異常起床
目を覚ますと何だかやけに暑かった。
身体中にべっとりと汗をかいている。使っていた布団はまだ春用のあいものだ。寝ているうちに蹴り飛ばしたのか、足元の方に固まっている。
まだ梅雨入りもしていないというのに、まるで真夏日のような暑さだった。
「俺が寝ている間に、いったい何があったんだ」
布団から出てカーテンを開ける。太陽が激しく照りつけている。窓を開けるが風はほとんどなく、やはり暑い暑い空気が部屋の中に入り込んできた。
俺は押入れを探って、扇風機を引っ張り出す。暖房器具はこの前しまったばかりだった。こんなことならあのときに一緒に出しておけばよかったのだが、あのときにはこれほど急激に暑くなるとは思ってもいなかったのだ。
扇風機のスイッチが回る。ぬるくはあれどもそこそこに快い風が俺の顔と身体を撫でる。ようやく生き返った心地だった。
そうしてから気付いた。汗が、凍りつきはじめている。それだけではない。扇風機の風が当たっているところから霜が降り、気温がどんどん下がっているのだ。
慌てて扇風機を止めたが、部屋の中はすでに真冬の表現さながらの状況になっている。部屋の中だけではない。外を見ると、いつの間にやら照りつけていた日は姿を消し、一面の雪景色と化している。慌てて窓を閉めようとしたが、それも凍りついて動きやしない。
震える身体にやはり冷たくなっている布団を何とか巻きつけた。
これは夢だ。俺はまだきっと眠っているのに違いない。そうでなければ、なぜこんなことになっているのか説明がつかない。
寝るぞ、俺は寝るぞと言い聞かせて、部屋の中に倒れ込んだ。目が覚めたら何もなければいいが。いつもどおりであればいいが。
そんなことを思いつつ、俺は無理やり眠りについた。
(戻)




