表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/81

這い回る蝶々

 ハイマワル憲法第九条により、蝶長の飛行は禁じられている。

 蝶長に就任したものは去翅され、飛べない状態で職務に当たることが義務づけられている。だから蝶長は残された六本足で、あちらをウロウロ、こちらをオロオロと動き回ることになる。

 九条のおかげで蝶長同士の争いはなくなったが、地上を行くことで下々の蝶が触れあう機会も多くなり、蝶長自身ではなくその権益に興味を持つ蝶も擦り寄ってくるようになった。

 飛行能力を失った蝶長に移動手段を宛ったり、花蜜や夜蝶を振る舞ったり。その態度はあからさまで、蝶民は皆眉をしかめたが、中にはそんな誘惑に負け、誘蛾灯へと導かれゆく例も少なくなかった。

 各地で九条の撤廃が叫ばれるようになったのは自然の流れだった。が、叫んでいる蝶の九割は蝶長に羽があった頃を知らない世代であった。蝶議会に席を持つ蝶たちも戦争を知らない世代であり、そういった背景もあって九条撤廃の議論が声高になったのであった。

 おしなべてこの世は弱肉強食。それは蝶たちにとっても同様であった。

 辛かったことはすぐに忘れる。美しい姿態が土に汚れ、体液を垂れ流す死骸がアスファルトを埋める。

 そんな未来が近付いている。


(完)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ