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キーホルダー戦記タクヒナ!  作者: フィーカス
キーホルダー・ハンター
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キーホルダー・ハンター3

 閑静な住宅街に吹き抜ける風は、夏とはいえ冷たく肌をなでていく。その風が吹き止むのを待つかのように、対峙する二人は動かない。

 悠の右手には、赤い光の塊が浮かぶ。一方のスキヤも、気がつけば両手に白い光の塊を作っていた。

 緑色の葉が数枚舞い、通り過ぎていく。やがて、その風も収まった。

「いくぜ!」

 まず切り出したのは悠。右手を高く上げ、勢い良く振り下ろす。

「食らえ! 進火炎エヴォリューション・フレア!」

 悠が叫んだ瞬間、手のひらに作った赤い塊がその手から離れると、瞬時に複数の火の玉へと変化し、スキヤに向かって一直線に飛んでいく。しかし、スキヤも同時に、両手を左右に振る。そして、手のひらの白い光の弾を放った。

 複数の火の玉は光の弾に当たり、いくつもの小規模な爆発を起こす。もちろん、この光景は本人たちと、つけているキーホルダーにしか見えていない。

『おお、悠たんの中二病が炸裂したよ!?』

『ヒナ、油断してないで、マスターに力を与え続けるんだ!』

 タクとヒナは意識を集中させ、悠に力を与える。

「まだまだ!」

 その力をエネルギーに替え、悠はさらに右手に連続して赤い塊を作り、即座にスキヤに向かって放つ。それに合わせ、スキヤも同じくらいの光の弾を即座に作り出し、迎撃を試みる。

 悠とスキヤの間には、何度も小規模な爆発が起こり、熱を帯びない爆風がそのたびにこちらに吹いてくる。

『おお、すきゃたん強いねぇ』

『すきゃじゃなくてスキヤね。それはそうと、相手の心配している暇はないよ』

 ところどころで集中力が切れるヒナに対して、タクが注意を促す。そんなやり取りなど気にせず、悠は途切れることなく火の玉を放ち、スキヤを追い詰めようとする。

「はぁ、はぁ、や、やるじゃないか」

 息を切らしながら、悠は何とか次の攻撃の準備をする。多少押されていることから、今度はスキヤの攻撃を迎撃しようと考える。しかし、悠が攻撃をやめた瞬間、スキヤも攻撃の手を止めた。

『なるほど、悠は火の属性ね。道理でなかなかの攻撃力なわけだ。でも』

 ケンが言い終わるのが早いか、スキヤは右手を上げ、そこに光の弾を作ると、すぐさま悠の方へ振り下ろす。飛ばした光の弾は、次の瞬間複数の岩の塊と変化した。

『こっちは地属性。めんどくせぇほどの火力じゃないと、この岩の塊は焼けねえぜ?』

 悠はあわてて岩の塊に火の塊をぶつける。いくつか迎撃できたものの、そのうちの一つが悠の体にヒットした。悠はその岩ごと吹き飛ばされ、そのまま地面に倒れこんだ。

「ぐほっ、痛くないけど痛ぇ」

 岩があたったダメージは無いが、衝撃で地面に叩きつけられた時の痛みが悠を襲う。

『悠たん、大丈夫?』

「うん、ぜんぜん大丈夫じゃない」

 げほげほと咳き込みながらも、悠は何とか立ち上がる。

『やれやれ、この程度でダウンしてたら、単なるめんどくせぇ奴になっちまうぜ?』

 ケンが悠の姿を見て言うと、スキヤは両手を挙げてその手のひらに意識を集中させた。

『まあいいや。そろそろめんどくせぇから決着つけさせてもらうよ』

 手のひらには先ほどとは比べ物にならないほどの巨大な光の弾が形成されていく。直径三メートルほどになったところで、光の弾は巨大な岩となった。

『さてと、こいつをよけることができるかな? 結構めんどくせぇぜ?』

 作り上げた巨大な岩を、スキヤは右手の上に浮かべて後ろに引く。悠はそれを見て、何とか迎撃の一手を取ろうとするが、同じ大きさの火の玉を作るにはまだまだ時間がかかりそうである。

 スキヤはそんな悠の行動など知らず、思い切り右腕を悠に向かって振りかぶり、巨大な岩を放った。放たれた岩は重力を無視するかのように、悠に向かって一直線に走る。

 ぎりぎりまで右手に意識を集中させてきた悠も、岩の塊をよける体勢をとった。しかし、とはいうもののどうよければいいのか分からない。

「くそ、どうすりゃいいんだよ!」

 うろたえている悠に、岩の塊が迫る。

『悠たん、地面に伏せて!』

 突然、ヒナの声が聞こえると、条件反射的に悠は地面に這うように伏せた。間一髪、巨大な岩は悠の頭上を通過し、そのまま向こうの道路に消えていった。

『へぇ、あの攻撃をよけるなんて、やるねぇ』

 ケンは驚きの声を上げたが、大して驚いていないようである。

「フッ、俺にそんな攻撃は効かないぜ」

 悠はゆっくりと立ち上がり、衣服の汚れを手で払う。

『偶然……? いや、さっき悠がよける前に、ヒナの声がしたな。そういえば、たしかそんな能力が……』

 うーん、というケンの声が聞こえてくる。

『ああ、思い出した。悪夢予知だっけか。マスターの危険を夢で見るとかいうめんどくせぇ能力』

『おお、ケンたん物知りだねぇ』

 ケンの知識に、思わずヒナは声を出した。

「ま、そういうことだ。お前の攻撃は効かないってことさ。諦めて盗んだキーホルダーを全部こっちに渡しな」

 右手を出し、悠はキーホルダーを渡すように促した。だが、スキヤは微動だにしない。

『確かにめんどくせぇ能力だよ。でもね、その能力には弱点があってね』

 再びスキヤは両手を上げ、光の弾を作り出す。

「え、ちょ、マジか!?」

『そんな、あれだけの大技を出しておいて、まだエネルギーが残ってるなんて』

 スキヤの行動に、悠だけでなく、タクまで驚く。

『人間は、キーホルダーもそうだけど、一回の眠りで四度の夢を見るっていうだろ? でも、、めんどくせぇことに、覚えているのは最後の一回なわけ。さて、さっきのは予知夢でよけられたけど、次はどうかな?』

 ケンが話す間にも、光の弾は大きくなっていく。やがて、先ほどと同じ大きさになると、再び巨大な岩へと姿を変えた。

『そうだなぁ、さっきは水平に投げちゃったからね。上から落としても、同じようによけられるかな?』

 スキヤの手のひらの上の岩は、少しずつ空に向かって上昇していく。

「ま、待て、ヒナ、あれをかわす方法は!?」

『えぇ、そ、そう言われても、夢で見たのはさっきの攻撃までだし』

 悠とヒナが言い合っているうちに、岩は二十メートルほど上がっていた。そこでぴたりと止まると、スキヤは左手を下ろし、右手を悠に向かって振りかぶった。

 岩はゆっくりとしたスピードから徐々に加速していき、さながら隕石のごとく悠に向かっていく。

「くっ、あんなの食らったら俺は……」

『悠たん!』

 加速した岩をかわすにも、どうにも間に合いそうに無い。

 コレまでか、と悠は両腕で頭を守り、目をつぶった。

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