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キーホルダー戦記タクヒナ!  作者: フィーカス
キーホルダーの世界へ
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二人目のキーマスター3

 氷点の右手に浮かぶ青白い光は徐々に大きくなり、およそバスケットボールほどの大きさにまで膨らんだ。

『準備はできたかい? じゃあ、いくよ』

 それを見て、サクが呟く。

「ええ、いつでもいいわよ」

 それを聞いて、氷点はあっさり返す。

『いくぜ! ふとんが……ふっとんだ!』

 悠とタク、ヒナの耳に妙なダジャレが聞こえてきた。それを聞いて、ヒナはぽかんとする。

『え、い、今のは……うわぁっ!』

 それと、同時に急に風が吹いてきた。よく見ると、無数の白い粒が風と共に襲い掛かってくる。

『な、何で? 今は夏なのに、何で吹雪が吹くの?』

『これが氷点の攻撃方法さ。彼女は氷属性を持っている、氷や吹雪といった冷気系の攻撃が得意なのさ。加えて、サクの能力があるからね』

『サクたんの? もしかして、さっきの駄洒落?』

『その通り』

 吹雪が、タクやヒナを含む悠のキーホルダーを揺らす。タクが説明していると、徐々にその吹雪が収まっていく。その間、悠はずっと腕で吹雪を防ぎながら飛ばされないように足を踏ん張っていた。

『サクはとても寒い駄洒落や笑えないギャグを言うことで、周囲の気温を低下させたり、体感温度を下げたりするのさ。それによって、氷属性の威力をアップさせるんだ』

『ふえぇ、とんでもない能力だねぇ』

 ヒナがサクの能力に感心をしていると、吹雪が完全に収まった。悠はよほど寒かったのか、両手をこすって震えている。

『わっはっは、どうだい、零ちゃんの攻撃と、この俺、サクの能力、《秘話の寒冷前線ブリザード・ギャグ》のコンボは!』

「零ちゃん言うなこのブリザードポンコツが!」

『ひぎゃぁぁ、もっとぉぉぉ!』

 氷点はイラつきながら、サクのキーホルダーに指先に作った氷の塊を押し付ける。サクは叫びながら何故か歓喜の言葉を呟いていた。 

「……っと、攻撃はまだ終わってないわよ」

 そういうと、氷点は右手の人差し指で円を描き、右から左へとスイングする。左肩当たりに来たところで、再び先ほどと似たような青い塊が徐々に出来上がっていく。腕を右側に振り払うと、今度は青白い氷の弾丸が、一発、また一発と悠めがけて飛んできた。

 吹雪の攻撃を耐えた悠は、その攻撃をかわす体勢を整えている。

「ふん、そんな攻撃!」

 一発目が悠の右足に当たる。

「この俺が!」

 二発目は左腕に当たった。

「かわせないとでも!」

 そして右手を貫く。

「思ったか!」

 直後に左足のひざを強打した。

「あまいぜ、氷点……げふぅ」

 最後の五発目は腹に直撃する。そして、悠の体が吹っ飛んだ。

『ゆ、悠たん、大丈夫?』

「あぁ、なんとか大丈夫だ……げふっ」

 ひどくぼろぼろになった悠は、なんとか立っている状態である。

「やれやれ、また一方的な展開ね。そろそろ終わらせましょうか」

 そういうと、氷点は右手の手のひらを空に向け、意識を集中させる。先ほどよりも大きな青白い光の玉が、その手のひらに出来上がる。

「さてと、悠、これで最後よ!」

 大きな光は瞬時に氷の塊となった。そして、氷点はそれを悠に向かって投げる構えをする。

「いくわよ! 《圧殺氷塊アイスラッシャー》!」

 氷点が思い切り右手を振りかぶると、その巨大な氷の塊が悠に向かって飛んでいく。

『……はっ、もしかして』

それをみて、ふとヒナは今朝の夢を思い出した。

『悠たん、左によけて!』

 ぼうっとしていた悠は、その言葉を聞いて反射的に体を左にそらした。巨大な氷の塊は悠の体をかすめるが、ぎりぎりのところで当たらず、そのまま通過していった。

「な……私の攻撃を……かわした!?」

 必中必殺と思っていた攻撃をかわされた氷点は、驚きのあまり言葉を失った。目の前には、息切れしながらも立ち上がろうとする悠の姿がある。

『おぉい、悠のやつ、よけやがったぜ? どうするよ?』

「どうするよって、あんたまだ大丈夫なの?」

『いや、さっきので俺のエネルギーは尽きたっぽいな』

 氷点とサクが言い合っている間に、悠は立ち上がってほこりを払う。

「ふ、フフフ、見たか、俺の華麗なる回避術を!」

 何故か悠は自慢げに氷点を指差しながら言った。

「どうする? お前の必殺技はもう見切ったぜ。これでも続けるつもりか?」

 悠の宣言を聞き、氷点はお手上げのポーズをした。

「はぁ、まったく、マグレとはいえかわされるとはねぇ。仕方ない、今日は引き上げるわ」

 やれやれ、と氷点はくるりと後ろを向き、歩き始めた。数歩歩いたところで、ふと悠のほうを振り返る。

「あ、ヒナちゃんだっけ、またいつか会いましょうね」

 そういうと片手を振りながら、真夏の道を歩いていく。そして、氷点は真夏の陽炎の中へと消えていった。

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