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キーホルダー戦記タクヒナ!  作者: フィーカス
山串製作所の秘密
25/45

事務所の中へ2

 悠たちが二階に上がると、長い通路があり、いくつかのドアが見えた。二階には、何部屋かあるようだ。

「……この建物は一体どういう造りになっているのかしら?」

 氷点は一つの部屋しかない一階のことを気にしながらつぶやく。

 トントン、と階段から一番近い部屋のドアをオギが軽くノックすると、「失礼します」と言って真っ白なドアを開いた。

 扉の向こうは作業場のようだ。たくさんの段ボールが積まれ、見たことが無い機械や工具がたくさん置かれている。そしてその一角の作業台の上では、四十代ほどの男性が作業をしていた。

「旦那様、十時にアポイントを取られたお客様、氷田様と風見川様をお連れしました」

 オギはその男性に声をかけると、男性はこくりとうなずいた。それを確認し、オギは「こちらへどうぞ」と悠たちを中に招き入れた。

「当社の代表取締役、岩本倫太郎(いわもとりんたろう)でございます」

「代表……って、偉い人のことか?」

 悠のとぼけた質問に、氷点ははぁ、とため息をつく。

「代表取締役、いわゆる社長さんよ」

「社長!? 社長自らがキーホルダー作ってるの!?」

 あまりの驚きの表情を見せる悠に、氷点は頭を抱えた。オギはその様子を見て、「ハハハ」と笑ってみせる。

「以前は当社も、何名かの従業員、ならびに職人がいらっしゃったのですが、現在では当社の都合で別の工場で働いております。ですので、現在ここでキーホルダーを製作しているのは、代表取締役の岩本のみとなっております」

「へぇ、社長も大変なんだなぁ。偉くなれば、もっと楽ができると思ってたのに」

 悠が周りを見渡しながらつぶやくと、氷点が脇腹に肘鉄を食らわせた。悠は「ぐふぅ」とうめきながらその場でうずくまる。

「それでは、私はここで失礼いたします。何かご用件がありましたら、隣の執務室にいますので、何なりとお申し付けください」

 笑いながらそういうと、オギは扉の前で一礼し、部屋を出て静かに扉を閉めた。


「初めまして、岩本社長。私は氷田零。氷田か氷点でいいわ。で、こっちが私の荷物持ちの風見川悠よ」

 氷点は作業している、岩本と呼ばれた男性に声をかけた。

「何で俺はお前の荷物持ちになってるんだよ」

 悠が突っ込むが、氷点は知らん振りをする。

「……わしに何か用か?」

 岩本はこちらを向かず、作業する手を止めずに話しかける。

「ここにあるのは、社長が作られたものなのかしら?」

「ああ、今はわし一人だからな。他の工場では大量生産のものを作っているが、手作りの物はここでわしが作っておる」

「これだけの量を、一人で、ねえ……」

「これも仕事だからな。ところで、お前たちはそんなことを聞きに来たのか?」

 岩本に言われ、氷点は「そうそう」とハンドバッグに手を掛けた。

「実はこのキーホルダーなんだけど」

 氷点はぶら下がっているキーホルダーのうち、金髪の男の形をしたキーホルダー、サクを手にとってぶら下げた。

『お、おい氷点、一体なにを……』

 サクが話しかけた瞬間、岩本の手が止まり、急に振り返った。

「……今の声は?」

「あら、あなたにも聴こえたかしら。さっきの声はこのキーホルダーのものよ」

 氷点はそういうと、手に持ったキーホルダーを岩本の前に差し出した。

『お、おい、待て、どうする気だ』

 サクがしゃべりだすと、岩本は「ほぅ」と驚いた。

「これは、もしや……お前たち、これをどこで?」

「キーホルダー自体は、お店で買ったものよ。ただ、しゃべっているのはまた別件のことなの。ちなみにこのキーホルダー、ここで作られているようなのだけれど、何か知っていることは無いかしら?」

 岩本は氷点がぶら下げるキーホルダーをじっと見ていたが、しばらくすると作業をする手をとめて立ち上がった。

「立ち話も何だ。向こうで話を聞こう」

 そういうと、岩本は作業場から出ていった。その後を、氷点が追う。

「ほら、悠、何してるのよ、早く行くわよ」

 何故かぼうっとしている悠を見て、氷点は悠に呼びかけた。

「え、あ、おい、ちょっとまてよ」

 あわてて悠も、氷点の後を追った。


『マスター、何でぼうっとしてたんだい?』

『きっとタクたんはえっちなことでも考えてたんだよ』

「ちげえよ! 何でここに来てそんなことを考えないといけないんだよ!」

 悠が思わず叫び声を上げると、氷点が「静かにしなさ、このフランクビッツ!」とささやいた。

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