妖怪尻叩きあらわる!!
揺すられてる。メッチャ体揺すられてる。
この感覚は…明らかに人間のものだ。
目を開く… そこには私を助けてくれる運命の王子様……ではなく涙目のオッサンの顔があった。
「ひゃっ!?」
慌てて突き飛ばす。ざっと数100メートル飛んでった。突き飛ばした先に丁度木が無かったのが唯一の救いだった。殺人鬼になるところだった。
「あ、でもオッサンノックアウトしてる。」
吹き飛んだオッサンの周りに二人の女性が現れる。大人びた女性と、私と余り変わらないくらいの歳に見える女性だ。二人とも凄く美人だ。
大人びてる方の女性がオッサンの腰辺りに手をかざすと、緑色に輝き出す。
「魔法…?」
オッサンがすくりと立ち上がり驚いた表情で私を見てくる。
「 回復魔法…!?」
明らかに立ち上がれなさそうなオッサンが何事も無かったかのように立ち上がるなんて…。
あれ?やっぱりここ異世界!?
少なくとも元いた世界にあんな便利グッズは無かったと思う。
オッサンと美女二人は恐る恐るこちらへ近づいてくる。私は両手をあげて無抵抗アピールしながら観察する。
格好はTHE冒険者、といった感じだ。
「冒険者ギルドとかあるのかな?」
ファンタジー小説にはまっていた厨二病の理解力は早いよ。というか半ば願望だけど…。
異世界に来てしまったという現実に、興奮が身体中を駆け巡る。いてもたってもいられないけど足は痛いし今動いたら間違いなく逃げられる。
だから行き場を失ったエネルギーは脳へと集まっていく。
…そして、厨二病脳は暴走を始めてしまう。
「あんなオッサンが美女二人を侍らせてるなんて絶対におかしい…。」
おかしいよね?私は心の中で誰かに同意を求める。
「もしかして…洗脳!?」
まさかさっきのは洗脳しようとしてた!?
そうだとしたら危険だ。悪者はやっつけないと。
オッサン達は私から数歩離れた場所で止まり、話しかけてくる。
「ーーーーーーーーーーー。」
いや、何語だこれ?少なくとも日本語と英語ではない。
まさか、洗脳呪文!?
「ーーー?」
「ーーーーーーーー?」
そんなこと思っていると二人の女性も話しかけてくる。けど、わからない。異世界の言語か…。
日本語わかるだろうか?取り敢えず、今最もすべきだと思う質問をしてみる。
「オッサンはなんで美女を二人も侍らせているのですか?」
オッサン達は首を傾げている。やはり伝わっていないようだ。
オッサン達は話し合っている。
暫くすると大人びた方の女性がゆっくりと、私を怖がらせないように近づいきて、私の足首に手をかざす。手から緑色の光が溢れ出てきて、私の足首全体を包み込んでいく。
「温かくて…気持ち良い…。」
だが、足の痛みは引く様子がない。
女性は軽く足首を撫でた後、首を振る。
すると女性達は離れていってしまう。
もしかして、足が治らないので洗脳しても役立たずだから…殺される!?私が一人で慌てていると、オッサンが背中を向けてしゃがみこむ。
あれ?おんぶしてくれるの?
…でもさ、おんぶってさ、背中に胸当たるよね。
太股からお尻にかけてを触られるよね。
折角の好意だとは思うが、私は嫌な顔をする。
すると若い方の女性が凄いスピードでやって来てオッサンの頭にチョップを撃ち込んでくれた。
「ーーーー!?」
オッサンは抗議しようとするが女性の剣幕は凄い。
女性は一通り説教を終えると、私ににっこりと微笑んでから、また何処かに行ってしまう。
洗脳の線はないね。安心する。安心したら異世界来てしまったんだ…という実感が再び身体中を駆け巡りだす。
その後、私はオッサンに担がれて運ばれた。
見えるのはオッサンの尻だけだ。折角の異世界でオッサンの尻しか見えないとは何事だ!!
私の有り余ったエネルギーは暴れだし、オッサンの尻を叩きだす。(物理)
こうして、街につくまで私は『妖怪尻叩き』となって一心不乱にオッサンのケツを叩きまくっていたんだとさ。おしまいおしまい。(続く)