表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
キーホルダー戦記タクヒナ!  作者: フィーカス
キーホルダーの世界へ
10/45

二人目のキーマスター2

 だんだんと高く昇っていく太陽が、徐々に涼しい日陰を奪っていく。それにつれて現れる日なたが、さらけ出している素肌をじりじりと焼いていく。

「とにかく、今日という今日は生かしておけん! 氷点、勝負だ!」

 悠は片手と片足を突き出し、戦闘態勢に入った。

「はぁ、仕方ないわねぇ。またフルボッコにしてあげるわよ」

『おい悠、また零ちゃんの冷気弾でやられたいのか? お前は本当Mだよな』

「零ちゃん言うなこのストロングマゾが!」

 サクの言葉に、思わず氷点がぺしぺしとサクのキーホルダーを叩く。

『ひぃぃ、もっとぉぉ!』

『はは、サク、キーホルダーに痛覚なんてないよ』

 サクと氷点のやり取りに、タクが呟いた。

『わ、わかってるよ、気分よ気分! それくらいタクなら察してくれると思ったんだがなぁ』

『あいにく、僕はそういう空気は読み取れないからね』

 タクがそう言うと、氷点は「はいはい」と話を切った。

「さて、冗談はこの辺にしておいて、勝負するなら容赦しないわよ、悠!」

 悠の構えに応え、氷点も戦闘の構えを見せる。とはいっても、両手をそれっぽく構えただけで、先ほどまでの状態から大きな動きはない。

『はぁ、結局こうなるのね』

『え、タクたん、何が始まるの?』

『二人のバトルだよ。キーマスター同士のね』

『え、バトルって、二人で戦うの?』

『そう。キーマスターはキーマスター同士で戦わなければいけない運命にあるんだ』

 タクはトーンを落とし、真剣にしゃべる。

『えぇっ、そんな過酷な運命が……』

『ってマスターが言ってたけど』

『な、なんだ、やっぱりタクたん、中二病なんだね』

『まあ、それがマスターだから仕方ないよ』

 ハハハ、とタクは笑っているが、ヒナははっと思い返した。

『って、そんなこと言ってる場合じゃないでしょ! 早く止めなきゃ!』

『大丈夫だよ。バトルって言ってもたいしたことないから。多分』

『えぇ、多分って』

『今までが今までだったからね。それより、ヒナも準備しておいてね』

『え?』

 突然タクの口から出た「準備」という言葉に、ヒナは言葉が詰まる。

『わ、私、何をすればいいの?』

『マスターのサポートさ。まあ、すぐにわかるよ』

 わけが分からないまま、ヒナは悠と氷点の様子を伺う。決して冷たいとは言えない風が、それでも悠と氷点の二人の体を通り抜ける。

『……あれ、でも氷点たんってどこかで見たような……』

 ふと、ヒナは氷点の体をじっと見つめた。顔は覚えていないが、どうも見た覚えがある体つきをしてる。

「いくぞ氷点! わが必殺技を受けてみよ!」

 悠は構えた手を集中させる。

『え、うわっ!』

 突如、ヒナは全身から力が抜けるような感じがした。同時に、悠の手には赤い塊が生成されていた。

『ああ、感じたかい? マスターたちキーマスターは、キーホルダーをエネルギー源としてバトルをするんだよ』

『え、エネルギー源って、私の体力、吸われちゃうの?』

『えっと、少し違うけど、似たようなものかな……』

 タクが説明していると、悠の手にあった赤い塊がかなり大きくなっていた。

「タク、アレ行くぞ」

『ああ、アレね。はいはい』

 タクが力ない返事をすると、タクの体から湯気のようなものが立ち上った。タクの言う、エネルギーが放出されているようである。

「赤く燃え上がる紅蓮の槍よ、憎き欲女を貫け! 獄火灼炎槍メギドバーニングランス!」

 悠が謎の厨二呪文を唱え終わると、赤い塊から無数の小さく鋭い炎の槍が飛び出し、氷点に襲い掛かる。しかし、その槍をあっさりと氷点は次々かわしていく。

『わわ、そんなの撃ったら街が壊れちゃう!』

『大丈夫だよ。この攻撃はキーマスターのイメージでしかないから、キーマスターと僕たちキーホルダーしか見えないし、当たり判定もないのさ』

 氷点がいた場所の先を見ると、先ほど氷点が避けた炎の槍はどこにもなく、消えていた。

『周りの人には見えないし、当たらないのさ。だから……』

 タクが言うと、ヒナとタクは後ろを見た。後ろには、親子が歩いている。

「おかあさん、あのおにいちゃんとおねえちゃん、なにしてるの?」

「ダメよ、見ちゃ。きっと、私たちに分からないような儀式をやっているのよ」

 母親は子供の手を引き、あわてて歩き去ってしまった。

『……周りから見ると、二人して奇妙なことをしているように見えるのさ』

『これは人がいないところでバトルしたいね……』

 二つのキーホルダーが話している間に、悠の手にあった赤い塊は小さくなり、やがてなくなって赤い槍を発射しなくなった。あれだけあった槍を、氷点は全てかわしたようだ。

「まったく、何も変わってないわね」

 はぁ、と両手を広げながら氷点はため息をつく。

「さてと、次はこちらの番かしら。サク、行くわよ」

『はいはい、じゃあ、いっちょいきますか』

 そういうと、氷点は右手の人差し指を天に向けた。それを見て、悠は身構える。

「行くわよ!」

 氷点の指先に、小さな氷の結晶のようなものが集まってくる。その指先には、徐々に青白い塊が生成されていく。

『え、え、何が始まるの?』

 ヒナはその青白い塊を見て、悠に尋ねる。しかし、悠は答えようとしない。

『来るよ、マスター』

 タクが警告すると、悠は「わかってる」と怒鳴った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ