。
私は急いで王都を出ようと走り出す。
困ったときは森に行けば大抵何とかなるものだ。
「…マリ?」
聞き慣れた言葉が耳をかすめた。
「え…?」
今の声は…
「マリ!!」
「アイリ!!」
そういえば、王都に居るって言ってたね。
「久しぶり~元気だった?」
「…何か、リリィって人がしょっちゅう構ってくるようになった。マリの余計なお節介のせいで…。」
アイリは面倒臭そうな顔をしているが、その顔にはちゃんと笑みがあった。
それに、やつれてもいないし、大丈夫みたいだね!
「うん、元気そうで何より!」
リリィさんは厄介な敵だけど、頼もしい見方も出来…アイリも寝てる時を襲ってきたんだっけ…。
「マリは忙しそうだったけど、どうしたの?」
そうだった!
「着替えられる場所、無い?」
「ん~…少し遠いけど…私ん家来る?」
おぉ…近隣の森よりかは遥かに近いよ!
「うん、早く着替えてお城行かないと!!」
アイリになら見られても口が固そうなので大丈夫だろう。
「お城?…何かあったの?」
「お金貰うの。」
「…へぇ。…奢ってね♪」
「少しだけね。」
アイリの理解能力の高さには驚く。
いや、受け流す能力?なのかな…?
私達はアイリの家に向かう。
中心街から離れるにつれて人通りも少なくなる。
もっとも、アイリがいるためか、人が道を開けてくれる感じがした。
「リボン?…それに、可愛いクッション!!」
質素で何もない家には場違いな可愛い小物が幾つかあった。
「リリィが…女の子なんだからって…。」
リリィさんの気遣いらしい。
「リリィさんは何処にいるの?」
会いたくは…あまりないが。
綺麗で優しい…良い人ではあるんだけどね。
「多分教会。…あの人、今は教会で働いてる。」
「へ~…修道院入っていただけのことはあるね。」
あの人は神様を信じているのかな?
「…何?その格好…。」
着替え終わると、アイリにドン引きされた。
「今の私はキララなの☆」
「お~…可愛い~…。」
アイリの冷めた反応が、今だけは突き刺さる。
でも、可愛いと言ってくれた!
「に、似合ってる?」
私は鏡を見てみるが、完全な不審者だ。
「似合うも似合わないも…鏡を見てどう思った?」
「不審者だな~と…。」
「うん、不気味で可愛い不審者だね。」
そこは可愛い不審者で良いじゃん!!
不気味要らないから!!
「アイリ、誕生祭終わったらまた遊ぼうね♪」
「うん…待ってる…。」
アイリはニコッと笑った。
アイリが笑うとクールから一気にキュートに変わる。
その笑顔が私に向いている…その事実だけで顔が真っ赤になっていた。
…私が男だったら多分気絶していた。
女の子の笑顔で顔を赤らめる私…異世界来てからおかしくなったのかな?
さて、不審者姿はバレてなくても恥ずかしいものなので、お城の前まで道をへこませない程度に走った。
「入っても良いですか?」
私の裏声は完璧な筈だ。
私がよくスマホで隠れて見ていたアニメの幼女キャラの声を真似している。
「ど、どうぞっ…。」
門番はとても戸惑いつつも、入れてくれた。
お城に入ると、クレアが待っていた。
「お姉ちゃん!お久しぶり!…私が案内するね!」
「今の私はキララだからね!…間違ってもマリって呼ばないでね?」
私がそういうと、キララは頷いてくれた。
「裏声上手だね!」
「ありがとう!」
もう完璧だ!
「そういえば、クレアは何でお城にいるの?」
こんな小さな女の子が…謎だ。
「私、魔法兵士達の魔法の指南役やってます!代わりに、お金と棲むところ…お城の一室、貰いました。」
幼女に指導される良い年した大人達…。
何か、見てみたいね!
「この部屋をお使い下さい。…えっと、荷物を置いたら…王様の所に案内します。」
完全にメモを読みながら、クレアは案内してくれた。
部屋に入ってみる。
金ぴかだ。
荷物を置いて、すぐに出た。
「お気に召しませんでしたか?」
いや…何か…落ち着かないというか…汚せない?…というか…緊張する…というか…?
「もっと庶民的な部屋は無いの?」
「えっと…自由にオーダー出来ますよ?マ…キララさんの名前で欲しいものと要らないものを書いて、あそこの箱に入れておけばすぐです!」
…それも、何か嫌だなぁ。
「だ、大丈夫!!…早く王様の所に行こう!!」
一日くらい、大丈夫な筈だ!
「ふふふっ…お姉ちゃん、昔の私みたいですね。私も魔法の才能こそありましたが…ただの庶民で、初めてここに来たときは目とか頭がクラクラしちゃって…。」
「眩しいよね。」
「はい、眩しいです。」
壁もベッドも皆光っているので、少し目が痛くなった。
「失礼します。」
中央の大きな扉の先に、国王様がいた。
「おう…来たか、マ…」
「キララです。」
「う…そうだったな、キララ、ベロムナジュル、有り難く使わせて貰うぞ?それで、パレードの件なんだが…」
凄く気になる事がある。
「すみません、ベロなんちゃらって…保存状態大丈夫なのですか?」
もう2週間くらい経ってない?
「お姉ちゃん、大丈夫!私が開発した魔法があればね!」
クレアは胸を張る。
…あれ?…ミレーヌより胸ある!?
…流石に錯覚だよね。
「クレアの保存魔法のお陰で、随分とこの国は豊かになったものだ。」
あぁ、他の国には秘密にしてる感じ?
…それにしても、
「クレア、凄いね!」
「ありがと!お姉ちゃんも魔法見せてよね!!」
私の魔法は流石に真似できないだろう。
なんせ魔力自体の性質が違うのだから。
…出来ちゃいそうで怖いね。
「えっと…話を戻すぞ?午前にあるパレードに、お前達は出てもらう。そしてマリは…あっ…」
「キ☆ラ☆ラです!」
あっ…じゃないよ!
「キララは、ワシと妻と一緒に馬車に乗ってもらう。クレアは…」
「王子様とケティ様をお守りすればよろしいのですね!」
「ああ。…午後はどうする?パーティの方は。」
「わっ…私はいいです…友達との約束があるので。」
…ちゃんと覚えているさ!
「私は参加します!美味しいお料理食べたいので!」
「…わかった、何かあったら適当に人を見つけて聞いてくれ。キララの事は皆に伝えておいた。」
「…キララ、ですよね?」
「あぁ、キララ、だ!」
…ふぅ、よかった。
マリで伝わってたら死んでた。
恥ずかし過ぎて。
そのくらいダサい格好をしている自覚がある。
というか誰かさんがくれた仮面が個性的過ぎて…でも何か魅力があるせいで別のにする気も起きなくて…。
「お姉ちゃん、中庭に行きましょう!魔法を見せて下さいな♪」
あぁ、約束したっけ。
「わかったよ~。」
私は幼女に手を引かれ、中庭へと向かうのだった。
少しキツいので、2日に1回の更新にします。
…多分。




