パンプキン詐欺
「かぼちゃが戻ってきます!」
そんな文面の手紙が届いた。
そういえばテーブルの上に並べていた野菜の中からかぼちゃが消えている。いつの間になくなったというのか。
かぼちゃだけではない。買い物から帰って広げて見たら、買ったはずのものがなくなっていたり、減っていたりする。それは、私の気付かない間にひっそりと行われているようだった。
実りの秋である。かぼちゃが最もおいしくいただける時期である。せっかくのそんな時期なのに、かぼちゃがなくなってしまったのは悲しい。
けれどもその一部が、戻って来るのだという。
いたずらかもしれない、と思った。かぼちゃにお菓子といたずらはつきものである。一度失ったものをこの世界が返してくれることなんて、滅多にないのだ。
同封された書類には、かぼちゃを返還するための手順が事細かに記してあった。訝しくは思ったけれども、本当になくなったかぼちゃが戻って来るならと思い、私はその通りに書類をしたため、ポストに投函した。
数日後、はたして一箱の段ボールが我が家に届いた。そのときの感動を、わかってもらえるだろうか。
いたずらじゃなかったのか。本当に、戻ってきたのか。
世の中もまだ、捨てたものじゃないじゃないか。そんな思いが、私の身体中を満たした。
おかえり。心の中でそう囁いて、箱を開いた。
スイカだった。
(完)




