イケメン許すまじ!!
ドMという言葉が通じなかったよ…。
「もう、何でもいいや…。」
私はアイリ、エリーと共にウサギを頬張る。
私達は屋台の焼肉屋にいた。
ツノウサギの肉はやや硬く、噛みごたえがある。
…と、思う。私は普通に噛み切れるけどエリーの様子を見る限りそう思う。
歯応えが楽しめないのは中々に辛いね。
ただ、腹持ちは良い…筈なんだ。
……アイリさんの胃袋おかしいって。
「マリ、半額は出すからもう少し食べさせて。」
一番お金がある私が払うと言ったのだが、この様子だと払いたく無くなってくる。
…割り勘で良いよね。
「君達、ギルドはあそこで良いのかな?」
いきなり後ろから話しかけられた。
振り向くと、男の人が立っている。
おわっ…見るからにイケメンだ!
この世界にもイケメンいたんだ!!
「ええ、そうだけど。貴方がマリの相手?」
私をチラ見した後、アイリが私の半歩前に出て答える。何か凄い睨んでいる。
「ちょっ…そんなに攻撃的にならなくても…。」
イケメンは怯んだ。優しそうな人だ。
「?…ケインさんの推薦の人が君なら、僕が相手になる者だけど。」
イケメンが微笑んで、私に握手を応じてきた。
「じゃっ、じゃあ、そうですね。」
私が手を取ろうとすると、イケメンの手が消えた。
バシィッ
「マリは渡しません!!」
…ちょっとエリーさん?何をやっているの?
動揺して心の中でエリーにさん付けしてしまった。
…状況を整理しようか。
イケメンの手をエリーがはたき落とした。
うん?何を言っているのかわからないって?
…大丈夫。私もだから。
「エリー、流石にそれは無礼だよ。」
アイリが諭す。そうだよ無礼だよ。
「こういう害虫には態度で抵抗しないと。どんな相手でも落とせるとか勘違いしてそうだし。」
アイリ!?
「成る程。勉強になります!!」
エリー!?変なことを学ばないで!!!
起きていることに頭が追い付かず、声が出ない。
「あはは…愛されているんだね、マリ…さん?…出来れば傷付けたく無いんだけど…、闘いたいんだよね?」
あ、確かにコイツ調子のってんな。
…でもイケメンだから、許すか。
「マリ、コイツ殺して良いよ。私が全責任を負うから。」
「私も半分負います!!」
エリーが駄目な方に教育されていく…。
二人はイケメンに興味が無いようだ。
私達はギルド裏の解体場へと向かう。
「きゃ~♡」
解体場に入ると、ギルドのオバサン達からの奇声…歓声に包まれた。
まぁ、カッコいいからね。
解体場にはギルマスもいた。
「おお、マーキス!!来てくれたか!!」
ギルマスは嬉しそうに笑った。
「はい、ケインさんからの依頼なら、誰だって受けますよ!!」
…ギルマスすげー。
ふぅん、マーキスさんって言うんだね。
「メリーとは上手くやっているか?」
「えぇ、勿論!!」
あらら?彼女いるんだ~♡
なら、安心して殺せるね☆
私はアイリ達に拳を向ける。
二人も拳を向けて応じてくれる。
「…死ぬなよ。妻の為にも。」
ギルマスはマーキスさんに祈るように言う。
…何で女の子の心配をしないでそんな男の心配をするの?
「マーくん頑張ってぇ~♡」
結婚しているのか諦めているのかわからないオバサン勢の歓声が癪に障る。
これでは完全にアウェイだ。
「頑張れマリ!!」
…と、思ったら男ハンター達が私を応援してくれた。
あれ?一戦目の逆だ!!
どちらにせよ、ガッドさん達やエリー、地味に仲良くなっていた一部の女性ハンター達が私を応援してくれているので、寂しくはない。
立ち合う。
マーキスさんの放つ緊張感を私は華麗に受けなが…さずに、真っ向から殺気で応戦する。
「お手柔らかに。」
マーキスさんは苦笑いしている。
無駄にイケメンな顔がムカつくぜ。
「ぶっ飛ばす!!」
私は正しい返答をする。
「試合、開始!!」
先ずは相手の出方を伺う。
私は冷静…というより、もし空振った場合に、ストレスがマッハな状態になって、大暴れしてしまいそうだからだ。
…流石にそんな、はしたない真似はしない。
お互いに距離を詰めていく。
「ふっ!」
マーキスさんは牽制で蹴りをいれてくる。
「うわっ!?」
情けなく避ける。
こんな対人戦したこともない。
何でもありルールみたいだし。
「よっ!!」
また牽制の左ジャブ?…と思ったら服を掴んできた。
「服が伸びるでしょ!?」
私は反射的に高速手刀で応戦、マーキスさんの左の手と肘を繋げている骨を叩き折る。
「がっ!?」
マーキスさんは慌てて距離を取ろうとするが、私は高速でタックルする。
踏ん張ろうと前に体重をかけたところを引いて、そのまま背負い投げをする。
バキィッ!!
「がはっ!?」
マーキスさんは使える方の手で受け身をとり、すぐさま立ち上がり、逃げる。
…う~ん。ミスった。
私の腕関節無視超高速背負い投げで砕いたのは、どちらにせよ使えなかった左腕だったのだ。
いや、マーキスさんがあえてそっちを掴ませたのかな?
しかも砕けた腕がグニャったせいで威力が出なかったらしい。
「ぐっ…化け物かよ…。」
「ただの女の子ですが?」
模範解答だよね。
「これは…僕も本気、出さないとなぁ。」
マーキスさんはまだやる気のようだ。
「うおおぉっ!!」
マーキスさんのパンチが飛んでくる。
私はそれを手で跳ね除けようとして、気が付く。
「熱っ!?」
マーキスさんの腕が燃えていた。
左腕は土で固められ、身体のバランスを取る用になっているみたいだ。
私は慌てて離れる。
「ギルマスっ!?コイツ今魔法使ったよ!!」
私はギルマスに抗議した。
「何の問題も無いぞ。格闘家らしい戦法ならな。」
「はぁ!?私、格闘家じゃ無いんですけど!?」
どういう意味だ!?
「えっ!??」
マーキスさんが動揺した。
「何でもない、そして何でもありだ!!!」
ギルマスは何かを隠すようにして叫んだ。
…早くイケメン野郎をぶっ倒して、ギルマスを問い詰めよう。
「魔法を使っても良いのなら、容赦なく使うけど?私、魔術師だし。」
そう言って私は雷魔法を初披露する。
バチチチチチッ!!
「「「「「なっ!??」」」」」
皆驚いている。そりゃあ、この世界には電気の概念は無いし、雷は解明されていないのだから仕方は無い。
「魔法使ったら、私の圧勝だよ?」
私はイケメン野郎を威嚇する。
もう、面倒だからイケメンって呼ぶよ?
「………。」
イケメンは驚いて声も出ないらしい。
情けないイケメンだ。
でも、なんか映えるからムカつくなぁ…。
「…でも、それだとつまらないから、私は魔法使わないであげるよ。」
イケメンにナメプ…何か良い!!
今の私、童貞みたい!!
………。何か急激に熱冷めたわ~…。
「その怪力は、強化魔法では無いのですか!?」
イケメンが聞いてくるが、知らない。
「強化魔法?そんなのあるの?」
「マリは異常な体質らしい。」
ガッドさんが説明をする。…いたんだ。
「ガッドさん!!お初にお目にかかります。」
ガッドさんも意外と凄い人?
「あぁ。…で?まだやるのか?」
ガッドさんはイケメンに聞く。
「はい、自分より圧倒的に強い人との闘いなんて、今度はいつ出来るかわかりませんから!!」
…この人、調子のってるって言うよりは、本当に強いらしい。蛇男よりは遥かに強いし。
「では、私は魔法を使わせていただきます。」
「どーぞ。」
女の子相手に容赦ないな。
「では、胸をお借りしますっ!!」
そう言うと、こちらへ突っ込んでくる。
…て言うかそれ、女の子に言って良いことばなの!?
イケメン…マーキスさんは強かった。
私に対し果敢に攻めてくる。
もしかしたら、馬鹿力だけでは勝てなかったかもしれない。
しかし、向こうの世界の高校一年生の時、私は必修科目の柔道に真面目に取り組んでいた。
投げ技や重心のずらし方等が意外と身体に染み付いていて、マーキスさんの動きに対応できる。
向こうの世界の日本の皆、柔道…学校によっては剣道もあるみたいだけど、真面目に受けといて損はないよ。もし異世界に行ったとき、とっても便利だから。
いや、もしかすると、教育委員会は異世界転移をも見越していたのか!?
…んなわけあるか。
決着は、私の大外頭落としだった。
大外刈中、無理矢理身体を捻り、服を掴んでいた手を相手の頭に持っていき、地面に叩きつける技だ。
ステータス異常を起こしている私だからこそ出来る技だと思う。
地面は土なので、マーキスさんは致命傷には至らなかった。
まあ、コンクリとかだったら私が地面を叩き割って試合終了だったかもだけど。
マーキスさんの左腕は粉砕しており、マーラさんでも治さなかった。ギルマスは申し訳なさそうにしていたが、マーキスさんは嬉そうに私に握手を求めてくる。
「おっと、失礼しますね。」
私達の間を横切って身体で邪魔をするアイリ。
「ギルマスがお呼びです!! 至急ギルドへ!!」
ギルマスはすぐ側にいるのに、平然と嘘をつくエリー。
…何か、見苦しくなってきたよ。
私達はギルドへ戻る。
この時の私はまだ、ギルマスの企みに気が付いていなかった。
何かコメディ小説になっていますね…。
純心な女の子?がオバサンしかいない…。
早く幼女キャラ書きたい…。
でも、この調子だと出せないだろうなぁ…。
…出せないを抱けないと誤打ちした私の話します?




