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1-A

 煙草を咥え、火を付けようとした貴方は、頭上にスプリンクラーがある事に気が付いた。

 もし煙草を吸えば煙を感知したスプリンクラーが室内を勢いよく濡らすだろう。これはしょうがないと懐に戻そうとした貴方は、ふと、ある事に気が付いた。

 換気扇だ。北側の壁に設置された換気扇が勢いよく空気を動かしている。風を利用すれば感知させずに吸えるかもしれない。

 そう思った貴方は換気扇の下へと移動して、魔術を使用して風に流れを生み出した。換気扇のファンに吸い込まれる空気は明らかに勢いを増している。

 これならば安心だろうと貴方を改めて煙草を咥え、火を付けた。

 元々吸い方が上手い貴方は煙を出しているのかは傍目からは分からない。しかし、貴方は換気扇が燻る煙が呑み込むのを見て、安心して煙草を吸い始めた。


 それから暫く経ち、ようやく戻ってきたクロディは、先程の白衣とは違い、胸元を開いた露出の多い出で立ちだ。

 それを見た貴方は無表情だ。あらゆる感情を意図的に廃したのならばおそらくはこの表情になるだろう。──一瞬だけ、視線が胸に移動したのは気づかれなかったらしい、実に幸運である。


「あら、貴方喫煙者だったの?」


 スプリンクラーが作動していないことにはどうやら素で気付いていないらしい。

 水槽近くにあるデスクに腰を掛け、彼女は貴方に向き直った。


「まあ、いいけど。それよりもさっきの話の続きなんだけど、貴方には石呪病の調査をする為に私と世界を巡ってもらうわ」


 一方的な通告に貴方の眉が僅かに上がった。気が付けば義体内部に呼び出された事もだが、どうにもクロディは礼儀や常識、道理と言った最低限のモラルをしらないらしい。

 しかし貴方は首を縦に振った。確かに彼女の行動や態度は腹正しいが、石呪病には興味があったのだ。

 人が石になる病、その全貌は闇に包まれている。未知とは恐怖でもあるが、故に好奇心を刺激するのだ。


 頷いた事に満足気な笑みを浮かべ、さあ行くわよと扉を出ようとしたクロディを貴方は呼び止めた。

 訝しげに振り向く彼女に、貴方は帽子を軽く持ち上げ一礼し、──報酬は何かを聞き始めた。


「……報酬?」


 言われると思っていなかったのか、彼女はポカンと口を開いている。

 クロディとしては、召喚した相手から報酬を請求されるなどと思ってもいなかったのだろう。

 しかし、何事にも対価とは必要だ。労働力を買うのなら、それに見会う何かを支払う義務が発生する。

 故に貴方は正当な権利を主張したのだが、


「無理、お金なんてないもの」


 そもそも金銭は求めていない。何よりこの世界の金銭をいくら得ようとも、貴方の世界で使えないので意味がない。

 なので求めたのは旅の最中の衣食住の保証、そして貴方の琴線に触れた品を五つ入手する事だ。

 まあ、それならと頷いたクロディと固く握手を結び、歩き出した彼女を追い掛けた。

 追い掛けた先にある光景は金属質な光沢を持つ、しかし金属ではありえない生物的な柔らかさと温かさを有する灰色の通路だった。照明はないが、不思議な事に輝いているので歩きにくいと言う事はないだろう。

 だが、模様であるうっすらと浮かぶ青黒い線が脈動するかのように蠢いて見えるのは何故だろうか?

 そんな貴方の視線に気が付いたのか、クロディは得意げに壁を指差し、自らの知識を披露した。


「この工房は竜の体内にあるの。竜種の卵に特定の素材を吸収させる事で産まれる工房竜ウィル。この子は私が一から育てた最高のパートナーなの」


 工房竜ウィル。

 それは錬金術による生命の創造により産まれた種族である。周囲にある物質を吸収し、その属性を創り出す特性のある竜の卵を利用した一種の錬金術であり、賢者の石を材料にする為、高位の術者である証明とされている。

 それを有しているクロディの実力は確かな物であり、中身はともかくとして、彼女も中々の傑物だ。

 しかし同時に、それほどまでの知識と技量があろうとも、石呪病については何も分からない。──だからこそ、彼女は貴方に期待をしているのだ。


「貴方はこの世界にとっての異物よ、だからこそ見える物が違う筈」


 クロディの言葉は熱を帯びている。解明できなかった謎、それが解明できる可能性があると言うのは科学者と言う立場からすれば興奮しない訳がない。同時に、石呪病で苦しむ者達の為を助けられるかもしれないのだ。彼女にとって、貴方は二重の意味で希望だった。


「私も出来る限りの事をするわ。だから貴方も全力で手伝って」


 彼女の言葉に当たり前だと、無言の笑みで貴方は深く頷いた。



 ◆



 工房竜の内部から出た貴方は、工房竜を回収しているクロディを待つ間、手帳に現在までに判明した情報を記していた。

 それは貴方自身、正確には義体の情報や、クロディと名乗る科学者、工房竜、石呪病についてを記している。記録する事で何かが見える可能性があることを貴方はよく知っていたのだ。

 現在までの情報を記し終わる頃にはクロディも工房竜の回収を終えている。さて、移動の開始だ。


 川沿いの道を進んでいくと、途中で十字路が見えてきた。中央にある看板にはそれぞれの行先が記されていた。

 北の道は山へと続いていた。しかし、その先は盗賊の住み処となっているとクロディは嫌そうに顔をしかめている。

 東の道は金鉱で栄えた村がある。今では金は枯れたが、穏やかな気質の村人が多いのでとりあえずで寄るのならばこの道を進むのが良いだろう。

 南の道は更に道が続いている。進む先は更に二股に別れており、南に下る砂漠の国と、東に存在する聖剣の国がある。ちなみに東の村は聖剣の国の領地であるらしい。


「私は何処からでもいいわ──ただ、義体にまだ慣れていないだろうし北に行くのは止めましょう」


 確かに今の貴方は本調子ではない。戦闘を行うのは止めた方が良いだろう。同時に長旅をする場合道中の危険があるのを忘れてはいけない。安全面を考えるなら東の村に行くのが確実だ。



「……そう言えば砂漠の国で石呪病を研究してる人がいるって聞いた事があるわ」


 思い出した情報はそれなりに有益だ。新たに出た情報を加味しながら貴方が選んだのは──


[選択肢

東の村へと向かい情報収集

南の砂漠の国へと向かい情報収集]



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