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あの娘は発電機(She Is Electric Generator)  作者: 枕木悠
第四章 ストレート
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第四章④

「くそったれ!」

 ミアは錦景市の市旗を没収して五人を競技場の中から外の噴水の前に連行した警備員たちに向かって吐き捨てるように言った。「こっちは静まり返ってまるでお葬式みたいな会場を盛り上げてやろうと思ってやったんだっ、わざわざ旗まで持ってきて盛り上げてやったんだっ、それなのに酷い、あんまりだわ、私たちを追い出すなんて、くそったれ!」

「ミア、止めなって、」ミヤビは興奮の収まらない彼女を後ろから抱き締めて言う。「さすがにまずいって」

「何がまずいって言うの、私たちは応援していただけよっ、何も間違ったことはしてないわ、追い出されることは何もしてないでしょ?」

「そうだけど、いや、ちょっと、ここには相応しくなかったんだよ」

「相応しくない?」ミアはミヤビを睨んでいる。「何が一体全体、相応しくないって言うの?」

「旗は振るべきじゃなかった」

「ロンドンでは普通よ、ロックのライブでも、フットボールでも、トラック競技でも、ロンドンでは旗を振るのよっ!」

「ここはロンドンじゃないんだよ、ミア、日本の錦景市なんだって」

 ミヤビがミアを押さえつけている間、ハルカとアイナとニシキは警備員さんたちにこっぴどく怒られていた。

「なんだ、あの娘は、薬でもやってるのか? 一度病院に入れて医者の診察を受けた方がいい」

 警備員のその台詞に、ミアはミヤビを睨むのを止めてそちらの方に振り返ってがなった。「あんた今、なんて言った、なんて言ったんだよ!?」

 ミアは拳をぎゅっと握りしめて今にも警備員に飛びかかって渾身のストレートを叩き込みそうだった。だからミヤビは必死でミアのことを押さえ付けた。

「ミヤビ、離して、離しなさいよっ

!」

 警備員はハルカたちにミアのことを絶対に競技場の中に入れるんじゃない、と忠告してその場を去った。

 警備員の背中に向かってミアはがなった。「逃げるのか、腰抜け、くそ野郎っ!」

 ミアの麗しき声は陸上競技場の外によく響いて、こだました。

 そしてその二秒後。

 音がよく響いてこだました。

 ハルカがミアの頬をひっぱたいたのだ。

 ハルカの顔は悲痛で歪んで、目元には陰が見えた。

「な、何するのよっ!」ミアが吠える。「あんた、今、何したか分かってんのっ!?」

「マヨちゃんが優勝をするのを私は見たかったのにっ、」ハルカは、ハルカじゃないみたいに凶暴に吠えた。「信じられない、最低だわっ!」

 そしてハルカはミアとミヤビの横を通って、早足で向こうに行ってしまった。ハルカの後をアイナとニシキが追いかける。二人は少しだけミヤビたちのことを気にする素振りを見せた。二人はハルカほど、ミアと仲良くしているミヤビにヒステリックにはなっていないけれどでも、戸惑っている。

「本当、頭に来る、」三人の姿が視界から消えてからミアは赤い頬をさすりながら言った。そして舌を出してミヤビに微笑む。「やっぱり彼女、変な娘ね、絶対に仲良くなれないわ」

「絶対に無理なの?」ミヤビは頭が痛い。

 ハルカとミアの冷戦構造。

 緩衝地帯で起こる紛争の度に、ミヤビは頭が痛い。

 頭痛が痛い。

「絶対に無理よ、」ミアは顔から微笑みを消して言う。「ミヤビがいくら祈ったって願ったって望んだって、絶対に無理だわ」

「それって、永遠ってこと?」

「そうね、いい言葉ね、」ミアは唇の形をニッコリとさせた。「永遠って、いい言葉、好きよ」


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