デストロイヤー☆キララVS国王様
「とおっ!!キララ、参☆上」
ふっ、決まったな。
「あ、マリさん来ましたか。」
え!!?…何でバレたの!?
…いや、デタラメ言ってるだけの筈。
「わっ、私はキララだよ☆」
「いや、そういうのいいですから…国王陛下の前ですし…。」
国王!!?…何で!?
「お主がマリか…本当にお主がベロムナジュルを倒したのか…?」
やっぱりそう思う?…って、
「私が倒しましたけど、私は格闘家のキララです!マリとはお友達ですが、別人です!」
「そういう設定なのか?…まぁ、何でもよいが。…国王の前でその格好は流石に不敬だと思うが…ワシが言うのもなんだが…。」
「友達に貰ったお面と、安物のマントですよ?馬鹿にしないで下さい!」
私は先程の老害のせいで少し苛ついていたため、よく身分差を理解出来ていなかった。
「安物て…まぁ、お陰でお主がベロムナジュルを倒したことがよ~くわかった。…お主ら、少し情けないぞ?」
「すみませんでした!!!」
…兵士達や隊長達は私が不敬でも捕まえようとはしない。というより足がすくんで動けないのかな?
「…取り敢えず、この格好でいるのはあまりよろしくなさそうですので、マリを呼んできます。」
私は大慌てで遠くへ飛び、仮面とマントを脱いで飛び戻る。
「…で、どのくらいで買い取らせて貰えるんだ?キララ。」
「私はマリです!!」
「…面倒だなぁ。ここにいる皆、お主の変装には気付いておるぞ?」
…は?そんなわけ無い。
「…へ?嘘…ですよね。騙されませんよ?」
そういうと周囲から大量の溜め息が溢れだす。
「…せめて、声色だけでも変えた方が良いぞ!?」
…しまったぁぁぁぁ!!!
そこでバレたかぁ!!!!
「は、はい!!…絶対に洩らさないで下さいね、皆さん!!」
私は笑顔で兵士達に脅迫をする。
ひいいぃぃ~!!!
兵士達は潔く了承してくれた。
流石王国軍、聞き分けがいいね!
「さてと、買い取りの件なんだが、5億Gでどうだ?」
…ん?
……億!?
5億!?
「そ、それは流石に…」
貰いすぎだ…。
「国王様!!!いくらなんでも少なすぎです!」
先程生物基礎に惨敗した、若い女性の研究者が怒るように叫んだ。
「わ、わかっておる、10億なら…」
じゅっ、10億!!?
「少なすぎです!」
…へ?
「…最高でも32億が限度だぞ。」
ふぇ?
「御言葉ですが国王様、それは大きさだけでの話です。…背中の棘、その他毒のある部位が綺麗に残っている、世界で唯一のサンプルです。…最低でも50億、ざっと80億が妥当かと…。」
眼鏡のいかにもエリートそうな女性研究者が一歩前に出て主張した。
…私にはよくわからないや。
学者や研究者って難しい言葉を使うんだね。
私は現実逃避を始めた。
「…!!……マリ!!!」
はっ、とする。
「す、すみません、ボーッとしてました。」
「当事者のお主が話を聞いていなくてどうする!…ワシらの話だと、出費が痛いが、96億出すことになったが、他意はないか?」
…ん?
…どうしてそうなった?
「…あります………ありますあります、ありまくりです!」
貰いすぎだ。
通貨価値は日本とほぼ同じ。
96億なんて頭がおかしくなる。
人生狂うよ…。
こうして、私の決死の値下げ交渉が始まった。
「…足りぬか?」
「い、いえいえ!!…ご、500万くらい貰えれば…。」
「じょ、冗談じゃない!それでは労力に見合わんだろう!!」
いえ、多すぎです。
「そうですよ!身体に二回も穴が開いているんでしょう!」
「お姉ちゃん…流石にそれは貰わなすぎだよ?」
クレアまで…貰わなすぎって何よ!?
…ってか何で皆お金あげたい派なの!?
そんなにすごいことなの?
「お、お金の貰い過ぎは人生壊すし…そんなに使わないし…。」
「な、ならせめて1億貰ってくれ!!」
多すぎだって!
「ろ、600万!!」
「きゅ、9000万でどうだ!!」
だ、か、ら~!!
「じゃあ、1000万貰いますから、私の変装のことは秘密にしてください!それと、あまり目立ちたくはないので、私の名前を出さないこと。出すとしたらキララで。…あと、有事の際には軽く後ろ楯になっていただければ。」
これでどうだ!!
「…変装は秘密にはするが、お主のことを知っている人間にはバレると思うぞ?……それと、後ろ楯というのは、流石に……いや、ふふふっ…良いかもしれんな。…別に何かを故意に起こそうとはしていないのであろう?」
何を企んでいるのかは知らないが、交渉成立かな?
「そんなことしないよ。…私、少し世間知らずなとこがあるから、フォローが欲しいなって。一応、インスタール家は味方になってくれてるけど…それだけじゃ不安だから。」
この言い方だと、レコン様やミレーヌ様に失礼だったかな?
「…だが、ワシからも二つ条件がある!」
え?面倒なのは嫌ですよ?
「一つは、ベロムナジュルを我が王国軍が倒したものとして、ワシの誕生祭のパレードの目玉とすること、二つ目は、お主に政事以外の全てに王族権限を与える代わりに、キララとして今回の誕生祭の時、ワシの隣に立ち、そして、王国の後ろ楯として使わせてはくれぬか?」
…二つ目、好き勝手して良いから王国の最終兵器になれってことだよね?
「私、好き勝手しちゃうかもしれないよ?…それに、呼ばれても行かないかもしれないし、戦争になったら逃げるかもしれないよ?」
使われるのは嫌だ。
「いや、影をちらつかせるだけでいい。それと、出来ればワシの息子娘達と仲良くしてくれるだけで…。お主がコロシアムで猛獣達を圧殺する予定なのは知っておる。」
圧殺ってなにさ。
それに、下心丸見えだ。
他国への牽制に私を使おうというのだ。
…友達に危害が及ぶ可能性あるよね?
「やだ!友達が危険な目にあうかもしれないし…。」
「変装しているのにか?」
あ…。
「なら、いいけど。」
よし、帰ったら発声練習かな?
「さて。もう夜遅い。今日はこの街に泊まって、明日、王都に帰るか。マリ、誕生祭の前日には来てくれ、泊まる所は用意する。」
「う、うん!」
誕生祭っていつだっけ?
…まぁ、いいや。
私も、街に泊まることにした。
というか、なった。
研究者ズとクレアに捕まったのだ。
そんなわけで、私は朝方まで生物基礎の知識を捻り出して研究者達と語り合ったのであった。
…また夜になります( ノ;_ _)ノ




