私の答えは…
「夏休みの計画をたてますわよ!!」
入学してから3ヶ月が過ぎ、夏休みもやや近づいてきたある日、アトラがハイテンションで言い出した。
「そこ、現実逃避しない。」
マルグリットが冷めた目で注意をする。
今日は休日、皆で私とシルヴィの部屋に来て勉強中だ!
わからないことがあったらマルグリット先生に聞く、といった感じだ。
「「ぁあ~…ダメだ~…疲れた~…。」」
剣士二人、エリナとカルネが初めに音を上げた。
「赤点採ったら夏休みが半分も無くなるのよ?」
マルグリットが脅迫するが、二人は動かない。
「ちょっと休憩にしようぜ…。」
カルネは顔色が悪くなっている。
「まだ三十分も経ってないんですけど…?」
マルグリットは努力家さんで、かなりの時間勉強出来るタイプだった。
「マリが頭良いのは意外だよね。」
エリナは私を尊敬の眼差しで見てくる。
いや、向こうの世界の高校じゃ、下の方だったし…そういう目で見られると……胃が痛いよ…。
…ん?…意外…胃が痛い…うわぁ…。
声に出さなくて良かったぁ…。
あ、でも王国語なら関係無いか。
実際難しくても中学生レベルの簡単な問題だった。
一応地元…というか県内トップの高校に通えていた私には簡単過ぎて暇だった。
教科は、
国語(読解)
数学(というか算数)
歴史(世界の中の王国史、的な感じ)
生物
ハンター(道具の使い方や戦闘時のサイン、職種ごとの動き方、等々)
…の五教科だ。
英語が無いのは大きい。
歴史は面白いし、為になるので得意になった。
だが、生物やハンターは苦手だった。
正直、私には無縁のものだった。
「私の昔いた場所、勉強に力を注いでたからね。」
嘘では無い。
「マリは戦闘時のサインをもう一度復習して。どうせ忘れてるんだし。前後入れ替わる時は?」
私は左手の親指を上、人差し指を前、中指を右に向ける。
「…何ですか?それ…。」
あ、これはフレミングの左手の法則だった…。
戦闘中に仲間がこんなことしてたら、張り倒したくなるよね。
「それじゃあ、休憩にしますか。」
マルグリットは教科書を見ながらそう呟いた。
「では、夏休みの計画をたて…」
「気が早くないかな?」
まだ定期テスト前なのに。
「皆さん、夏休みに予定とかありますの?」
アトラが問う。
「私はお母様との旅行予定が…。」
と、マルグリット。
「私も、家に帰るぞ?お兄が待っている筈だ!」
カルネがブラコンということは、もう皆気が付いていた。
「私は孤児院に行くわ。」
エリナは両親がとあるドラゴンに殺されてから、孤児院にお世話になっているらしい。
学費は親の遺産で払っているのだとか。
「私は…王都でお仕事の方に…。」
シルヴィは仲間の獣人達と王都でカフェをやっているらしい。
「私は、インタルに行って友達に合ったら、王都に行くつもり。」
エリー、元気にしてるかな?
あ、あと、絶対に温泉に入ろう!!
「私も帰りますが…。」
アトラは残念そうに俯いた。
「確かに、折角の夏休み、皆で楽しみたいですね。」
マルグリットの意見に異議を唱えるものなどいなかった。
「なら、皆で日付決めて、何処かに集まる?」
私が提案する。
「シルヴィのお店とか、良いんじゃない?」
エリナが笑いながら言う。
「うちの店、団体様は無理なんです…。」
駄目なようだ。
でも…、とシルヴィは続ける。
「八月十日に、国王様の誕生祭が開かれる筈です。皆さんは参加されないのですか?」
「私は毎年呼ばれますわね。」
流石アトラ、貴族だ。
「私も家族と見に行きます!」
マルグリットも行くらしい。
「私の両親は王国の騎士だからな、私も勿論見に行くぞ!」
カルネも行くみたいだ。
「私は元々王都に行く予定だったし…」
アイリやリリィさんとこの子達、友達の輪を広げたいな。
「なら、私も行きます。孤児院は王国の外れにありますから。」
エリナも行く…となると。
「なら、八月十日、集合場所は?」
「シルヴィの店付近で良いんじゃない?」
「「「「「了解!!」」」」」
そんなわけで、夏休みの予定が1つ増えた。
「よっしゃ~!!!」
「いえ~い!!」
「当たり前です。」
私達は、全員合格した。
「マリ、大丈夫だったじゃない!」
「うん、良かったよぉ。」
と、いうわけで、安心して夏休みを迎えられるね。
…私は、レミュ先生に職員室へと呼び出された。
「…一応、職員会議により合格点ぴったりの点数はあげましたけれども、生物のテスト、出来れば習ったことを書いて欲しかったなぁ~…。」
レミュ先生の微笑はゾクッとする。
「だって…。」
Qゴブリンの弱点は?
A心臓
Qウルフの群れに囲まれた時と対処法は?
A全員殴り殺す。
わからなかったから事実を書いたのだ。
そうしたら、なんと、合格点を貰えてしまった。
リビナード先生…リビ先生のお蔭らしかったので、後でお礼を言おうかな?
レミュ先生に許してもらい、今度からは出来るだけ覚えると約束した。
正直、テスト終了後、私は一人絶望していた。
取り敢えず埋めとけ、と常に言っていた向こうの先生の言葉に初めて有り難みを感じることになったのだった。




