今明かされる衝撃の真実!!!
「う~む。」
取り敢えず、ゴブリン達を集めてみた。
アイテム袋に入ったのは、一番大きなゴブリン一体だった。
「ゴブリン一体しか入んないじゃん…。」
私は愚痴を吐いた。
まぁ、平均的なゴブリンのサイズなら三体入るかも知れないけど。
ゴブリンって大きくても強さは変わらないんだね。
大きなゴブリンは肌の色がかなり黒ずんでいた。
種類が違うのかな?
「どうしよう。」
暫く考えるが、思い付かない。
運搬方法の事だ。
「このまま放置すると…不味いよね…?」
この岩場を訪れる、ハンター達が怯えるほどの、『何か』を呼び寄せる事になってしまっては堪らない。
だからといって、ここにずっと留まるのも危険だろう。
その『何か』はゴブリン程度の強さでは無い筈だ。自分の力を過信して死んでしまっては、元も子もない。
「…どうしよう。」
今の私にあるもの…。
刃の無いカッター 、ポケットティッシュ。
それと、魔法。
…魔法?
……魔法!?
「魔法一回も使ってない!?」
これではゴブリン相手に電気魔法を試すという私の計画が…。おのれゴブリン許すまじ。
…とか、いうよりさ?
魔術師失格じゃね?
私が頭を抱えていると、聞き慣れた声が聞こえてきた。
「マリちゃん!?」
「マリ~♪」
「マリ!!大丈夫か!?」
「マーラさんとアイリ!!!…あ、ガッドさんもいる。」
ゴブリンだらけの岩場に、一気に二輪の花が咲いたね。というか、女神様?
「凄いね、凄いね。ゴブリン皆倒れてるね。」
アイリは跳び跳ねている。可愛い!!
ガッドさんとマーラさんは様子がおかしい。
…そうだよ。浮かれてはいられないんだ。
「ごめんなさい、気付いたら岩場に来ちゃってて。」
「…気にするな。」
やっぱり、異世界の人は優し過ぎる。
「でも、この岩場にどんな化け物が出るの?」
私は何にハンター達が怯えていたのか知らない。
知っていたら、私も逃げ出しているだろう。
「気付いていないのか?」
ガッドさんは聞き返して来る。
気付く?何に?
一流のハンターならわかること?
生態系がおかしい…とか?
「ごめん、わかんない。」
「そうか…。化け物ならもう、この岩場にいるぞ…。」
ガッドさんが呆れ顔で言う。
「いるの!?」
私は思わず声をあげてしまい、慌てて口を押さえた。
「ブフッ。」
いきなり、アイリが吹き出した。
アイリ、流石に緊張感無さすぎない!?
「マリちゃん…。」
マーラさんは私に哀れみの目を向けてくる。
「え?何!?え?え?」
この状況、全く理解が出来ません。
「化け物はお前だよ、マリ。」
ガッドさんが有り得ない事を言う。
…嵌められた?
と、思ったが、武器を構える様子は無い。
「どういうこと?」
早く説明してクレメンス…。
「ゴブリンキング、どうやって倒した?」
…はい?
「ゴブリンキングって何?」
ガッドさんは白目を剥いた。
「大きめのゴブリン。」
アイリさんが助け船を出してくれた。
「あ、いたいた。これでしょ?」
私はアイテム袋から大きめのゴブリンを取り出した。
「うん、これこれ。うわぁ、本当に一撃だぁ。」
アイリが驚いている。
「ゴブリンキングは普通の武器じゃ、傷すらつけられないくらいに頑丈なんだがなぁ。」
ガッドさんは溜め息混じりに言った。
ちょっとさわってみる。
「あ、本当だ!!弾力がある。」
初めて気付いたよ。
ようやく理解が追い付いてきた。
私はこいつを素手で倒した。
一撃で。
しかも貫いている。
うん、確かに化け物だ。
「今気が付いたのか…。普通はミスリルの武器でも無い限り殺せん。それか強力な魔法で倒すか…だな。素手で倒した者などお前だけだろう。」
「あ、でも私、ミスリル指で潰せるよ~♪」
ガッドさんは倒れた。
マーラさんも倒れた。
「凄い!!」
アイリは…仲良くなった?
そんなこんなで私達はゴブリン達を片付け始めた。
ガッドさん達のアイテム袋はよく入る。
「アイテム袋ってさ、ギルドでしか貰えないの?」
「ううん、普通に買える。じゃないと庶民は大変。」
「確かに。どこで売ってるの?」
「基本的にどの街でも売ってる。でも、王都が一番大きいの売ってるかな?」
「あの街でも売ってるの?」
「一応売ってはいるけど、マリが持ってるのよりも容量少ないよ?」
「あ、なるほど。」
大きいのが売ってたら私は貰えていた筈だ。
ゴブリン達を全て、何袋かのアイテム袋に仕舞い込んで、私達は帰路に就く。
冒険者達が怯えていたのは私だということも知った。
確かに、納得は出来るので怒りはしない。
「服の血落とせる?」
マーラさんが聞いてくる。
「回復魔法は使える筈なんだけど…血が染み込んじゃってて、落とせないです。コツとかあります?」
マーラさんは暫く考えた後、何かを思い付き、聞いてくる。
「マリちゃんってさ、魔法飛ばせる?」
「トバセマセン…。」
最早魔術師じゃ無いね。
「やっぱり。マリちゃんは放出が苦手なタイプなのね。」
「タイプ?」
「そう、女性で剣士になる子の殆どは、魔力はあっても魔法を出せないタイプなの。」
「普通の人は出せるの?」
「ええ。魔法を覚えると同時に飛ばせるわ。魔力量があればだけど、ね…。」
マーラさんは俯く。
が、直ぐに立て直した。
「そんな貴女におすすめなのがこれ!!」
マーラさんは、CMみたいにポケットに入っていたアイテム袋から、瓶に入った飴を取り出した。
「食べてみて?噛んでも良いわよ?でも、絶対に口を開かないで、飲み込んでね。」
よくわからないが食べてみる。
甘い、おいしい。お言葉に甘えて噛む。
中は空洞?いや、何か入っている?
「…!?」
そう思った瞬間、全身に衝撃が走った。
私は慌てて飲み込む。
「…魔力!?」
身体から魔力が溢れ出してくる。
「魔術師なら、必需品よ?魔力の放出が苦手な人はこれを食べて魔力を溢れさせるの。溢れた魔力を魔法に変換すれば、非効率だけど一応魔法は使えるわ。」
言われた通りに溢れ出た魔力で回復魔法を使う。
「服の血が消えた!!」
「良かったわね。お求めは街の日用品店へ。」
「あ、普通に売ってたんだ…。」
私は街の中を見て回ったが、殆どの店は外からしか見ていなかった。
「そう言えば、服、それしか持ってないの?」
「持ってないです。」
お金が無いから買えなかった。
「えぇ!?女の子がそんなんじゃ駄目よ!!今度私が選んであげるわ!!オシャレは女の命なんだから!!」
マーラさんのテンションがどんどん上がっていく。
私はアイリの言葉を思い出し、背筋に寒気を感じた。
「あ、ついでにアイリも!!私がオシャレにコーディネートしてあげるわ!!!」
アイリさんはビクリと身体を震わせた。
「私はいい、服三着もある。」
「それだけしか無いの!!?女の子がそんなんじゃ…。」
マーラさんの女の子像…以前の私には無縁なものだった。あの頃は目立ってはいけなかった。一人でいなければならなかった。友達が親に貶される姿は、絶対に見たく無かった。
彼氏なんてつくっていたらどうなっていたのだろうか?殺されてたかなぁ?
「私も、自分で買いますし…オシャレなんて、盗賊に襲われやすくなるだけですよ!」
咄嗟に思い付いた言い訳で回避しようとする。
マーラさんと服屋は本当に…大変そうだ。
買うなら一人で買いに行きたいな。
初めての服屋、マイペースで見て回りたい。
「貴女の場合、得をするんじゃない?盗賊を捕らえるとお金貰えるわよ?」
回避失敗。言った後に私も気が付いていた。
盗賊=お金
異世界者では定番の設定だね!!
「ふふっ腕がなるわねぇ♪」
「「ううぅ…。」」
…そんなわけで、特に言い訳も浮かばず、マーラさんと服を買いに行く約束をすることになってしまった。アイリもいっしょに。
「おい、お前ら…話してないで、少しはアイテム袋持ってくれよ!!」
沢山のアイテム袋を一人で抱えていたガッドさんが叫んだ。
「私達、女の子だよ?」
マーラさんが言い返す。
「お前は女の子って言うには歳が…」
ガッドさんはぶっ飛ばされました。
結局、軽いので私達も幾つか持つことにした。
「アイテム袋の中にアイテム袋は入らないの?」
私は疑問に思って聞いた。
「無理ね。生きてる物は入らないって聞かなかった?」
マーラさんが答え、聞いてきた。
「聞いたけど………へ?」
「アイテム袋は生きてる。」
アイリが耳元で呟いた。
「へえぇえ!?」
「正確には、とある生物の胃なのよね。」
マーラさんは笑いながら言う。
「私も最初知った時は驚いた。」
アイリも笑っている。
「な、何の生物ですかぁ!?」
「知らない方が良いわよ。」
「知ったら…いつかアレを見た時にトラウマになる。」
私はアイテム袋を摘まむように持った。
ガッドさんも含め、私以外は皆笑っている。
皆初めは皆こうしてしまうらしい。
「マーラなんて、持てるようになったの最近だぞ?」
「私の場合はアレを見た後聞かされたからよ、あぁ…気持ち悪い…。」
私達は街に着くまで、三人の初めてアイテム袋の真実を知った時の話で盛り上がったのだった。
日常系小説ですから。
更新3時間後くらいに見た方がちゃんとしているかもです。
それと、気が付いた方もいるかもですが、話の都合で多少過去改竄したりしています。お許しを(泣)




