貴方と科学者
思い付きで書いてます。
「あなた」ならこの状況で何を選択しますか?
見知らぬ部屋の中央、様々な機器が繋がれた水槽の中、ゆるやかに貴方は覚醒した。
水泡がちらつく青緑越しに目があった女性は、目覚めた貴方に薄い笑みで歓迎した。彼女が、貴方を呼び出した物だった。
「はじめまして<無貌の英雄>殿。私はクロディ、世界に喧嘩を売る科学者だ」
ところで義体の調子はどうかしらと聞かれて、彼ははじめて身体を動かす。──多少動かしにくいが、許容範囲らしい。
それを見て、科学者は驚愕の声を上げた。どうやら調整に自信はあったとは言え、本来自身の物ではない身体を動かすと言うのは至難の技であり、それを目覚めた直後に行えた事に驚いたようだ。
何故自分を呼び出したのか、疑問に思った貴方は一先ず水槽の強化ガラスを叩いた。出してほしいと言う意思表示だったが、どうやら彼女には伝わってはいないようだ。キョトンとした顔で首を傾げて、とりあえず会話を優先すると頷いている。
「私が貴方を呼び出した理由はとある病気の撲滅よ──名前は石呪病、あらゆる意味で謎に包まれた恐ろしい病気」
石呪病とは生き物が石になる病だ。──いや、正確には病と言っていいものなのかすら笑ってはいない。何故なら病原菌は発見されておらず、発症する者に共通点はない。おまけに発症から数日以内で完全に石化し、石化したものに触ると九割で感染する致命の病だ。
「感染者を破壊──殺害する事で拡大を防ぐ事も出来るけれど、それでは根本的な解決には至らないわ」
だから貴方を呼び出したのとまな、──胸を張りクロディは自らを讚美する。やっぱり私ったら天才ねふははと笑う彼女は最高に調子に乗っていた。
そんな彼女を一先ず無視して、貴方は水槽を再度叩く。──強度を測るように次第に力を籠めていき、深く頷いて拳を握り締めた。
先程と同じ動作で、しかし力量は比にならない一撃は、容易く強化ガラスを割り砕き、出口を得た液体は瞬間的に外側へと弾けた。
奇妙な奇声を上げ、その液体を丸かぶりしたクロディは避難がましい目を貴方に向けている。当然のように無視された。
全裸である事が耐えられなかった貴方は、<異次元利用型収納空間>より、仕事着であるスーツと、愛用の帽子を被り、僅かに笑みを浮かべた。やはり全裸は嫌だったのだろう。
「……何か言うことは?」
貴方に向けられるクロディの視線は禍々しい思念が渦巻いている。視線で人を呪えればと、物騒きわまりない言葉が口の端から漏れていた。
しかし自分勝手な召喚者に対して、貴方は当然気にする事もなく、肩を竦めて無視をした。そもそも水槽越しに話さずに先ずは出す事を優先すればこんな事にはならなかっただろう。仮に誰かいたとして、庇い用のない自業自得である。
流石に自分自身でバツが悪かったのか、クロディは唸りながらもそれ以上文句を漏らすことなく、貴方を睨み付けている。
そして、
「着替えるからちょっと待ってなさい」
その言葉だけ残してクロディは部屋を後にした。残された貴方は、
[選択肢
スーツの内側から取り出した煙草を咥える
<異次元利用型収納空間>から携帯食料を取り出す]
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