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飛石センキュー
指輪に羽根が生えて飛んでゆく。
愛しい彼女のために買ったばかりのダイヤの指輪だ。今度の連休に企画している三泊旅行の最終日に渡す予定だったのだ。
「あなた、騙されているのよ」
指輪が言う。そんな言葉に構わず、俺は大事な指輪を追いかける。
偶然、彼女と出くわした。オシャレをして、別の男と腕を組んでいる。
「ちくしょう」
そばに転がっていた小石を蹴った。蹴られた小石は地面を飛び跳ね、道行く女性の一人に当たる。
「すいません大丈夫ですか」
慌てて走りより、助け起こす。その女性は彼女より美人で巨乳だった。
遠く見えなくなりつつある指輪に向かって。俺は親指を立てた拳を突き出し、叫んだ。
(完)




