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怪力少女にご注意を!  作者: アエイラ
本編
29/93

女達の修羅場。

「ん……ふぅ…。」






…ただの意味の無い前書きですよ。

私達は修道院にやって来た。


「本当に…女の子しかいない…。」

…しかも皆可愛い。

「世界で一番可憐で美しい場所よ♪」

「……少しはこの街の外でも見に行ってみては?」

リーゼさんは満足そうに言うが、賛同しかねる。

「リーゼ様、その方は…?」

大人びていて、かっこうよくて、それでいて可愛さも兼ね備えた…二十歳前後くらいの女性が歩み寄ってきた。

私は声が出ない。

「あらぁ?リリィに一目惚れしちゃったかしら?」

リーゼさんがからかうような声で、しかし顔は至って真面目な表情で聞いてくる。

「へ?…あ、いやいや、単に綺麗だなぁ…と。」

「あっ、ありがとう…ございます?」

リリィさんは戸惑いながら頭を下げる。

少し顔を赤らめた気がした。


「お二方は…どのようなご関係で…?」

リリィさんが訪ねてきた。

恐らく私の身分がわからないため、接し方がわからないのだろう。

「マリさんと私は…婚約者よ?」

!!?

周囲の修道女達がざわつきだす。

「嘘をつかないで下さい!!」

私は周囲に聞こえるように大きな声で叫んだ。

「私はただ…街中で…リーゼさんに捕まって…。」

「それは災難でしたね。」

リリィさんは共感するように頷いてくれた。

「…ちょっと、リリィ?」

リーゼさんが軽く怒る。

「いえ…つい本音が…お仕置きですか?」

「それじゃあ、貴女にとってはご褒美じゃない…。」

リーゼさんは何かを思案したあと、口を開いた。

「私、これから糞ジジイ共との会議があるから…代わりに院内を案内しつつ、マリさんのお部屋に連れていってあげてぇ。でもぉ、手は出さないようにねぇ。その子を目覚めさせるのは私だからねぇ?」

「…私の部屋?」

なんか言い方おかしくない?

「ふふっ、マリさんはこの街に来た瞬間から、目をつけていたのよぉ?全部の宿屋に通達だして、試験が終わるまでに皆で部屋を整えて…大変だったのよぉ?」

……はぁ!?

じゃあ、宿って空いてたの?

…全部仕組まれてたってこと!?

「私、宿にいきますね。」

「そんなことをしたらぁ、二度とこの街にはいられなくなるわよぉ?それに、変な噂ばらまくし、最悪、指名手配だって出来るわよぉ?」

……権力には勝てなかったよ…。

…というか瞬殺だ。


「じゃあ、案内お願いします。」

ならば、取り敢えずは一番危険そうなリーゼさんから離れたい。それから色々と考えよう。

私はリリィさんにお辞儀する。

「リーゼ様、いってらっしゃいませ。」

「リリィ、それに皆も、マリさんには絶対に手を出さないこと。ウブな娘を浄めるのは私の仕事だからねぇ?」

汚す気満々でしょう!?

…ここではそれを浄めると言うのか。


リーゼさんは皆から惜しまれつつも、修道院を後にする。

「ふふっ…さて、お部屋に行きましょうか?」

いきなりリリィさんが笑うので驚く。

「…笑うところありました?」

「神様っているのですねぇ…♪」

リリィさんはなんかご機嫌だ。

というか修道女なら神様信じようよ。


「そういえば、院内の案内は…?」

「それは後でもよいでしょう?荷物、ありますし。」

「え!?」

私はバックを肩にかけていることをすっかり忘れていた。

「でも、アイテム袋しか入っていないバックだし、軽いよ?」

リリィさんは首を振る。

「…取り敢えず、部屋にご案内します。部屋の場所を覚えてくれれば、はぐれたり急用が入っても対処出来るでしょう?」

…成る程。

「そうですね。」

私は賛同した。


「ここが、マリさんのお部屋になります。」

「え?こんなに広いの?」

意外と広かった。

一部屋だが、大きなベッド、トイレ、洗面所完備だ。

「リーゼ様が街で見つけた女の子を無理矢理連れ込んで目覚めさせる、来客用の部屋ですから。」

来客?…拉致だよね?

「別名、『目覚めの部屋』。私もここで洗礼を受けて、修道女になってしまいました。私、元は旅人で、ランクAの格闘家でもあるんです。」

「格闘家!?」

他にも気になる点は沢山あったが、ふっ飛んだ。

私以外にもいたんだ女性格闘家!!!

この出会いは大切にしたい。

「やはり、珍しいですよね。」

リリィさんは少し照れたように頭を掻く。

「実は…私も格闘家ランクAをとらされてしまい…」

私も話す。仲良くなりたい。

「本当ですか!?神様って本当にいたのですね…。」

リリィさんが食いついてきた。

でも、何か変だ。


「?…あ、でも私、魔術師だよ?」

「……え?」

何か凄く申し訳なくなる。

「成る程、そんなに都合よくはいきませんよね…でも、この試練、乗り越えてみせます…!」

リリィさんがボソボソと呟いている。


「…あのぉ?どうしたのですか?」

リリィさんの様子が変なので聞いてみる。

「…私は元々、一つの場所に留まるのを嫌う性分でして、前々からこの修道院を卒業しようと考えていたのですが…。何かが私をここに繋いでいるかのように、私を引き止めていたのです。」

唐突にリリィさんが語り始める。

でもそれって、リーゼさんじゃ無いの?


「ですが、今日、やっとわかりました…。」

そう言うと、リリィさんはベッドへと移動する。

私もついていく。

「ふふっ♪このベッド、ふっかふかなのですよ?」

リリィさんはベッドに座り、軽く跳ねると、寝そべった。

私も我慢出来ずにベッドに横になる。

…私の部屋だし、いいよね?

その瞬間、私の上に何かが覆い被さった。


「ちょ!?リリィさん!!?」

リリィさんが私の身体に手を回す。

「やめて下さ…!?」

振り払おうとするが、身体が動かない。

「あれ…何で……?」

がっちりと固められ、しかも力が入らない。

「私は、貴女に出会うためにここにいたのですね。」

リリィさんの顔は初めて会った時とはかけ離れ、全快に発情した、ヤバい顔になっている。

「意味が…わからな…」

「まずは、キス…しましょうか…。」

私は、どうすることも出来ない。


…私が不用意だったのかな?

あのリーゼさんが支配している修道院がまともな筈など無かった。

完全に私の警戒不足だ。

異世界に来て、努力もせずに大きな力を手にいれて、少し浮かれていたのかもしれない。

自分の力に驕っていたのかもしれない。

私の力は最強では無い。

現に今、私は抵抗出来ないでいる。

…というか、リリィさんならいいんじゃ…とか思

い始めている?


リリィさんの唇が近づいて…私の唇と…

「何しているの!!?」

いきなりのリーゼさんの怒鳴り声、そして身体を震わせるリリィさんと私。

「何で…。」

リリィさんは狼狽する。

…助かったけど、なんでリーゼさんがここに?


「ジジイ共と…って話、嘘よ?リリィの様子が変だったから、観察していたら…何?一目惚れしたのはリリィの方だったの?私の言葉には絶対服従…忘れたわけではないわよねぇ?」

リーゼさんはぶちギレている。

でも私、リーゼさんとは絶対に嫌だよ?


「…っ!!それでも、…どうなったっていいから…今だけは…!!!」

リリィさんはキスを強行してくる。

「やめなさい!!!」

リーゼさんが私とリリィさんを引き剥がす。

「私達の邪魔しないで下さい!!」

リリィさんが叫ぶ。

…私達?

「マリさんは私のものよ!!?」

リーゼさんも叫ぶ。

…違います。

「なら、マリさんをかけて、決闘とでもいきますかぁ!?」

「…殺す!!!」


私をかけて殺し合いが始まる…?

冗談じゃない…。

「当事者の意見も、聞けぇ!!!」

私は怒りに身を任せ、叫びながら全魔力を解放し、放電した。

バババババババッ!!!!

室内をに轟音と閃光が暴れまわる。


二人は気絶し、部屋は焼け焦げ。


轟音を聞いた修道女達が慌てて、続々と集まってくる。


私は慌てて二人に回復魔法をかけるため、飴を頬張った。



…そういえば、私、魔術師だったね。

雷魔法使えば、普通にリリィさんロックから抜け出せたんだね。

すっかり忘れていたよ。


魔術師への道は、まだまだ遠いね。

ついデュエルと呼んでしまうのですよね。

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