プロローグ
女の子は誰にでも、理想の王子様が居る。
いつかきっと、迎えに来てくれる。そう信じている人も多いのだ――
私は高校を卒業すると就職もせずにアルバイト生活を送っている。
ごくごく普通の女の子だ。
もちろん、私にも理想の王子様が居る。
格好良くて運動神経も良くて、レディーファーストで優しくて……。
言いだすと、キリがない程の王子様だ。
気が付けば二十五歳。
【王子様】なんて、言える歳じゃなくなっている。
そんな私の欠点は、何をやっても中途半端で長続きしない事だった。
すぐに飽きてしまう。
けれど唯一、続いている事がある。
それはダンスだ。
きっかけは二歳の頃だった。
親戚の集まりで大人達が楽しそうに会話をしている中、私は退屈で泣いていた。
見かねた叔母は、とあるダンス教室へと連れて行ってくれた。
そこは叔母が経営するダンス教室で、まだ開業したばかりだった。
壁一面に大きな鏡が張られ照明も明るく、私にとっては新鮮な部屋になっていた。
さっきまで泣いていた私は、音楽に合わせて踊る叔母の真似をして楽しんでいた。
ダンスの虜になった私を見た叔母は、両親に話し私を最初の生徒にしてくれた。
毎週土曜日がダン日となり、昼十時から夜九時までの時間をとにかく楽しんでいた。
どんなに踊っても疲れる事が無かった。
ところが小学校高学年の頃、大人の事情でダンス教室が終わってしまう。
その頃になると新しいダンス教室へ行くにも今までの倍、金額が掛かる所ばかりだった。
家にそんな余裕は無く、家でダンスを踊るしかなかった。
録画した音楽番組を何度も見ては、アイドルのダンスを覚える事が楽しくて日課になっていた。
それは、大人になった今も、変わっていない。
一人暮らしの部屋で毎日のように踊っている。
そして私には、もう一つ夢中になる事があった。
それは……




