夜空へ飛び降りた。
私、毒島美麗は自殺するつもりだ。
なるべくしてこうなったとは思っている。
私の親は両方とも低学力低収入のくせして人を見下す嫌なタイプだ。
私を産んだあと母親は子宮の病気になり子供を産めなくなった。私は両親の期待を一身に背負わさる事になってしまった。
私の名前からも感じるように、奴等は私をエリートに育て上げようとしてきた。
習い事はさせてもらえなかった。スポーツもさせてもらえなかった。買い物も、親とはコンビニしか行ったことが無かった。友達と遊ぶことは許されなかった。
奴等の口癖は、「そんなことする暇あるなら勉強しろ。お前の為を思ってこう言っているんだ。」だった。
実際は自分達の老後の為に、そして周囲の住民に自慢するためにだと中学生の頃には気が付いていた。
とはいえ中学生の頃は、私にも友達はいた。学校では普通に遊んだし、一緒に帰った。私のとんでもない威力の静電気を受けても苦笑いで済ましてくれる、とても優しい子だった。
一緒にいた時間は、凄く楽しかった!!
…が、長くは続かなかった。
中学二年、ある日の帰り道、父親に見つかった。私は殴られた。
友達には
「二度と近寄るな虫けらめ。」
と、暴言を浴びせた。
友達は事情を知ってはいたが、私を気遣って、そして私の両親を恐れて、結局疎遠になってしまった。
その時から私は陰で親に反抗するようになった。
特別補習があると嘘をついて近所の山を散策したり、コンビニで立ち読みしたり、図書館で本を借り、勉強しているふりをして読みまくった。
勉強しかさせてもらえなかった私には、その時間は楽しすぎた。
そんな私でも、運よく市で一番の公立高校には入れた。
両親は自慢しまくっていた。気をよくした親はお小遣いをくれるようになった。スマホも買ってもらえた。
しかし、あまり勉強しないで遊んでばかりいる状態では、高校の勉強についていける訳もなく、何とか赤点を回避し、難を逃れる日々を送った。
お小遣いはファンタジーものの小説を買うために使った。この頃、遅すぎる厨二病に目覚めてしまっていたのだ。
親は私が家にいれば勉強しているだろうとあまり口を出さなくなっていた。通知表も見られることは無くなった。模試の結果も、スマホのお陰で受ける前に答えを見たりして、高得点を採っていた。
三者面談でばれるのを防ぐ為だった。
こんな調子で入試を受けて…受かるわけ無かった。
勿論、親はハイレベルな大学しか受けさせてはくれなかった。
全落ちした。親に隠していた通知表がばれた。追い出された。2度と帰ってくるなといわれた。高校では友達を作らなかった私は、行く宛てが無かった。
だから今、山を散策しているときに見つけた崖の前にいる。
自殺するために。
私は大きく息を吸い込んだ。
「やっぱりここは落ち着く~♪」
お気に入りな場所だった。
下には澄んだ水が流れていてとても綺麗…
…な、はずだった。
何故か、川があるはずの場所がまるで夜の星空のようになっている。
まるで宇宙のようだ。
…どうせ死ぬんだ。なら…。
半袖シャツにハーフパンツ、左ポケットにポケットティッシュ、右ポケットにカッターナイフ|(厨二病の必須アイテム)を携えて、緊張しつつも飛び降りた。
思っていた以上に小さなジャンプになってしまったらしく、崖スレスレだ。
ビキッ!!
「ぎゃっっ!!」
足首が崖の出っ張りに引っ掛かかって挟まり、嫌な音がした。足は出っ張りを抜けたが、激痛が走る。
「あああぁぁぁぁ~。」
痛みと落下の恐怖で私は叫びながら気を失った。