一人ぼっちの死神。
「俺達も王都に帰るか…長居し過ぎたしな。」
「マリちゃん、宿で旅に必要な物とか教えてあげるからね。」
ガッドさん達も帰るようだ。
「アイリはどうするの?」
「私は…。」
アイリは俯いた。
「マリさん!!行っちゃうんですか!?…必ず、帰ってきて下さいね?…待つのは正妻の仕事ですから。」
…何言っているんだエリー!?
「私も…学校……に…。」
アイリの様子がおかしい。
「王都に帰らないのか?」
ガッドさん空気読んで!!
「私に…帰る家なんて…。繋がり…。ううう…。」
アイリさんがガチ泣きし始める。
「アイリ?何があったの?」
どうすればいいのかわからない。
「寂しい…寂しいよ…。」
アイリは私に抱き付いてくる。
「アイリは単独で戦う暗殺系の戦法だから『死神』って呼ばれててね。名前だけが先歩きして、歩いているだけでも恐れられるの。この街は異国の人が多いからか、恐れている人は少な目だったけどね。」
マーラさんが教えてくれた。
…なんでそんな戦い方をしているのかな?
「ホイホイついてくるって言うのは俺がついた嘘だ。お前がアイリの噂を知らなそうだったから、つい…怖いイメージを持たせたくなくて…な。」
ガッドさんも教えてくれた。
…確かに、接し易くはなったかも。
「帰るところが無いって言うのは?」
「…私は…祖国に追われていて…この国は大和の国とは敵対関係にあって大丈夫だけど、他の国では裏で指名手配されてる…。私を献上品にするつもりなの。」
「大和の国を案内するって言ってたのは…?」
「大和の国の人は、普通国外に出られないの。あのお団子屋も、私と同じで国から逃げてきた人。もしかしたらマリもそうなのかなって。案内するって言うのは逃げてきた人ならわかる隠語。大和の国への密入国や、将軍…王様の暗殺スポットへの案内ってこと。」
かなり物騒な言葉が出てきたよ…。
アイリの戦い方は大和の国から逃げるために得た業…とか?
…何か、大和の国…かなりヤバい所みたいだ。
「お団子屋とか開いて大丈夫なの?」
「この国の回りは人間が人間の権利を奪って支配しているような、酷い国しか無い。だから入国審査は手厳しい。まぁ、お団子屋も私もある意味では人質としてこの国にいるってのが近い?かな。…でも、この国は良い国だよ。」
ヤバい国に囲まれた良い国か…。
…私が異世界物の主人公だったら、命をかけて守ったりするのかな?
…アイリのためなら戦わなくもない。
「孤独な死神の方がまだマシ。あんな国に戻されるよりかは…ずっと…。」
アイリは震えている…。
こういうとき、どうすれば良いの?
学校では、教えてくれなかったよ!?
「…ガッドさん達も、凄いね。」
取り敢えずガッドさん達に話を振る。
「…俺達は王様に頼まれただけだ。良い奴だから、死神扱いしないで、普通に接してやってくれって。だから1パーティで来た。接しているうちに、良い奴だってわかったけどな。」
「ガッドさん達がいるなら、一人ぼっちじゃ無いんじゃない?」
アイリは首を振る。
「…ガッド達に迷惑かけたくない。二人は友達多い。いつも楽しそう。壊したくない。」
「そんなこと…」
そう言いながら、ガッドさん達は俯いた。
そうとう恐れられているらしい。
「私も友達でふ!!」
エリーが叫ぶ。
エリー…凄く良いところで噛むなよ…。
でも、アイリは少し笑った。
「ありがとう。でも…。基本は王都にいなくちゃいけないの。大和の国の情報提供とか、色々あるから。」
「…私も、アイリとはずっと友達だからさ、休みには王都にも行くからさ…仲良くしてよね!!」
なんて言ったら良いのかはわからないけれど、精一杯、気持ちを伝えた。
「…する。ぜっだい…する…。私なんかで…良いなら…。」
「アイリじゃなきゃダメなんだよ。」
ずっと一人ぼっちだったんだね。
恐らく、大和の国でも…。
比べちゃいけないのかもしれないけれど…、
私も、友達のいない寂しさは痛いほど知っている。
他人から恐れられる悲しさも。
だからこそ、私はアイリとずっと友達でいたい。
私は微笑んで、泣きじゃくるアイリの頭を優しく撫でた。
インタルの街のハンター達は王都になんて行ったこと無いので死神の噂は知らなかったのでしょう。
マーキスさんはただのイケメンな良い人なので…
内心はビクビクしていたかもですが。




