生物基礎で一生食べていけるレベル
「えっと…倒しちゃ駄目だった感じですか…?」
冷静に観察してみる。
兵士は…6、70人くらいかな?
…これは間違いなく討伐隊だろうね。
「あ、いえ…その…何と言うか…お一人ですか?」
かなり間が空いた後、恐らく隊長さんであろう男性がオドオドしながら声をかけてきた。
「え、まあ…そうですけど…。」
いや、私の質問に答えてよ。
「貴方達は何なの?説明してよ。」
私に怯えている気がしたので、脅迫じみた口調で質問してみた。
「あ、失礼しました。我々は王国軍、第一から第五部隊で、私はこの度総隊長をさせて頂いている、第一部隊隊長、ロドウィンです。最大級のベロムナジュルが現れたと聞き、最大戦力で討伐に来たのですが…、貴方は…?」
ベロ…なんたら。
恐らくこの紫のドラゴンだね。
…にしてもさぁ?
また出たよ?最大級…。
何かいやだね、変に目立つし…。
「私はマリ、…最近ハンターになった新米なんだけど…ランクはBで…えっと、依頼達成回数は一回、依頼達成率は100%…あ、勿の論で魔術師ね♪」
私は自分のギルドカードを読み上げた。
格闘家ランクAなんて見せられない!!
「さっきベロムナジュル殴り殺していたけど…。」
ロドウィンさんの隣にいる女の子が不思議そうに痛いところを突いてきた。
「ま、まぁ?コイツ強かったし?魔法効かなかったから……じゃ、なくて、えっとね…あ~…。」
真っ直ぐな瞳を向けられてるせいで冷静に話せない。
…というか、これ、アウトじゃね?
「…ま、まぁ、人には色々と事情がありますし、我々に戦死者が出なかっただけでも、よかったですよ。」
ロドウィンさんが女の子を宥めようとするが…
「でも、でも、このお姉さんのパンチ、凄かったよ?魔法も凄いの!?」
うっわ~…瞳キラキラ…何この娘、好奇心の化身?
「勿論、魔法も凄いわよ?…条件が悪いのと…まだ少し練習中だから今回は殴ったけど…。」
学校で気が付いたこと、雨の日の私は強い。
電気魔法が格段と扱いやすく、威力もあがった。
…それで、ベロなんちゃらを倒せるかっていったら無理だけど。
「おぉ~!!見せてください!!!」
「こら、クレア、すみません…。」
クレアちゃん、多分十歳前後かな?
「特殊な魔法だから、ここでは見せられないけど…誰にも伝えないでくれるなら、後で見せてあげるよ!」
「本当!?…嬉しい!!!」
…それまでには凄い電撃使えるようにならないとね。
「クレアは魔法の天才でしてな…もしかしたら、ベロムナジュルの弱点が何かわかるかと連れてきてみたのですが…。」
魔法の天才…わかる気がする。
好奇心は魔法を上達させるからね!
中二病かもしれない私が言うのだから間違いない!
…あれ?私の魔術師敵性結構ある?
「…で?ドラゴンが倒れていた今、貴方達はどうしたいの?」
本題だ。
「国王様はお誕生会のパレードで、国内外へ王国軍の力を見せつけたいと仰っておられましたが…その…どうすれば…?」
総隊長も他の隊長?らしき人も焦っている。
「私が聞きたいよ!!…報酬出るならあげるけど。流石に無償で提供は、王様相手でもキツいかな…。名誉とかいらないし。」
「「「貰えるのですか!!?」」」
「へぇ!?…いや…じゃあ、買い取ってよ…。」
「伝令係、至急国王様に連絡を!!!マリさん、是非お願いします!!」
「あ…はい。」
何なんだコイツら…。
「それにしても、一人でベロムナジュル討伐だなんて聞いたこともありませんよ…。」
総隊長…ロドウィン?さんはドラゴンを運ぶ準備をしていた。
リビナード先生も使っていた浮遊魔法と私も使える軽量化魔法を使うみたいだ。
「うん、何回かお腹に穴空いたし…毒針?みたいなの飛ばしてくるし…あれで身体痺れるし…。」
痛覚なくせる魔法でも覚えないと、いくら回復魔法があるとはいえ、気絶して死ぬかもしれない…。
「…!?……!!?」
兵士…と、供にいた学者や研究者達が妙な反応をする。
「どしたの?」
私は訝しげに訊ねる。
学者達は困惑している。
「お腹に穴が空いた…毒針…どうやって直したの?」
突然クレアちゃんが聞いてきた。
「えっとね、治れ~って回復魔法をかけたら治ったよ?」
「ふぇ!?…どんな回復魔法なんですか!!?」
「え?…普通の…緑色のアレだよ?」
「普通の回復魔法で状態異常は治りませんし、あの猛毒針は一度当たったら瀕死、回復して二度目当たったら即死なんですよ!?」
「そうなの!!?」
クレアちゃん、物知り!!
「…因みに何度毒針をくらいましたか?」
私と同じ歳くらいの若い女性研究者のような人が聞いてくる。
「二回かな?」
「それで、症状は!?」
「普通に治したから…。わからない。」
「そうですか…でも、頭以外目立った傷が無い素晴らしいのが貰えそうですし、調べれば何かわかるかも…。」
「でもそれってアナフィラ…?」
あれ?…概念が無い……?
「私のいた国ではアナフィラキシーショックとか呼ばれてたやつ…かも?」
「アナ…、?」
良い歳した女の子がアナとか言わない!!
「アナフィラキシーショック、アレルギーの一種で、抗体が過剰反応して自分の身体まで攻撃しちゃう…とかだった気がする…。」
「アレルギー…抗体?それは…?」
えっと…面倒臭いなぁ…。
生物基礎の知識だけでどこまで学者と渡り合えるのかな…?
「そんなことが…今すぐ研究する必要が…!!!」
「マリさん物知りだね!!」
「…あ、あははは……。」
ヤバいコイツら何にも知らねぇ…。
まるで私が天才みたいになってる…。
「こ、故郷では常識だっただけで…。」
そもそも魔法の有る無しで色々と変わりそうなのだが…。
「あ、あくまで受け売りというか…聞いたことがある…程度の知識だから!違うかもしれないから!!」
「でも、説得力ありますし、調べてみる価値はあります!!」
「が、頑張ってね~…。」
私はし~らないっと…。
でも、これで依頼完了……あれ?
そういえば…。
私が受けた依頼って…?
何だったっけ…!?
赤岩…西の岩場…!!?
「赤岩ぁぁ!!!」
私は大急ぎで駆け出した。
投稿遅れてすみません。
新キャラ出る時は遅くなります。
…ほら、私、ネーミングセンス無いから。(泣)
ごめんなさい次回は夜です。




