メイキング
五月の王がやってきた。
「あなたはどうして王になれたのですか」
玉座にふんぞり返る王に向かってこわごわ尋ねてみると、よい質問だ、と得意そうにさらに胸を逸らした。
宰相と思しき老人が素早くホワイトボードを運んできて、王にペンを渡す。
「まず六月に先王を打倒しようと思い立ち、余は策を練りはじめた」
そして七月に先王に不満を持つ者たちを取り込み、八月にはそこから侵食の手を広げて勢力を拡大し、と時系列順にホワイトボードに書き込みながら、王は嬉々として喋りまくる。私が聞きたかったのはそういうことではなかったのだが、王があまりにも楽しそうなので、止めることができない。
「そしてついに四月に革命を起こし、先王の政権を打倒した。これを四月革命と命名呼称しようかと余は考えている」
そのネーミングは色々な意味で危険だと思ったが口には出さなかった。
「ともかくも、よくわかりました」
いいかげん開放してもらおうと、話を終わらせにかかる。だが。
「いや、今の説明だけではわかりにくかろう。おい」
宰相に合図すると、待ってましたとばかりに銀の盆に何かを載せて持ってきた。
「革命が成功するまでの舞台裏を収録した映像集でございます」
(完)




