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怪力少女にご注意を!  作者: アエイラ
本編
19/93

異世界の帰宅部エース?

…何か、モゾモゾする。

まさかの二日連続侵入者パティーン?

…まさかね。


「おかしい…エリーが言うにはノーブラだって話だったけど…ブラしてやがるぜ…。まぁ、脱がせばいいか…。」

…この声は、間違いなくアイリだ。

「よくないよ…。」

背後でブラのホックに手をかけているアイリさんを振り払う。

…ポロリは無いよ?


「本当に、良いとこで起きるんだね。」

「危険を察知したからね…というか、布団から出なさいよ…。」

宿の布団だが、この部屋は私が借りている。

私は布団の中でアイリの方を振り向き、足で押して、ベットから落とす。

「ギャン!…痛いよ。」

「知らないわよ。それで、何でいるの?」

エリーはアウトなやり方で侵入してきたが、アイリもだろうか。


「ギルマスが緊急の用事だって。エリーは仕事中だから、代わりに私が来た。ドアノックしても起きないから、仕方なく…。」

あれ?ドアノックされても気が付かなかったのか…。向こうにいた頃なら絶対起きてたのに。

異世界に来た安心感?それとも昨日の疲れ?

まぁ、どちらでも良いか…。


「それで、何で布団に入って、私のブラを外そうとしてたの?」

「ほんの出来心だった。」

それ、犯罪者の台詞だよ。


私が着替えて身嗜みを整えている間に、アイリがパンを買ってきてくれた。

「乳、揉ませてくれたら半額、どうする?」

アイリの手がいやらしく空間を揉む。

乳という言い方がいやらしさを倍増させる。

「…いいよ、ちゃんと払うから。」

ちょっと迷ったが、断った。

私達はギルドに向かう。



ギルドに入ると端の受付にエリーとギルマスがいて、手招きされた。

ガッドさんとマーラさんもいる。

私はハンター達に新入社員のように丁寧に挨拶しつつ、ギルマスの所に向かう。

身体を震わせたり、硬直させる人も多い。

…まだ私に怯えている人意外と多いな…。


ガッドさん達にも挨拶をして、ギルマスの前に立つ。

「ギルマス、緊急の用事ってなに?」

単刀直入に聞いた。

「その前に、キングゴブリンのフェイスマスクが180万Gで売れた。加工費や輸送費を引いて、きっかし100万Gでどうだ?」

その瞬間全員が怪訝な顔をする。

「じょっ、冗談だ!!そんな顔で見るな!!」

ギルマスは台の上に150万G出した。

…こんな大金持ったこと無いよ。

「他に、大量のゴブリン代、8万と少しだ。」

ゴブリン安いな~。

解体してたけど、何に使うんだろうね?


「それと、ランクBハンター用のアイテム袋だ。」

大量の硬貨が一瞬で袋に吸い込まれた。

この国では、1G、10G、100G、500G、1000G、5000G、10000G、の七種類の硬貨が使われているらしい。

「ランクB用?」

なんでだろ?

「あのゴブリンの群れ討伐はランクAと言っても文句は言われないほどの難易度だったからな。ランクBに昇格だ。」

ギルマスはニヤリと笑う。

はえーよ…。

ハンターになって初クエストでランク上がるって何だよ…。

「そんなに簡単に決めて良いの?」

もっと吟味してだね…。

「ウルフの群れも滅ぼしていることだしな。」

ガッドさんが笑いながら言う。

滅ぼすという表現に悪意を感じる。


「では、ギルドカードを貸してくれるか?」

私は素直にカードを渡した。

そしてお金を受け取り、借金を返済する。

「ツノウサギの肉代は?」

「マリちゃん?朝食代は?」

マーラさん達が詰め寄ってくる。

「奢ってくれるって言ってたじゃん!!」

私は反論する。

私がお金を持った途端にこれだよ。

でも、冗談で言ってるってわかるから笑うだけで済む。

「エリー、お団子代。」

「い、要らないですよ。私が誘ったんですから。それに、料金は一緒にいてくれた料で。」

何その友達料みたいなやつ。

「これからも友達でいたいから、貰っといて。」

受け取ろうとしないエリーに無理矢理握らせる。

「あ、ありがとうございますぅ!!」

エリーは顔を赤くして嬉しそうに微笑む。

…いや、告白したわけじゃないし…その反応で良いのか…?


「う~ん。ゴブリン代の方は、ガッドさん達にあげるよ。」

正直、結構大金を持ちすぎている感じがするし、なによりこのお金はガッドさん達に入る筈だったお金だ。

「お前が倒したんだ。なら、お前のものだろ?」

ガッドさんはそういうが、私は無理矢理渡した。

「マリちゃんが良いなら、ありがたく受け取るわ~♪」

マーラさんが受け取ってくれた。

ガッドさん達はアイリとの分け前を話し合っている。

そういえば…。

「ギルマス、緊急の用事って?」

その為に、朝早めに起こされたのだから。

「俺が依頼を出すと言ったら、受けてくれるか?」

嫌な予感しかしない。ここは様子見かな?

「内容は?」

「とある男二人を一人ずつ倒して貰いたい。決闘だ。」

意味がわからない。

「何で倒すの?」

「え…?っと、あいつら、最近ちょっと調子にのっていてな…。少し懲らしめて欲しいな~と…。」

明らかにギルマスの様子がおかしい。

「報酬次第だけど…。」

…微妙だ。人間相手だと、力んでしまった場合、殺しかねない。

報酬が余程良くない限りは受けたくない。


ギルマスは暫く悩んだ後、決まったようで、ギルマスの部屋らしきギルドの部屋から何かをとってくる。

「これでどうだ?ある程度の古代文字が、解明されている範囲でだが、王国語で読める眼鏡だ。」

自信満々に出してくる。赤と黒のオシャレな眼鏡だ。

「いつ使うの?」

使いどころがわからぬ…。

「隣町や王都には図書館があってな。そこにある昔の本が読める。」

「図書館あるの!?」

これは嬉しい。私は本も神話も大好きなタイプだ。異世界の古代の本まで読めるだなんて!!!


…だが、二戦もするのだ。

報酬が少なくないかな?

「う~ん、それだけ?」

「…お主は何が欲しいんだ?」

そんなの…。

「家!!」

「家!?」

「うん、家。自分の家が欲しい!!」

「…それは、キツいな。」

ギルマスは苦い顔をする。

「じゃあ、別の人にでも頼んでください。」

「…お前が家を買うときは安くする。」

「どのくらい?」

「…半額。」

「乗った!!」

そういうわけで、依頼契約は成立した。



暫くすると、一人目の男がギルドに入ってきた。

「あれはっ!?」

「スネークさん!?」

「何でスネークさんがここに!?」

ハンター達が騒ぎ出す。

…入ってきた男はスネークという名前らしい。

見た目完全に蛇だ。つり糸目で顔が尖っている。

蛇を擬人化した感じの人だ。…ちょい苦手。

段ボールが全く似合わなそう。

「きしゃ~っ!お久しぶりです、ケインさん。」

「ケインさん?誰?」

「俺の名前だ。」

ギルマスの名前はケインさんらしい。

「お呼びいただき、光栄です。」

スネークはギルマスの前に立つと深々とお辞儀をする。

「畏まる必要はない。」

「いえ、ケインさんは私の憧れのハンターですから。」

スネーク…もう蛇男で良いよね。

蛇男はギルマスの前で謙遜している。

いや、ギルマスが凄い人なのかな?

マスターになるくらいだしね。


「ギルマスって凄い人なんですか?」

私はギルドの中でも歳のいっている…じゃなくて、色々知ってそうな、オバサンに聞いてみた。

「あら?知らないのかい?」

「ギルマスは昔、『必帰のケイン』って通り名でとっても有名なハンターだったんですよ?」

エリーも会話に交ざってきた。

「そう、彼と依頼に行って帰ってこなかった者は一人もいない。どんなに大変な状況でも必ず切り抜けて、皆で帰ってくる。どんな難しい依頼でも。普通は有り得ないことなのよ?」

オバサンは胸を張っている。

ただでさえ大きい胸が、体型と相まって凄いことになっている。

「ハンターはそれだけ…死亡率が高いんです。新米ハンターと、特に難しい依頼を受ける…高ランクハンターほど。ギルマスは沢山の高ランクの依頼の中で、どんなに絶望的状況でも、時に自らが盾となり、時に自らが導いて、誰一人として死人を出さなかったという、伝説のハンターなのです!!」

やはりハンターは死ぬ人が多いんだね。

「俺には他の高ランクハンター達のような、特別な力は無かった。そんな俺に出来たのは、陽動と囮くらいだったからな。」

ギルマスはこちらの会話を聞いていたらしく、自虐気味に言った。

…特別な力など無いのに、自らが盾となり、しかも生きて帰る。

私には絶対に出来ないことだ。

…心の強さこそが、ギルマスの特別な力かもね。


「でも、そんなケインだからこそ、ここのギルドマスターに選ばれたんだろうねぇ。」

オバサンは感慨深そうに言う。

「やめろ、バル。皆俺を買い被りすぎ何だよ。」

オバサン…バルさんとギルマスは旧知の仲って感じの雰囲気を醸し出している。

「お二人は知り合いなんですか?」

私は訪ねた。

「私も昔、ケインに命を救われたのよ。」

「俺もバルに…バルナティンに道を示された。」

あ、これ以上は不味い。

…長くなるやつだ。


「あっ、あの、ここのギルマスに選ばれたって言うのは…。」

私は話を必死で反らす。

「もし他国が侵略してきたとき、まず襲撃されるのはここだろうからね。そういう場合の犠牲者を減らしたいってのも、王様の考えだろうしねぇ。絶望的な状況で現王子様の命を救ったこともあるから、王様にも気に入られているのよ♪」

オバサン、ギルマスに惚れてない?

…知らないけど。

「全く、畏れ多い…。」

…取り敢えず、ギルマスは凄い人だということはわかった。



「そろそろいいっすかね?」

蛇男はモジモジ…いや、クネクネしながらギルマスに訪ねた。…ごめん、気持ち悪い。

「ああ!解体場で良いか?少し臭うかも知れんが。」

「血の臭いとかした方が興奮するんでいいっすよ!!」

…うわぁ、アウトだ。

「で、誰と戦えば良いんすか?」

蛇男はキョロキョロしている。

「この、マリとだ。」

「女っすか!?ギルマスが推薦するってことは、只者じゃ無いってことっすよね?」

ジロジロ…いや、ジトジト見てくる。ううっ…。

「…よろしくお願いします。」

私は頭を下げて蛇男を見ないように挨拶をした。


そして私達は解体場へ向かう。

ハンター達が蛇男を涙目で送り出す。

「スネークさん、死なないで下さいね!?」

「スネークさん、死ぬ前にサイン下さい!!」

「スネークさん、ご武運を…!!」

…なんか、凄くアウェーな気がしてきた。


嫌だなぁ…。私は重い足を動かして、解体場へ向かった。

タイトル、ネタに走るか、格好良くするかで迷い、

両方取ろうとしたら変なタイトルに…。


よく考えたら、キンゴブ頭売れるの早すぎ…。

…この辺は後付け設定でいつかカバーするかも。

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