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右手の中指 ――エピローグ。そしてプロローグ。

『それじゃあ、3週間後には一旦日本に帰るから』


「うん。楽しみにして待ってるね。思い出話、いっぱい聞かせてね」



 電話の奥で柔らかく微笑み「うん」と囁くのは私の義妹。

 私よりも美人で頭が良くて運動神経も抜群で……何もかもにおいて私よりも長けているけど、私をすごく慕ってくれている。

 少し無表情で感情が動きづらい子だけど、本当は優しい子だって知ってるよ。


 それでもね、少しだけ劣等感、みたいのを感じるの。渚は何でもできちゃうから。私よりもずっとずっと、優秀だから。

 そのうちお父様も私じゃなくってナギのほうが優秀って気づくんじゃないかな。要さんも渚にべったりだし。雄介、も。


 劣等感にまみれた私だけど、渚はそんな私をやさしいといって慕ってくれる。

 だから私も渚のことが大好き。



『朔夜、学校は楽しい?』


「……うん。楽しいよ。でも思い出話は3週間後にとっておこうね」


『それもそうだね。じゃあ、そろそろ切るね』


「うん、バイバイ」



 渚のことは大好きだよ。

 だから、何も言わないね。



「あの、ね、私の左足、もう二度と走れるようにはなれないんだって。右目も、見えなくなっちゃったんだ。親から貰った大事な体なのにね、もうぼろぼろなんだ。この間なんか強姦されちゃったし……しかもはじめてだったし。たい、退学しようとしたんだけどね、理事長がダメだって。がっこ、休みたくても皐月ちゃんに無理矢理連れて来られるし、ファンクラブの人たちも生徒会の人たちも怖いし、先生は誰も助けてくれないし、友達も皆離れてっちゃったし……ごめん、っごめんね、こんな情けない話……聞かせられないよね」



 通話がとっくに切れていてピー、ピー、と繰り返し高音を出す携帯電話。

 それに必死になって話しかけている私は、もう頭がおかしくなっているのかもしれない。

 でもそうでもしないと、もう限界なの。


 もう限界なんだ。



「ゆう、雄介さんはね、婚前交渉は私の価値を下げるから、私に触らないんだって。あの、あのね、すごく優しいんだ。私がファンクラブに制裁されないようにって、私のこと他の人と同じようにあしらうの。こ、恋人らしいことなんて、全然してないんだよ。ナギにはいっぱいデートの話とか、したけどね、全部、うそ。だって、行ってない、一度も行ってないの。わた、わたしね、雄介さんのこと好きだからね、キスだけでもしたいなっていったの。でもね、雄介さんはずっと、まだ早いってばっかで、私ばっかり、私ばっかり雄介さんを好きで……っ」



 渚。

 あの、あの、ね。

 屋上ってね、グラウンドよりも寒いんだ。

 知ってた?


 フェンスの外側ってね、

 風が背中を押してくるみたいですごく怖いんだよ。

 地面が真下に見えててすごく怖いんだ。


 知ってた?



「でも、でもね、でも。雄介さん、ゆう、雄介さんね、皐月ちゃんをだい、抱いてたの」



 ――――ピー、ピー。



「皐月ちゃんがね、ビデオ撮ってて……めぇ、る、きて」



 ――――ピー、ピー。



「雄介さん、もっと私を、追い詰めろって、皐月ちゃんに、ね、いって」



 ――――ピー、ピー。



「雄介さん、そんなに私のことが嫌いだったの?」



 ――――ピー、ピー。



「そんなに渚がいいんだ」



 ね、渚。大好きだよ。

 だから、頑張ってね?








「みんな、死んじゃえ!」



 遠ざかる空に、右手の中指を突き立てた。

 まず最初にお詫びを。予想以上の胸糞展開になってしまいました。

 元の作品の路線を大幅に外れて、くっそドロドロの、いやーな最後になってしまったことをお詫びします。


 言い訳をしますと、元の作品は同じ展開(渚死亡、要死亡、雄介生存)ながら、人物描写をほとんどせず、単純に展開だけを楽しんでもらうコンセプトで書いていたので、すごくシンプルで鬱度も低かったんです。

 なろうで再掲するにあたってはもっとしっかり、詰めるところは詰めようと思い、渚、要、雄介、朔夜にかんしての人物描写をしっかりしようとした結果……こうなりました。


 復讐で人殺すほど執着するって、朔夜に対しての渚の感情は崇拝に近いよね

   ↓

 崇拝や信仰するには、こう、暗い過去が渚にはあって、朔夜がそれを慰めて、みたいな?

   ↓

 でも崇拝ってちょっと歪んでるイメージ

   ↓

 朔夜の性格がちょっと歪んだ


 …………なんでだ。

 いやもうほんと、アホなんじゃないかな。そこ歪ませる必要あったのかな。


 一応フォローしておきますと、朔夜に対する渚の「やさしい」という評価は正しくありませんが、雄介の「渚をペット扱いしてる」という評価も正しくありません。お互い主観なので、色眼鏡で朔夜を見ています。

 まぁ中間をとって、割と普通の人ってとこでしょうか……(無理がある)。

 復讐を望まないほど寛大な人間ではなく、渚のことは好きだけど劣等意識はきちんとあり、恋の成就のためなら渚をイタリアへ飛ばしちゃうほど一生懸命な、普通の、人間! ……?

 でも「私の恋、応援してね」って言いながら周りを牽制する女の子は普通にいますよね。あんな感じだと思います。


 全体としては

 要→渚→←雄介←朔夜 ⇒ (婚約による修正)要→渚 ←雄介×朔夜 ⇒ (朔夜死亡)要→渚×雄介

 みたいな構図。

 うーん、要の矢印がひたすらに可哀想。地獄ではもうちょっとアピールしてください。


 ともあれ、本編はこれで終了です。

 次からは番外編として、IFルートを書いていきたいと思います。

 IF① ⇒ 要ルート

 IF② ⇒ 雄介ルート

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