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キーホルダー戦記タクヒナ!  作者: フィーカス
キーホルダーの世界へ
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帰り道とキーホルダー2

 高校からの帰り道にある小さな雑貨屋。最近はデパートや大型の雑貨店などの量販店に押され気味だが、他の店にはない品ぞろえのよさのために、女子高生の間では人気がある。値段はやや高いものの、精巧な造りのアクセサリーには定評があり、特にキーホルダーについてはよく売れているようだ。

 雑貨屋の扉を開けると、チリンという涼しげなベルの音が鳴った。先ほどのコンビニとまではいかないが、涼しい風が店内から吹いてくる。

 店内には同じ高校の生徒が数名いるだけで、静かだった。話し声よりも、店内に流れる、流行のJ-POPの音楽がはっきりと聞こえてくる。

 ヒナは店に入ると、早速キーホルダーのコーナーに向かった。動物のキーホルダーはある程度持っていたので、何かキャラクターのキーホルダーが無いか探していた。

「あ、これ私っぽい」

 いくつかある女の子のキーホルダーの中から、栗色の髪をした、白いワンピースを纏った女の子のキーホルダーを手に取り、それをレジに持っていく。

「これください」

「はい、えっと、五百八十円ね」

 ヒナは財布から千円札を一枚取り出し、店員に手渡す。

「あ、すぐつけますから」

 店員が袋に入れようとすると、ヒナはそう言って包装を断った。店員はヒナが買ったキーホルダーについていた小さな値札タグを外すと、お釣りとともにヒナに渡す。それを受け取ると、ヒナはすぐにショルダーバックに取り付けた。

「こういう人型のキーホルダーって、あまり売れないんですよね。久々に売れてよかったです」

 嬉しそうに取り付けるヒナを見て、店員は思わずそう口にした。

「え、そうなの? 結構かわいいのになぁ」

「売れるのは、ほとんど動物のものやキャラクターのものなんですよ。誰かわからない人型のキーホルダーは、見向きもされないんです」

「へぇ、みんな見る目がないのかなぁ」

「多分ですけど……多少デフォルメされているとはいえ、ちょっとリアルすぎるんですよ。だから、あまりかわいいと思われないんじゃないかと。うちもいろんなメーカーから仕入れていますけれど、そういう元のモデルが不明な人型のキーホルダーは一か所しか扱っていないんですよ」

 そういうと、店員は先ほど外したタグをヒナに見せた。そこには「(有)山串製作所」と書かれてある。

「ここのキーホルダー、キャラクターものや動物のものなんかもかなり精巧に作られていて評判なのですけれど、何故か人型のキーホルダーをよく勧めてくるんですよ。付き合いがあるので少しは仕入れているのですけれど、本当に変わった人しか買ってくれなくて」

「え、わ、私変わり者ですか? そういう風に見えます?」

 突然ヒナが大声で叫ぶので、店員は慌てて「いや、そういうわけではなくて」とフォローした。

「なんというですかねぇ、他の所を見ずに、まっすぐに人型のキーホルダーのコーナーに向かっているというか……まるで、誰かに導かれるような感じで」

「あれ、私、そんな感じでしたか?」

「そうですね、そんな感じでした」

 ふと後ろを見ると、客の女子高生がヒナの後ろで会計待ちしていた。ヒナは慌ててレジの前から離れる。

「えっと、また来ますね」

「はい、ありがとうございました」

 店員の声を聞くと、ヒナは店から出ていった。


 店を出ると、先ほどまで強かった日差しが少し和らいでいるように思えた。何もない青と雲の白が半々だった空は、心なしか雲が多く見える。向かう先の空を見ると、大きな入道雲が見えた。

「夕立、来るかなぁ」

 一雨来る前に、急いで帰ろうと、ヒナは少し早足になる。白い雲は徐々に灰色になっていき、あたりが少し薄暗くなっているような気がした。

 交通量の多い交差点に差し掛かると、歩行者用の信号機がタイミング悪く青から赤に変わるところだった。仕方なく、ヒナは横断歩道の前で足を止める。

 それと、同時に携帯電話の着信音が鳴った。バッグから携帯電話を取り出すと、友人からメールが来ていた。それを確認し、信号を気にしながらも、返信メールを送る。送信を確認すると、すぐさま携帯電話の着信音が鳴った。別の友人からメールが来たようだ。

 信号を見ると、赤から青に変わる瞬間だった。ヒナは歩きながら、返信メールを作成する。

 横断歩道の半分ほどまで歩いたとき、急にブレーキ音が聞こえた。その音の方を振り返ると、トラックがヒナめがけて突っ込んできているのだ。

「……え?」

 ヒナ何の反応も出来ず、ブレーキが間に合わなかったトラックに激突し、数メートル先に飛ばされた。かすかに聞こえる悲鳴と、風の感触、そして、ぽつりぽつりと降り出した雨を肌に感じながら、ヒナは徐々に意識を失った。

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