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キーホルダー戦記タクヒナ!  作者: フィーカス
山串製作所の秘密
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ナカダ組と山串製作所1

 山串製作所の近くにある公園は、ブランコに滑り台、砂場にベンチといった、よくある遊具が並べられた簡易的なものだった。徐々に強くなる日差しに、公園の土の温度が上がっていく。時折吹く風は、そんな土の熱を運び、どこへともなく消えていく。

 砂場では悠とジュジュが、砂を積み上げて山を作っているようだ。道路側にあるベンチで、氷点とエミはその様子を見ていた。

「喋るキーホルダーって、ヒナ、って呼んでいたあのキーホルダーだけですか?」

 相手が相手からだと思ったのか、エミは丁寧語で氷点に話しかけた。

「いえ、後悠が持ってる、銀髪で黒い服を着た男の子のキーホルダーがあるでしょ? あれがタクっていうの。で、私の持っている、この金髪の男のキーホルダーが」

 そういうと、氷点はかばんにぶら下げていたサクのキーホルダーを手に取る。

『おう、俺はサク。よろしくな、エミちゃん』

 エミはぶら下げられたサクをじっと見つめる。

『な、なんだよ、そんなに見つめられると恥ずかしいじゃねえか』

「別に恥ずかしがることないでしょ。小学生に見つめられて何言ってるんだか」

 氷点がサクに向かって話しかけているのを見て、エミは「えっ」と声を出した。

「えっと、このキーホルダー、今喋っているのですか?」

「……? あれ、サクが喋ってるの、聞こえてるんじゃないの?」

 氷点はぶら下げていたキーホルダーをベンチの上に置いた。

「いえ、私はキーホルダーの声が聞こえないのです。ジュジュがキーホルダーの声が聞こえるらしくて、時々妙なことを言ってるんですよ」

「へえ、ジュジュちゃんが」

 ふと氷点が砂場のジュジュの方へ目を向けると、いつの間にか砂の山が謎のキャラクターに変化していた。一体何をやっているのかしら、と思いながら氷点は再び視線をベンチのキーホルダーに戻した。

「今まで喋るキーホルダーの声が聞こえる人間なんて、私と悠くらいだったからね。それに、キーホルダーの能力使って戦える相手も、悠だけだったし」

「キーホルダーの能力? 喋るキーホルダーを持ってると、何か使えるんですか?」

「あら、しゃべるキーホルダーの存在は知っているのに、そういうことは知らなかったかしら?」

「はい。何しろ、ジュジュが『あのキーホルダーがしゃべった』とか、その話の内容とかを聞いているくらいですから」

「なるほど、じゃあ私たちが知っていることを、最初から話す必要があるみたいね」

 大きな木の葉が影を作るベンチに、かすかな風が一つ、氷点とエミの髪を揺らす。


 氷点はエミに、しゃべるキーホルダーに関することをいろいろと話した。悠が持っているヒナとタク、氷点が持っているサクという三つのキーホルダーがあること、そのキーホルダーの力を借りることで、様々な能力が使えること、そしてケンというキーホルダーが、山串製作所のことを知っていること。

「しゃべるキーホルダーを持っていると、そんなことが出来るのですね」

「ええ、だから、ほかにもそういうキーホルダーがないか、どうしてしゃべるキーホルダーなんてものが出来たのか、そういうことが知りたかったの」

「それで、うちに聞きに来たのですね」

「そうよ。このキーホルダーを作っている会社、山串製作所の人なら、何か知っていると思って」

「そうですか」

 ふむ、と首を縦に振りながら、エミは氷点の話を聞く。

「私の父は」

 長い髪をいじりながら、エミは遠くを見つめて続けた。

「母と別れてからずっと、キーホルダー作りに没頭しているのです。それで、私とジュジュの面倒は、いつもオギさんが見てくれていて……」

「え、オギさんが? お手伝いさんとかではなくて?」

「ええ。オギさんは、料理や掃除、受付までいろいろな仕事を、一人でこなしているのです。すごい人ですよ」

 そう言われて、氷点はオギの姿を思い浮かべた。確かに紅茶を入れる姿は様になりそうだが、家事をする姿は想像できない。

「オギさんのおかげで、父さんはキーホルダーを作るのに集中できるようになったのです。手作業で作る父のキーホルダーは人気があって、今では二ヶ月ほど先まで、予約でいっぱいなのだそうです」

「確かに、山串製作所のキーホルダーは、若い子の間でかなり流行っているわね」

「でも、手作業だと生産量が限られるし、効率を考えるとほぼ赤字になるのです。ですから、社員の人からは量産できるようにしようって、ずっと言われていました。それでも父は、手作業にこだわってしまって」

 エミは寂しそうな顔で空を見上げた。すっきりとした夏空。その青い色も、少し色褪せて見えた。

「でもある時、このままじゃ続けていくことが出来なくなると言われたのです。私たち子供も養えなくなるし、従業員の給料も払えなくなると、当時経理をやっていた人から。仕方なく、父は大量生産できる機械を導入して、別のところに工場を建て、キーホルダーを大量生産することにしたのです。特に人気だった動物や植物のキーホルダーが安く売られるようになって、売り上げは伸びました。ただ、その機械を買う時に、借金が必要になって……」

「なるほど、それでナカダ組ってところで借金したわけね。それで、取り立てに来ていると」

「そうです。でも、それがどうもおかしいのです」

「おかしい?」

 一体何がだろう、と氷点は首をかしげた。

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