そうだ、王都に行こう。
私はソヨさんの診療所にいた。
ここで集合してから、インスタール邸に乗り込むらしい。
「マ、マリ…私、変な格好してない…?」
「マ、マリさん…どう…ですか…?」
ドレス姿のサヤとソヨさんはガチガチに緊張しながら何度も私に聞いてくる。
…これで6度目だ。
「だ、大丈夫だって…。」
私がそういうのには理由があった…。
「遅くなりましたぁ…まだ時間は大丈夫ですよね?」
エリーもやって来た。
ローテンション&小声だ。
「大丈夫です…。」
答えるソヨさんも小声だ。
「…凄く似合ってるよ!」
サヤもいつもの10分の1くらいの声だった。
「………マリ!!?」
エリーは私を見るなり盛大に驚いた。
そう、三人は精一杯のおめかしをしていて、綺麗なドレスを着ていた。
エリーはセンスがアレなので急遽バルさんのお古を貰ったらしい。
……私?
すっぴん&普段着だけど?
すっぴんという言い方は何か悪いよね。
ノーメイクと言おうか。
Tシャツにホットパンツのラフな格好だ。
「マ、マリ…。」
「え~?王都で友達と合う約束してるし、王様がドレス貸してくれるって言ってたし…。」
「マ、マリは何をしたの?」
サヤが聞いてくる。
「こ、この年の女の子は色々とあるのよ…。」
何とか誤魔化せた…筈だ。
「さて、行こうか?」
私は皆に合図を出す。
「よくその格好で言えますね…。」
ソヨさんも私にドン引きしていた。
「マリの世間知らずには呆れます…。」
エリーにまで呆れられたが、私は間違った事はしていないと思うんだけど…。
「お父様!来ましたわ!!」
ミレーヌのはしゃぐ声でインスタール家の方々やお仕えしている方々が一斉にこちらを向く。
ソヨさんはお姉さんらしく、サヤとエリーを庇った。
いや、何がお姉さんらしいのかはよくわからないけど、何かそんな感じがした。
「レ、レコン様…こ、この度は…」
あぁ、そうだ!れんこん…レコンさんだ!!
「堅苦しい挨拶はよい、娘と仲良くしてくれているようで何よりだよ。迷惑はかけていないかい?」
恐らく全員が少なからず迷惑に思っているが、口に出せる訳がない。
「い、いえ…。」
ソヨさんはやはり否定した。
「そうか。…それで、君がマリさんだね。…ふむ、信じられんな。…ギルドカードを見せてくれ。」
まぁ、信じられるわけないわな…。
特に身体的特徴もない普通の女の子だもの。
私はギルドカードを見せる。
「ふむ…。ありがとう。」
レコンさんは顎髭を撫でながらギルドカードを見つめ、返してきた。
「レコン様、自分は、どう見ても実力者だと思います。…普通の女の子はこんな格好で貴族の馬車に乗ろうとなどしません!」
インスタール家専属の御者らしき人が控え目に主張した。
…反論して良いかな?
「こ、この服お気に入りなんですよね!こ、故郷の…服屋の…。」
日本で買った服だった。
「…確かに、普通は貴族に対してこんな主張しないわな。しかも、怯えるのではなくあくまで言い訳を考える為の挙動不審さ…。」
ヤバい…メッチャ恥ずい…。
挙動不審を考察しないで下さい…。
「そろそろお話しは終わりましたか?」
ミレーヌは我慢できずに馬車に乗り込み、顔を出してこちらを見ていた。
「ああ、出発しようか。」
レコンさんの合図で全員が動き出した。
レコンさん達は前の馬車。
ミレーヌと私達4人は後ろの馬車だ。
「ミレーヌ様、私まで乗せていただき…」
「堅苦しいのは禁止ですわ!長旅になりますのよ?もっと楽しまなくては肩が凝ってしょうがないですわ~!!」
ミレーヌは叫ぶが…正直無茶過ぎる。
「は、はい。」
ソヨさんは何とか返事はした。
「そういえば、貴族の馬車って盗賊に襲われたりしないの?」
私は敢えてフレンドリーな感じでミレーヌと話す。
「されるわけないでしょう?…奴等が狙うのは商人や若い女だけよ。貴族を敵に回す阿呆なんていないわ。」
私が阿呆と言われた気分だ。
「マリがいれば何が起きても大丈夫ですわよね?」
…何が起きても?
無理に決まってるわ!
「戦闘なら…ね。災害は無理だよ?」
「魔術師ですのに?」
ぐっ…痛いところを…。
「魔術師っていっても自然災害を止められるのなんて、一握りの最高位魔術師だけですよ!」
ザラさんとかならあるいは…?
「…というか、私は災害を発生させる側かも?」
雷魔法使いだし…。
「あはははっ、そうかもですわね!」
ミレーヌは爆笑している。
もう少し気を使ってくれても…
…貴族が平民に気を使う方がおかしいか。
話題は何故かルックスの方に移る。
「ミレーヌはリーゼさんを目指してるんだっけ?なら、身長はある程度高くないと嘗められるよ?あと、胸も大事かもね!」
ミレーヌはムッとして無い胸を張る。
「わっ、私もいつかはあんな風に…。」
インスタール家はレコンさんは普通でその奥さんは小さい、お兄さん達はやや高めだったが、全体的に見ると身長は低めだった。
「胸を大きくするためのコツとかって何かあるの?」
私の記憶には…
たんぱく質を摂取する
生キャベツを食べる
よく寝る
胸を揉まれる
恋をする
…の5つがあるが、貴族の女の子に言えるものがない。
「とっ、取り敢えず…好き嫌いしないでよく食べてよく寝ること…かな?…エリーは何かある?」
「わっ!?私ですか!!?…私は、…沢山ご飯を食べられるようになってから一気に大きくなりましたけど…。」
…られるようになってから…ってところに私は、引っ掛かるが、皆は気にしない。
これが当たり前なのだろう。
「私も結構大食いな方なのに…あまり参考になりませんわね。」
「すっ、すみません!!」
エリーは土下座に近いレベルで頭を下げる。
「いやいや、ありがとうですわ!…お友達になったのですから、もう少し落ち着いて下さらないかしら…。」
「エリーはいつもこんな感じですよ~。」
こんな感じでは無いけど、雰囲気にね。
「一応、医学的には肉や魚が効果的と言われています。」
ソヨさんが…貧乳のソヨさんが口を開く。
「…説得力に欠けますわね。」
「うっ…。」
ソヨさんは倒れた。
「…えっと、一応、他にも大豆とかが効果的と言われていますね。いずれもたんぱく質が多く含まれている食べ物です。」
私は補足する。
…そして、診療所を経営しているような人に補足してしまったことを後悔した。
「マリさん?…たんぱく質とは??」
「あ…いや~…そのぉ…この話はお仕舞い!!」
「何でですか!?」
「いや…長くなるし…つまらないし…。」
研究者ズに囲まれた悪夢の(夢見れて無いけど)夜が再び起こることになってしまう。
「後で聞かせて下さいね?」
……嫌だよ。
…なんて、言えない。
「わかりました……さて、楽しい話をしましょう!!」
その後、何故か私のルックス…というか身体全身を部分的に私以外の4人が評価し出した。
…そして、王都に着くときにはエリーもサヤもソヨさんも隔たりなくミレーヌの接する事が出来るようになっていたのだった。
…私?…ただただ恥ずかしかったよ!?
遅くなりましたが、改稿しました。
次話はおやつを食べるくらいの時間に更新します。
そういえば、もう50話目ですね。
切り上げられる見込みがないのでもう少しは続くかもです。
気が向いたらたまに見に来て下さると嬉しいのです。




